ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

五輪の闇

 昨年夏に開催された東京オリンピックパラリンピックの大会経費は、実際のところいくらかかったのかは今でもわかっていません(昨年12月時点の見通しで、約1兆4,530億円と言われています)。半分以上は税金と言われているこの「大規模公共事業」への支出の内実は隠されたまま、大会組織員会は今月末、あと10日で解散されようとしています。
 毎日新聞6月21日付記事より。

東京五輪経費1兆4530億円 全体像分からぬまま組織委解散へ | 毎日新聞

……組織委などによると、大会経費は総額1兆4530億円となる見通しで、このうち都が負担した6248億円、国が負担した1939億円は情報公開制度の対象だが、公益財団法人である組織委が負担した6343億円については対象外だ。もちろん、制度の対象になっているからといって全ての文書がそのまま開示されるわけではないが、そもそも開示請求ができなければ、どこにいくらを投じ、それが本当に必要な支出だったのかを検証することは不可能だ。
 また、組織委の解散後、会計帳簿や重要書類などは清算人に引き継がれ、10年間保存することが法令で義務づけられているものの、これらの文書も情報公開制度の対象外で、外部からアクセスするのは難しい。これまで組織委は理事会の議事録や業務委託の状況など一部の文書についてはホームページで自発的に公表してきたが、後世の検証に不可欠な文書を解散後にどこまで示せるかが問われている。

長野冬季大会では帳簿を廃棄
 五輪の文書保存を巡っては、1998年長野冬季五輪の招致委解散後に会計帳簿が焼却処分され、招致委の中核を担った長野県と長野市のトップ(知事と市長)が公文書毀棄(きき)容疑で告発される事態に発展した。いずれも不起訴処分となったが、県が05年に公表した調査報告書は、国際オリンピック委員会IOC)委員への過剰接待や多額の使途不明金の存在を認定し「帳簿を残しておくと不都合な事情があった」と指摘した。都合の悪い文書が、闇に葬られていたというわけだ。
 玉木(正之・スポーツ文化評論家)さんは「長野大会と同じことが東京大会で繰り返されるのではないか。そして、東京大会の経費についてきちんと検証されないまま、札幌が(30年の招致を目指し)冬季大会に手を挙げているのはどうなのか」と疑問を呈する。

<中略>
招致では海外コンサル費9億円、書類不明
 東京大会の招致を巡っては、招致に使われた海外コンサルタント費計9億円余の支出を裏付ける会計書類の所在が不明になっていることが、19年11月の毎日新聞の報道で明らかになっている。当時、毎日新聞は招致委の解散時(14年)の全役員と事務局幹部計20人に文書の所在を確認したが明言する人はおらず、都やJOC、組織委にも継承されていなかった。
 これは、招致委がNPO法人として設立されたことと無縁ではない。NPO法には、法人が解散し、清算した後の文書保存に関する規定がないためだ。一方で、組織委には解散後の文書保存義務が生じるが、どの文書が継承されるのかや、手続きの過程で何が廃棄されるのかを外部から確認することは今のところ難しそうだ。将来世代に開催の教訓や成果を引き継ぎ、札幌招致につなげるためにも高い透明性が求められている。

 その「札幌招致」について、日本オリンピック委員会JOC)の山下泰裕会長は、6月14日の定例会見で、なぜ、(そんなに)五輪を日本で開催したいのかと問われ、「さまざまな国際大会を招致し、オリンピズムが浸透した社会を目指していく。今の時点で、その努力をやめることは考えられない。ご理解いただけるとありがたい」と回答しました。
JOC山下泰裕会長「今のままでは厳しい」30年冬季五輪の札幌招致へ危機感 - スポーツ : 日刊スポーツ

 カタカナ語の「オリンピズム」という語は、定着度がいまひとつですが、その意味するところは「(オリンピック・)スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍などさまざまな差異を超え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって理解し合うことで、平和でよりよい世界の実現に貢献する」(デジタル大辞泉)ことなのだそうです(「スポーツ精神」との異同が不明ですが)。しかし、何にお金をつかったのかも明らかにできない催事に、「フェアプレーの精神」や「よりよい世界の実現」などという美辞麗句を被せるのはふさわしくありません。「華やか」な競技の裏で、オリンピック貴族にかしずき、群がる「アリ」に利権をばらまき、最後に開催国の国民に「謝辞」と請求書の束を残していくというのが実態です(この請求書、明細が付いてないのです!)。「オリンピズムが浸透した社会」とは、小生には、偽善社会、特権者優遇社会にしか見えませんし、社会が目指すべき方向として大いに疑問です。どうしてもやるのであれば、税金など一切つかわず、山下会長以下、やりたい人がお金を集めてやればいいのではないかと思います。

 6月6日、札幌の五輪開催を問う住民投票条例案は市議会で否決されたようですが、6月17日、札幌五輪招致に反対の立場で来春の札幌市長選に立候補する意思を明らかにした人が出ました。「市長選を住民投票に見立て、賛否を問いたい」とのことです。曰く、「市の招致活動の進め方が強引で、きちんと市民の声を聞いていない」とのこと。札幌の知人から話を聞くと、「人が集まるのは、商売にはいいけど……」ということでした。「けど……」以下を議論させないのが、五輪招致です。
 一年前の6月7日に日本オリンピック委員会JOC)の経理部長の謎の死があったことを覚えている人は少なくないはずです。


札幌五輪の住民投票条例案否決 機運醸成に残る課題とは:朝日新聞デジタル

23年春の札幌市長選、元市局長が出馬へ 「五輪招致の民意問う」 | 毎日新聞

日本オリンピック委員会の経理部長、電車にはねられ死亡:朝日新聞デジタル

<追記>
同日付朝日新聞の、さながら広報担当のような記事。スポンサー企業だけに、(税金の)使途を究明せよと書くと、記事がボツにでもなるのでしょうか。闇は深いです。
東京五輪の最終経費1兆4238億円、55%が公費 組織委は解散へ - 東京オリンピック:朝日新聞デジタル







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