ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

ワリエワ選手のドーピング違反問題

 今日は短く、北京オリンピックのことを。
 何か法律や規約などで「原則」を定めると、必ずと言っていいくらい「例外」が出てくるものだと思います。人間社会に線引きを施すのは本当に難しいことで、父親の相続税の申告で土地評価をしているときにも、これを痛感しました。杓子どおりにいかない土地には追加の評価方法がどんどん付加されていきます。
 しかし、あまりに「例外」ばかりだと、「原則」自体が揺らいでしまいます。「例外」が「例外」として認められるのは、それが「原則」の理念から外れていないからで、そうでなければ、「原則」自体を崩さないといけなくなります。ただし、それをやると、これまで「原則」の理念を信じて、守りつづけてきた人たちを失望させることになるでしょうけれども…。

 始まってから10日が過ぎた北京オリンピックは、自分の中では淡々と進んでいる感じでしたが、女子フィギュアスケートのワリエワ選手のドーピング違反問題は心にひっかかりました。ワリエワ選手が金メダル候補であることよりも、年齢がまだ15歳であることが非常に気になります。もし、これで彼女のドーピングが認定されたら、選手生命はもちろんのこと、以後の人生が大きく暗転しかねません。スポーツ仲裁裁判所(CAS)はどのような裁定を下すのだろうか、と。

 しかし、その判断は極めて歯切れの悪いもので、ドーピング違反かどうかの判断は棚上げ(先送り)して、ワリエワ選手の出場をとりあえず認めるというものでした。学校関係者がよく使う「教育的配慮」という言葉を連想します。小生には、時間稼ぎをして、必要になったら後付けで(大会終了後)対処するという含みが強く感じられました。すでにメダルの授与式はやらないと発表していますから。これでは競技が終わってから、どんな「残酷」な展開が待っているのかわかりません。渦中の当人がどうかかわっているのかわかりませんが、一般的に言って、いくら優秀な選手だといっても、15歳の少女にこんな過酷な状況で競技をさせてよいのだろうかと思います。

 2010年のバンクーバー・オリンピックの女子フィギュアスケートで金メダルをとったキム・ヨナ(金姸兒)さんは、自身のインスタグラムに「ドーピングに違反した競技者は、競技に参加できない。この原則は例外なく守られなければならない。すべての選手の努力と夢は、等しく尊い」と投稿しています。
 選手の中にも、この裁定に承服できない人はいるでしょう。金メダル候補でなければ、こんな裁定はしない、依怙贔屓ではないか、という思いは当然あり得ます。

 ワリエワ選手が「ロシア・オリンピック委員会(ROC)」の代表というのも、いっそう人びとを苛立たせます。ご存じのように組織的なドーピング不正をしていた咎により、現在ロシアは国としてはオリンピックに代表選手を送れないことになっています。ドーピングとは縁のないロシアの選手にかぎって、今回、特例的にROCとして出場が認められたのだ。それなのに、これはいったい何だ、やっぱりロシアはダメだと。ドーピングにまみれているロシアの選手は、どんなかたちであろうと、やはり国際競技大会には一切出場させるべきではない、という声が上がりかねません。

 ワリエワ選手には本当に気の毒ですが、ここは「心を鬼」にして原則どおり「暫定資格停止」にし、キム・ヨナさんの言うとおりにやらないと、いけなかったのではないかと思います。これが前例となって、以後も「例外」、「例外」…をつづけていけば、「あれでも許されるんだ」ということになって「原則」自体に信がおかれなくなります。反ドーピングは今以上に形骸化し、関係者の精神を腐食させていくでしょう(大会期間中に陽性でないのだから出場OKなどというのは有り得ない話です)。それは健全な他の多くの出場選手たちの誇りを傷つけないでしょうか。

ワリエワ、疑惑抱え出場継続 ロシアへの不信、払拭できず | 毎日新聞
シロではないワリエワ、メダル無効の可能性 出場に「がっかり」批判 - 2022北京オリンピック:朝日新聞デジタル
ワリエワ出場許可「いずれにしても生煮え」 16歳未満「事情複雑」 - 2022北京オリンピック:朝日新聞デジタル
ロシア側はワリエワを一貫して擁護 疑問残ったまま再びリンクに - 2022北京オリンピック:朝日新聞デジタル




↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村