改めて申し上げるまでもありませんが、これはフィクションであり、品のない揶揄です（弱気な侮辱罪対策？ 笑）。
ア：いやー、クロちゃん、なんか顔色がさえないみたいだけど…？
ク：これはこれは、元ソーリ、相変わらずお元気なことで。
ア：ははーん、こないだの「家計の値上げ許容」発言で、世間から逆バズーカ浴びて落ち込んでるなあ。私の時なんか、国会の予算委員会で千葉県の某参院議員みたいな毎回クイズを出すやつもいたしなあ。「総裁、玉ねぎはスーパーで買うと、今1個いくらですか？」とか訊かれてボロを出さなくてよかったじゃないの。
ク：買物は女房任せなんで、玉ねぎは存じませんが、シャトー・マルゴーの2000なら1本20万円だと答えられますが……。
ア：おっ!? けっこう言うねぇ。私なら、ロマネ・コンティの2017なら350万円だけど、君たちにはちょっとなじみがなかったかな？ いやあ、失敬、失敬、と言ってやるんだけどなあ。
ク：…んなもん、スーパーで売ってるか、と突っ込まれて、また袋叩きにあいますよ（笑）。いやあ、それにしても毎日アベノミクスの金融緩和を死守するのは大変でして……。
ア：「死守」じゃないよ！ 今度は防衛費を2倍にして、それ、全部国債で調達するんだからね。お札を刷って刷って刷りまくらないと。「守り」に入ったらダメだよ。攻めて攻めて攻めまくらないと。まだまだ続くよ、アベノミクスはぁ…。
ク：いや、いくら何でもそれはちょっと……。
ア：日銀は「政府の子会社」なんだから、言われたとおりにやってりゃいいんだよ。1万円札なんて原価20円で刷れるんだから、1兆円刷ったって20億だろ。5兆円で100億円、たいしたことないじゃん。
ク：いや、コストの話ではなくて……。
ア：これからはアメリカだけじゃなくて国産の武器も買って国内軍需産業を喜ばせないとね。景気よくやってくれないと困るよ。
ク：それが、ご存じの通り円安が急激に進んで、アベノミクスは今窮地に立っておりまして……。
ア：何が窮地だ。為替介入して市場で1兆円くらい円売りでもしてこいよ。
ク：あの、恐れながら、「円売り」ではなく「円買い」ではないかと。円売りではますます円安が……。
ア：どっちでもいいから、適当に介入しとけよ。
ク：いや、その、アメリカから今後は了承なく為替市場に介入するなとお触れが出ておりまして……。
ア：ふん、そのうち円安も収まるだろ。一時的なことで、そんなにあたふたすんなよ、見苦しい。
ク：いや、しかし、今円安を止めておきませんと、物価高が家計を直撃して、来月の参院選に影響が……。
ア：じゃあ、どうすりゃいいんだ？
ク：これはもう日米の金利差を縮めるしかありません。向こうが利上げするなら、こちらも金利を引き上げませんと……。
ア：なら、上げればいいじゃん。
ク：いやでも、そんなことをしたら、この10年近くのアベノミクスで累々と積み上がった1,000兆円の債務の利子に火が付いてしまいます。雪だるま式に借金が膨れ上がって大変な事態に。
ア：じゃあ、どうすんのよ？
ク：円安の物価高を放置して生活困窮者を死に追いやるか、借金で国の財政を破綻させるかの選択となります。
ア：どっちがダメなんだ？
ク：両方ダメです。
ア：今「選択」って言ったじゃないか！
ク：アベノミクスの失敗を認めるんなら、異次元緩和をあきらめて金利を引き上げ、円安は何とか抑えられますが…。
ア：なら、円安放置だ。アベノミクスは盤石だ。金利は絶対に上げちゃいかん！
ク：と言いましても、私にも日銀総裁としての矜持がありまして……。
ア：何だ、キョウジって？ 馬の名前か？
ク：高校生が使う教科書にさえ書いてある金融政策の基本のキを、日銀総裁として一切無視するというのは……。ド素人ではあるまいし、私にもまだ恥と外聞がありますので、さすがにちょっと……。
ア：何だよ、それじゃ、私はド素人で恥知らずってことか？
ク：いえいえ、そんな。ただうちの女房も外に行くと、あれこれ言われるらしくて……。
ア：参院選を乗り切ったら、キッシーを引きずり下ろして一気に憲法改正に突き進むんだから、そんな弱気なこと言ってられちゃ困るんだよ。
ク：引きずり下ろすって、首相をですか？ いったい次は誰が……？
ア：私以外に誰がいるんだ。
ク：えっ、エーッ!?
ア：「新しい資本主義」なんて中身のないキャッチフレーズだけ掲げて、結局何もする気はないんだからな。見てみなさい。最初は「分配」って言ってたのが「成長」に替わって、今や貯金で「投資」しろ！だ。コロナでみんな貯蓄を使い果たしてるのに何をかいわんやだ。このまま利上げしないで円安が続けば、秋には「岸田インフレ」で、政権はジ・エンドだ。
ク：それで、あのー、実は折り入ってお話が……。
ア：なんだい？
ク：誠に心苦しいのですが、任期途中でも、総裁を辞任させてもらえないか、おとりなしをしていただけないかと…。
ア：何だ？ 任期は来年3月まで、あと9ヶ月なんだから、続ければいいじゃないか。
ク：いや、その、最近体調不良で、腹の具合が……。
ア：君も、潰瘍性大腸炎か？ 大丈夫、今は、いい薬があるから。
ク：元ソーリにならって、慶応大学病院に入って行く車列の様子でもテレビ中継してもらえないかと思うんですが……。
ア：何だ、それは？ 私が仮病をつかって辞めたって言いたいのか！
ク：いや、そんな滅相もない。賭け麻雀や女性スキャンダルで辞めるというのも格好がつきませんので……。
ア：ふーん、そうなのかあ。ところで、私がソーリに復帰した場合の閣僚名簿はだいたい決まってんだよねえ。
ク：は？
ア：財務大臣は誰にしようか、考えてたけど、今の話を聞いて決心したよ。
ク：誰です？ アソーさんの復帰ですか？
ア：にぶいねえ。君だよ、君…。
ク：えっ、エーッ!?
ア：アベノミクスの総仕上げはクロちゃんに託して、私は憲法を改正する。モリカケサクラなどみんなきれいに忘れて、いやー長かったが、これで「美しい国」の完成だなあ。日本国、万々歳だ。アベクロ・コンビでもう一旗揚げるんだ。行くぞ、クロちゃん！
ク：………。
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