ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

国葬が「KOKUSOGI 2022」に変わるとき

 安倍氏の「国葬儀」に反対する声明や決議が地方議会からも上がっています。
 9月6日火曜、神奈川県三浦半島にある葉山町議会は、安倍氏の「国葬」に反対する意見書を可決し、翌7日、岸田文雄首相と衆参両院議長宛てに送付したそうです。9月8日付朝日新聞の記事には、こうあります。
神奈川・葉山町議会が国葬反対の意見書 「弔意を国民に事実上強制」:朝日新聞デジタル

 ……意見書では「国民のなかでも評価が大きく分かれる安倍元首相を礼賛する立場で国葬を実施することは、政治的立場・姿勢を、国家として全面的に公認・賛美することになる」とし、「弔意を個々の国民に対して事実上強制することにつながることが強く懸念される」とした。
 意見書は共産党の町議が提出。議長を除く13人のうち共産、立憲民主、無所属などの8人が賛成し、賛成多数で6日に可決された。自民系会派と公明など5人は反対した。
 可決は国葬をめぐって8日に開かれた国会の閉会中審査の前で、国会審議も経ずに国費を投じて実施しようとすることは、「法治主義にも財政民主主義の原則にも違反する」と批判した。

 鳥取県西部の日南町では、9月8日木曜、全会一致で「国葬中止を求める決議」が採択されたそうです。議員10名の小さな議会とはいえ、全会一致の決議というのは非常に重いと思います。
https://www.town.nichinan.lg.jp/material/files/group/12/r40916.pdf

 これに対して、岸田政権は、「国葬」ではなく「国葬儀」だから(別ものなので?)、法律の裏付けがなくとも内閣の判断(閣議決定)でやれるなどと、詭弁にもならない愚劣な答弁で押し通そうとするのですから、地方自治体と国と、どちらがまともなのかは歴然としています。

 はからずも、昨日英国エリザベス女王が亡くなり、日本の「国葬儀」のおそらく一週間前に女王の国葬が行われ、日本の人もその様子を見ることによって、岸田政権(日本政府)のダメさ加減はさらに印象づけられる気がします。それは自尊心を傷つけるでしょうが、デタラメな政治を許してきたツケだと受け止めるべきなのでしょう。ある意味、気の重くなる話です。

 哲学系ユーチューバーのじゅんちゃんが(昨日は「不謹慎系ユーチューバー」と称してましたが 笑)、動画でおおまかにこう言っています。
本当の国葬と偽物の国葬 - YouTube

 国葬」と言っても、イギリスでただただみんなが故人を悼むとか、世界中がみんな悲しみに暮れるなどということはありません。外交儀礼上は、みんなお悔やみを申し上げることになってはいますが、実際はそうなっていません。たとえば、サッチャー元首相の場合は準国葬ですが、これを国葬の部類に含めて言うと、彼女の葬儀は、「入札でやれ」とか「民営化してやれ」とかと揶揄されたという逸話があります。彼女自身が新自由主義者として民営化、民営化で政策を進めてきたことを批判する人がかなりいるからです。サッチャーは11年くらい政権を担った稀代の政治家と言われますが、そういう人であっても、評価が分かれます。ましてやカルトの広告塔とか、カルトの票の差配をしていた人間の場合、「統一教会葬にしろ!」などと言われるのは、ある程度はしかたないことです。エリザベス女王に関しても、旧英国植民地だった国々は、SNSなどでは皮肉を含んだ文章を公開しているケースもあります。もちろん、公式の場でそういうことは言いませんが、エリザベス女王ですら、全員が敬意を表するとか、悲しんでいるということはありません。人の上に立つ立場の人たちは批判される宿命にあるということです。だから、人間を国を挙げて弔うというのは、根本的に現代の価値観になじまないと思いますね。……
 ひるがえって日本です。「国葬儀」というナゾのイベントが9月27日に行われることが決まっていますが、今回のイギリスのエリザベス女王の死によって国葬が行われれば、まちがいなく最もその影響を受ける国になるでしょう。実際、SNSなどでも、英国の国葬と日本の「国葬儀」を比べるものがかなり増えています。ヤフコメのコメントなどは、日本の「国葬儀」にかなり批判的なものが多く、「死者を比べるなー」とか「サヨクもマスコミも日本の国葬を貶めるな」とかいうコメントがもっと多いのかと思っていたら、意外に社会が平静に戻っている感じがしました。ここ数年がいかに異常だったかを強く感じますね。
 残念ながら英国の盛大な国葬を先に見たあとで、27日の「国葬儀」をやるのですから、比較するのは避けられません。前座でパチモン(偽物)が出て、次に本物が出てくるというのは、モノマネ番組などでよくあって、盛り上がるパターンですが、しかし、順番が逆になって、先に本物の歌手(本人)が歌って、その後に偽物(偽者)が出てきてショーをやろうとしたら、それは意図にかかわらず、トーンダウンしますよね。……
 岸田首相は国葬儀をなぜやらなければならないかという理由として、弔問外交の位置づけというのを挙げてました。岸田さんは国民一人ひとりには弔意を呼びかけないと言いながら、対外的には国を挙げて弔うという、わけの分からないことを言っていますが、弔問で訪れる人も当然クローズアップされるでしょう。イギリスは現役だった君主を葬るということですから、日本の「国葬儀」とはちがって、おそらくG7など各国から首脳級の人たちが参列するでしょう。今回調べていたら、小渕恵三元総理のときですら、大統領・首相級がけっこう集まっていましたが、現職か現職でないかは首脳の線引きとしては大きいと思います。昭和天皇のときも、アメリカ、ドイツはじめ、多くの国から大統領・首相級、あるいは王室のトップが来てます。エリザベス女王の葬儀についても、その在位年数や存在から言って、日本からは岸田首相や秋篠宮家、もしくは天皇レベルの人が弔問する可能性はあります。おそらく他の国もそうでしょう。
 そうなると、弔問外交なるものがそこで行われれば、これは誰が悪いというわけでもなく、結果論として、「国葬儀」の大義はなくなるわけです。おそらくは、イギリスの国葬の方が日本の「国葬儀」よりも弔問外交として大いに役に立つことは、岸田さん自身がもう気づいているんじゃないかと思います。……

 日本の「国葬儀」には行かないと言っていたバイデン米国大統領は、エリザベス女王国葬には参列すると表明したそうです。岸田首相や日本政府からしたら、「ええっ、そんなー」でしょうが……。
バイデン米大統領、エリザベス女王の国葬に出席の意向 [エリザベス女王]:朝日新聞デジタル

 あるTwitterには、「国葬」ではなく、いっそのこと「KOKUSO2022」にすればいいんじゃないかというのもありました。
毛ば部とる子 on Twitter: "いっそ“KOKUSO2022”とかにすりゃいいんじゃない?" / Twitter

 7月の時点から岸田首相が、「国葬」ではなく「国葬儀」と、わざわざ「ギ」を付けて呼んでいたのが、当初から何となく引っかかってはいましたが、「逃げ道」を確保したつもりが、こういう展開になるとは……。参院選後、手にしたと言われる「黄金の3年」も、その姑息さのせいで、かなり怪しい感じがしてきました。




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