ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

森喜朗の辞任

 オリパラ組織委員会森喜朗会長は昨日12日に正式に辞任を表明した。スポニチが辞任の挨拶の概要を掲載していた。

辞任の森会長 最後まで恨み節「意図的な報道もあったと思う。女性蔑視の意図は毛頭ない」― スポニチ Sponichi Annex スポーツ


……あと半年。いよいよオリンピック・パラリンピックを開催する方針で準備をしている矢先だったが、会長である私が余計なことを言って申し訳ない。解釈の仕方ではあると思うこれを言うとまた悪く書かれるが、意図的な報道もあったと思う。女性蔑視の意図は毛頭ない。男性よりも女性の方により発言してもらえるように、絶えず進めてきた。なかなか皆さんはお話にならなかったが。谷本さん(歩実理事)いかがですかと。

 ご記憶にあると思うが、ロンドン五輪後のパレード、リオデジャネイロのパレード、いずれもオリンピックとパラリンピックが一緒にやるべきだといって、大成功した。IOCから示された(参加選手の男女比)1対1、比率を同じにしようと、ほとんどの競技団体にお願いして、ほぼ完璧な仕上がりになった。蔑視することは毛頭ないし、これまでもオリンピック・パラリンピック、障害ある人ない人、同じように扱ってきた。そういう意味で、この一言で、私の不注意もあったと思うが、こういうことになった。本当に情けないことを言ったもんだなと。ご迷惑をお掛けした。


 森本人にとっては、ジョークの延長で話したに過ぎない「一言」を大げさに報道されたせいで問題になった、自分はこれまでも女性蔑視を意図した言動はしてこなかったのに、……無念だ、という話かと思う。

 しかし、前日まで後任の会長就任を有力視されてきた川渕三郎氏が話を「撤回」したことで事態はますます “混迷” してきた。川渕氏が高齢(森より年上!)であることから「もっと若い人」「女性で」などと、政府(スガ)が後任人事に口をはさんできたという。何を今さら、「組織委が決めること」と言ったではないか! である。

 世界から注視されているときにこんなあり得ない “二枚舌” を使うのかと思うが、政府(スガ)にとってはこれはむしろ「平常運転」なのだろう。しかし、そこには “二枚舌” 以上の問題があるとスポニチ藤山健二編集委員が指摘する。昨日のYahooの配信記事から。

あきれた政府の二枚舌…組織委会長人事、政府介入なら五輪憲章違反で開催権剥奪も(スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース

川淵氏の就任で心機一転再スタートのはずが、一夜にして白紙に戻る大どんでん返し。両氏が事前に各方面に何の根回しもしていなかったのも驚きだが、進退問題のさなかには「組織委が決めること」と知らん顔を決め込みながら、後任には口を出す政府や与党の二枚舌にはあきれてものが言えない。森氏の“女性蔑視発言”から始まった今回の混乱がどれだけ国民の五輪離れを加速させたか、この人たちはまだ分からないのだろうか。ただただ情けない限りだ。
 IOC五輪憲章で政治の介入に対して厳しい姿勢を示している。日本ではほとんど報道されていないが、先月には財務面などが政府の管理下に置かれているとしてイタリア・オリンピック委員会が資格停止処分の対象とされた。2026年にミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪を開催することになっている同委員会は開催権の剥奪を恐れ、慌てて独立性を保証する法案を議会に提出。かろうじて処分を免れた。
 現実にはスポーツと政治は切っても切れない関係にあり、政治からの独立はお題目にすぎないのだが、少なくとも表向きIOCはこの問題に関しては敏感に反応する。もし今回のどんでん返しが政権主導で、後任も政権側の意向に沿って選出されるようなことにでもなれば、五輪憲章違反の疑いを持たれる可能性は十分にある。そうなれば最悪、東京五輪の開催権剥奪、つまり五輪を開くための新しい会長を選ぶことによって五輪が消滅するという本末転倒の話にすらなりかねない。


 森にしても、政府にしても、“核心” 部分は空洞なのだなと思う。箱はあるが中はカラ。だから何でも入る。こういうのを「国民性」と呼ぶのはいかがわしいが、かつて竹内好が言ったように、日本文化は西欧文明だろうが儒教だろうが、“外” から来るものを拒まない。何でも “その上に“ のっけることができる 。「器用」だと言えば「器用」だ。それで心地が悪くなるとか、自己意識が分裂するとか、そういうことにはならないのだから。実利的でもある。しかし、昨日のブログではないが、こういうのは “気概” とは無縁だから、局面がちがえば、あざとく、不誠実だと見られるだろう。「それは間違っている」、「不正だ」と言われて、「そうではない」というのなら、魂をもって反論しなければならないし、自分の「型」を示さなければならない。しかし、竹内が言うように、その「型」がないのである。

 
 森の「退場」によって、2013年当時、東京オリンピック招致の「顔」だった4人——猪瀬直樹東京都知事=当時)、竹田恒和(前日本オリンピック委員会JOC)会長)、アベ(前首相)、森(招致委員会評議会議長=当時)—— は、いずれも不本意なかたちで表舞台から去ったと毎日は書いている。

「呪われているのか」 東京オリンピック「招致4人衆」去る - 毎日新聞


 この国の負の面が次々と露わになって、いろいろな人を巻き込んでいる。もはや野次馬根性で眺めていられるほど、気楽な感じはしなくなってきた。



 追記:昨夜の組織委員会・武藤事務局長の会見開始前のシーンを動画(尾形聡彦さん提供)で見た。……やはり「中身はカラ」だと再認識した。

https://twitter.com/ToshihikoOgata/status/1360184297580187649





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