ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

稲村ヶ崎と九十九里

 無知にも程があると叱られそうですが、神奈川県鎌倉の稲村ヶ崎海岸が、海水浴場としては今は閉鎖されていることを知りました。夏ではなかったと思いますが、大昔に一度訪れた記憶があるので、びっくりしました。確かに最近、海開きのニュースで、片瀬海岸や材木座の名前は見かけましたが、稲村ヶ崎海岸というのは出てこなかったなあ、と改めて思います。閉鎖されたのは2002年ということなので、もう20年も前!ですが、サザンの桑田佳祐さんが監督をした映画「稲村ジェーン」は1990年の制作なので、実は映画を撮っている頃から、稲村ヶ崎の海岸線はすでに危うかった(だから撮影した?)のでは、という気がしました。
 8月16日付朝日新聞の記事より(年齢は省きます)。

サザン名曲の稲村ガ崎、無残な光景に 名前どころか砂も消した温暖化:朝日新聞デジタル

 開発に加え、地球温暖化により、各地で砂浜が消えていく――。ツバルやモルディブなど南の島だけのできごとではない。国内でも心配されていることだ。あの映画の舞台となった砂浜では今、見るも無残な光景が広がっている。
 ♪砂に書いた名前消して 波はどこへ帰るのか
 桑田佳祐さんがメガホンをとった映画「稲村ジェーン」(1990年公開)の主題歌、「真夏の果実」の一節だ。

 7月上旬、映画の舞台となった神奈川県鎌倉市の稲村ガ崎を訪れると、岬西側の七里ガ浜の所々で「砂」が消え、むき出しになった岩々を「波」が洗っていた。
 「以前は、砂鉄を多く含む黒っぽい砂浜が広がっていた」と「鎌倉の海を守る会」の奥田みゆきさんは話す。人気だった稲村ガ崎海水浴場は2002年を最後に閉鎖された。
 近くを歩くと、稲村ガ崎の西側に流れ込む小川に架かる橋の周りでは、砂が流出し、橋は地表から高さ1・4メートルほど浮き上がっていた。歩いて渡ることはできない。

 海岸浸食は住民の生活も脅かし始めた。19年の8月、10月と台風が続けて襲った。高波は浸食された砂浜を越え、浜沿いの国道134号を直撃。擁壁が一部崩落し、歩道が陥没した。歩道約250メートル分の通行止めは今も続く。神奈川県藤沢土木事務所は「砂浜は波から陸地を守る『緩衝材』。崩落は砂浜が消えた影響もある」とする。

09~19年で最大20メートル後退 浸食ペース早く
 県によると、七里ガ浜は46~09年に最大で30メートル後退、09~19年には最大20メートル後退と、浸食のペースを早めている。海岸部での駐車場建設などで漂着する砂が減っていたところに、17年から19年に3度来た台風に伴う高波が浸食を早めたと県はみる。……

国内の砂浜面積、今世紀末には9割消失も
 東北大の有働恵子教授(海岸工学)らの研究では、1900年ごろに全国平均で70メートルだった砂浜の奥行きは、50年ごろに66メートル、90年ごろに43メートルまで後退した。
 海岸浸食の主な要因は、河川から海岸に運ばれる土砂がダム建設や砂利採取によって減ったことや、港湾建設などにより、沿岸部の砂の動きが変化したこととみられている。
 そこに地球温暖化が拍車をかける。
 氷河や氷床が解けたり、水温が上がって海水の体積が膨らんだりして海面上昇が起きる。水位が上がれば、台風による高波や高潮による浸食の影響を受けやすくなる。

 国によると、日本沿岸の海面水位は04~19年の間、年平均4・19ミリ上昇した。国連気候変動に関する政府間パネルIPCC)の前回14年の報告書では、今世紀末に海面上昇は、86~05年の平均に比べて0・26~0・82メートルの範囲に入る可能性が大きいと予測する。地図情報などに基づいて有働さんらが14年に試算したところ、国内の砂浜の面積は今世紀末、90年ごろと比べて4~9割分失われるという。
 欧州委員会共同研究センターなどのチームは、最悪のシナリオでは今世紀末までに世界の砂浜の約半分が失われるとの推計を公表している。

<以下略>

 これは千葉県の、特に外房(太平洋岸)の砂浜も同じようです。小生は子どもの頃、千葉県の九十九里浜は毎年海岸線が沖に延び、逆に日本海側は毎年海岸線が陸側へ後退していると聞きました(日本海側の話は本当かどうか知りません)。実際、納屋(なや)集落* という、九十九里平野に特有の集落があるのは、海岸線が沖へと伸びていった結果だと教わった記憶があります。
*納屋集落:漁民が住家から浜まで舟や漁具などをいちいち運び出すのが煩雑なため、その保管のために海岸近くにつくった納屋(倉庫)列が、次第に住家としても利用されるようになり、のちに集落となったものを「納屋集落」という。九十九里浜一帯の北部には「〇〇浜」、南部には「〇〇納屋」の地名をもつ「納屋集落」が列状(海岸線に並行するように)に並ぶ。これは過去に、九十九里浜の海岸線が毎年2メートル程度、沖へと前進していたことによって、納屋の集落化が促されたと考えられる。

 しかし、それは今や昔話で、現状は稲村ヶ崎海岸と同様、ここも大きな海岸浸食に見舞われているようです。
 千葉県河川整備課によれば、九十九里浜では、1960~2010年に砂浜の幅が平均約90メートル近く後退したというのです。毎年2メートルずつ沖合に伸びていたはずの海岸線が、実際は、逆に2メートルずつ後退していたことになります。そう言われると、波打ち際は、昔の方が今よりもけっこう遠くの方だったような気がしないでもありません(子どものときの記憶ですからあてにはなりませんが)。
https://www.pref.chiba.lg.jp/kasei/shingikai/sinnsyoku/documents/siryou2_1-1.pdf
九十九里浜も鳥取砂丘も、車で走れる砂浜も…狭まる海岸:朝日新聞デジタル

 国土交通省は、保全を話し合う有識者懇談会を設け、定期的な「砂浜の健康診断」をして優先順位をつけ、対策する必要性を指摘しています。
 東北大学の有働恵子准教授(海岸工学)は「砂浜保全は、豪雨や土砂災害の対策に比べれば緊急性が低いようにみえ、予算はつきにくいかもしれない。放置すれば、将来的に沿岸災害リスクが高まる恐れがある。今よりさらに効率的な対策の検討を急がなければならない」と言っています(いずれも、2020年10月16日付朝日新聞記事より)。

 こういう場合、当然ながら、行政は上にあるように普通に叡智を結集させて対策に動くでしょう。しかし、こうした行政のいたって正常な対応が阻害されることがたびたび生じます。今や、すっかり中抜き利権や妄想的世界観に染まり、普通に予算(税金)を使わず、あらぬことに浪費するなど、行政本来のあり方を歪めているのが現自民党政権です。統一教会との癒着によって過去に行政が歪められることはなかったのか、さすがに本件は無関係だと思いますが、自民党には、改めて統一教会との関係の徹底調査と絶縁を求めます。





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