ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

泉房穂さんへのインタビュー

 今朝新聞を眺めていて、ジャーナリストの田原総一朗さんが前明石市長の泉房穂さんにインタビューした記事の後編を目にしました。市長を退任してからメディアでよく見かける泉さん、市長在任中にいろいろと「舌禍事件」が取り沙汰されて話題になりましたが、愉快な方だと思います。「愉快」な理由は、偉ぶらず飾らない話をするからでしょうけれど。興味を惹いたのは市役所職員への「暴言」がきっかけで市長を辞して、再選挙に臨むかどうか、家族会議をもった場面の話です。その前段から少し引用させてください。
田原総一朗の日本の教育問題は何だ!?:前兵庫県明石市長・泉房穂さんインタビュー/下 「変わり者」も受け入れる | 毎日新聞

 田原 昔は全てが「ねばならない」でしたが、今は子供に「自由でいい」と言い過ぎている?
  昔は「こうじゃなきゃいけない」と言われる分だけ、逆に「大人が責任をとってね」とも言いやすかった。今は「何でもいいよ」と言われているのに、実際はちょっとしたことでもアウトとされた上に、自己責任を押し付けられがちです。実は子供たちの裁量はないんです。
 子供の権利や個性はしっかりと認められていませんし、教育現場は権力者にとって都合の良い人材の供給源なんだという考え方が根強く残っています。教育とは、そんなものではなくて、一人一人の生きる力や夢をかなえる力を育むものなんです。
 でも、子供のうちから夢を持たなければいけないとは思いません。私は変わり者なので、10歳で「古里を優しい街に変えよう」という人生の目標を決めましたが、これは超少数派であることは自覚しています。
 ただ、変わり者の私も受け入れてくれる社会であってほしい。私がやってきた少数者のための政策は、実は自分のためでもあるんです。「一人ぐらいなら取り残してもいい」となれば、私は社会からはじかれてしまうし、足が不自由な私の弟も市側にそういう考え方があったので、地元の小学校に行くことを当初は許されなかったのです。
 いろいろ生き方があってよくて、「こうじゃなきゃいけない」というわけではありません。若い人は、志を持ってもいいですし、持てないことを悔やむことなんかないと思います。

 田原 子育てでも親の考えを押し付けなかったのですか?
  親子は身近な存在ながらも別人格なので、価値観を押し付けてはならないと思っています。おやじも「お前のしたいことをさせるのが夢だ」というのが口癖でした。私自身は、長女や長男とは3歳から中学に入るまで、毎朝5時半からの1時間は一緒に過ごすと決めていました。夜は仕事で出歩いていて接点を持てなかったからです。
 幼いころは一緒に積み木やドリルをやりました。もう一つは、長女と長男とそれぞれ一対一で春夏秋冬に日帰り旅行をしていました。「べき論」は避け、どんな思いで生きてきたかとか、妻とのなれそめや両親に対する思いなどを話しました。子供がどう感じたか、うまくいったかどうかもわかりません。

 田原 市長在任中、道路用地買収が進まないことに腹を立て、市職員に暴言を吐いて批判されたこともありましたね。我が子の反応は?
  全国ニュースにもなって、家族には大変な思いをさせてしまいました。当時は、長女が中学生、長男が小学生でした。学校でもいろいろと話題になったそうです。私の出直し市長選挙を求める署名が市内で始まり、出馬するかどうかを悩みました。妻は「家族4人で決を採るから」と言って、2019年3月の出馬表明の前は、晩ご飯を食べた後に家族会議をやりました。
 「申し訳ないことをしてしまったけれど、署名までいただいて、もう一回、やり残したこともあるから市長に戻りたいのでお願いします」って言ったら、妻は「私は反対」って即答しました。かぶせるように長男が「クラスでいろいろ言われているけど、これで終わったら嫌だから、もう一度、市長になって、ちゃんとやってほしい」と。これで賛否は2対1になりました。
 長女は、しばらく間を置いて「私も学校でいろいろあるから、嫌な思いもある。でも、パパが出たい気持ちもわかるから白票」って言いました。賛成2、反対1、白票1になり、結局、妻が立候補を許してくれました。
 私の1票も、子供の1票も同じ重みです。私の根っこの部分には「大人も子供も対等だ」という考えがあります。

 泉さんの再選出馬を決定づけたのは長女の「白票」でしょう。しかし、奥さんがそれでも「自分は反対だ」と、立候補を許さなかったら、いくら2:1であっても、泉さんはきっと出馬を諦めたでしょう。多数決は判断を迫られた集団が最終的に意思を決める一つの「参考手段」ではあっても、すべてが解決する「決定打」というわけではありません。「満場一致」の方がより好ましいのは当然です(たとえ不承不承であったとしても)。民主主義云々も大切ですが、それよりもまず、家族一人ひとりの人格が尊重されていることに感心しました。

 関係ありませんが、今週は政治資金規正法の改正案の成立が焦点のひとつです。あくまで「抜け穴」の確保に精魂を注ぐ自民党は、公明党と維新の会の賛同を得て、「多数決」により法案を通そうとしていますが、泉家の「小さな多数決」から何と乖離した「多数決」かと思わざるを得ません。

 なお、「前編」も興味深かったので、下にリンクを貼りつけておきます。
「助かる命が助からない」貧困家庭から東大合格の理由 泉房穂さん/上 | 毎日新聞



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