ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

バッハの失言 笑って許せない理由

 昨日(7月13日)のIOCのバッハ会長の失言。もう心中、半年後の次の「接待」地の方に関心が向いていたからだろうか。中には「凍り付いた」人もいたのではないか。去年10月、スガ首相が訪問先のベトナムASEAN東南アジア諸国連合)を「アルゼンチン」と言い間違えて失笑を買ったことがあったが、日本の人にはそれ以上の驚きと違和感を与えたと思う。丁重なる「おもてなし」の御礼がこれか?と。要するに、その程度の人がIOCのトップだということ。彼の頭の中の世界地図では、まもなくオリンピックが開催されようとしている、自身が立つこの地は、「極東」のどこかなのだろう。

バッハ会長「最も大事なのは『中国国民』」 日本人と言い間違える失言「ガンバリマショウ」:中日スポーツ・東京中日スポーツ

 「失言王」による拷問のような「暴言シャワー」を浴び続け、すっかり慣(馴)らされている国民にとっては、こんな些細なミスにことさら目くじらをたてる価値もなく、いつもの乾いた笑いで十分なのかもしれない。しかし、逆に、もし、ドイツを訪問した日本の要人が挨拶でドイツとフランスを間違えるだろうか、と考えてみるに、それはほぼあり得ない(「失言王」でもさすがにそれはやるまい)。「神(真実)は細部に宿りたもう」とは「仕事や作品は、細かいところまで手を抜かずにやらないと…」というのが本来の趣旨のようだが、小さな一言にその人間の人格の一部が表出することはあり得ると思う。

 バッハ会長のこの失言は、素養や認識の点でIOC会長としての資質を疑わせるだけにとどまらない。同じ日のインタビューで、パンデミック下の大会開催に寄せられている懸念に対し、彼は「日本国民が恐れる必要はない。五輪関係者と日本人を明確に隔離する措置を講じており、大会の安全性に全幅の信頼を寄せていい」などと返している。
IOCバッハ会長、福島と札幌訪問にも意欲「五輪開催、恐れる必要ない」:東京新聞 TOKYO Web

 あきれた物言いだと思う。国民が大会開催を「恐れる」のは「隔離」が徹底されていない実態があるからで、空港の「水際対策」が漏れ漏れという指摘は次々とあがっているし、中国のセーリングチームからは宿泊先のホテルの感染対策が不十分だという不満まで出ている。
来日した中国五輪選手団、宿泊ホテルのコロナ対策に不満 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

 7月10日に放送されたTBS「報道特集」で五輪組織委員会の元職員が五輪準備の無駄遣いとピンハネの横行を告発していた。
 7月13日付「リテラ」の記事より。

五輪組織委の元職員が証言! IOCのラウンジ以外にも贅沢三昧のVIPルーム、電通など広告代理店は物品購入でも15%を上乗せ|LITERA/リテラ

……そもそも、東京五輪の招致時には「コンパクト五輪」「世界一お金がかからない五輪」などと喧伝し、大会経費は7300億円としていたにもかかわらず、2019年末の段階で1兆3500億円、新型コロナによる延期で1兆6440億円と、完全に倍増。さらに関連経費をくわえると、大会経費は3兆円を超える。そして、この膨れ上がった大会経費の赤字の尻拭いを背負わされるのは国民だ。
 しかも、その大会経費は、不正と言ってもいいような金の使われ方がされている。10日放送の『報道特集』(TBS)でも、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の元職員が、国際スポーツ団体のためのありえない無駄遣いと、大手広告代理店の新たなピンハネが横行していることを告発した。

 まず、組織委の元職員が証言したのが、国際競技連盟の専用ラウンジ「IFラウンジ」の問題だった。
 五輪では、各競技会場に「オリンピックファミリーラウンジ」というIOC委員らのためのVIP用ラウンジが設置され、ここでIOC委員らがワインやシャンパンを片手に観戦するのが慣例になっている。そして、東京五輪では「オリンピックファミリーラウンジ」の家具や什器、備品の調達にかんする競争入札が1億413万2116円で落札されていたことがすでに明らかになっている。

 しかし、じつは東京五輪の競技会場には「オリンピックファミリーラウンジ」とは別にもうひとつ、「IFラウンジ」なるVIPルームが設置されている。IFというのは、各国の競技団体を統括する国際競技連盟の略称。「IFラウンジ」は国際競技連盟の関係者を接待するための部屋なのだが、これが贅沢三昧だというのだ。
国際競技連盟のための「IFラウンジ」について、組織委の元職員は番組でこう告発していた。
「『お酒はこうだ』『食事はこうだ』といろいろと言われるわけなんですけども、(IF側が)言ったものがすべて購入される。しかもそれが非常にハイスペックで。たかだか1時間、2時間しかいない部屋に、非常に高価な調度品がそのためだけに準備されて、お茶を淹れる専属の人がついて」

 じつはこの「IFラウンジ」、2017年には「オリンピックファミリーラウンジ」と合体するという提案も出ていた。しかも、昨年9月に組織委とIOCが大会の簡素化について合意したなかには、この「IFラウンジの簡素化」も挙げられていた。
 にもかかわらず、組織委作成の資料(「飲食提供に係る基本戦略とは」)を見ると、競技会場には「IFラウンジ」と「オリンピックファミリーラウンジ」がそれぞれ設置されることが書かれており、さらには「簡素」とは程遠い豪華な調度品が揃えられていたのだ。そして、専属のお茶を淹れる係まで……。スポーツ大会を社交界か何かと勘違いしているとしか思えない。

 こうした「オリンピックファミリー」や国際競技連盟の面々を束ねる存在がバッハ会長だといってよい。この会長の一連の言動や所業を笑ってスルーする人の気が知れない。だから、「嘘つき総理」や「失言王」が育つのだ。半分は国民の責任だと思う。


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