ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

千葉11区と12区

 昨日新聞の地方面(千葉版)に市区町村別の比例投票先(政党)が載っていた。眺めているうちに数字の足し算が妙に合致するような気がして「あれ?」と思った。比例での自民と公明と維新の3党の得票数の合計と小選挙区の自民候補の得票数がだいたい同じところがある。千葉県小選挙区の11区と12区で、千葉県の南半分、「外房」とか「内房」とかと呼ばれるところだ。具体的には、11区だと、茂原市東金市勝浦市など、12区だと、館山市木更津市鴨川市など。他の選挙区ではこの足し算が成立しないので、偶然にしては合致しすぎている。何らかの地域性があるかも知れないが、小選挙区に立候補している人のパターンが共通するので、理由はむしろそのあたりかと思える。つまり、両区はともに小選挙区の候補者が、自民・共産・プラスワン(野党)の3人のパターンになっているのである。

 例を見てみると、
 11区。ここは小選挙区の立候補者が、森(自民)、椎名(共産)、多ヶ谷(れいわ)の3人。
〇11区 茂原市
比例:自民13,518 公明5,573 維新3,298(計22,389)→自民:森21,735
〇11区 東金市
比例:自民8,706 公明4,223 維新2,135(計15,064)→自民:森14,558
〇11区 勝浦市
比例:自民3,382 公明833 維新519(計4,734)→自民:森4,968

 12区。ここは立候補者が浜田(自民)、葛原(共産)、樋高(立民)の3人。
〇12区 館山市
比例:自民7,571 公明3,141 維新1,596(計12,308)→自民:浜田11,841
〇12区 木更津市
比例:自民21,433 公明9,298 維新5,076(計35,807)→自民:浜田34,912
〇12区 鴨川市
比例:自民5,829 公明2,640 維新1,072(計9,541)→自民:浜田:9,497

(数字は、11月3日付毎日新聞22面による)

 もちろん500票以上離れていて「誤差」というにはどうかというところもあるし(木更津は、地方にあって農村部とは違った中核都市で例外だと言い訳する余地もあるが…)、追跡調査ができない以上、比例で3党に投票した人がみんな小選挙区自民党候補者に入れているかどうかは不明だ。実際に投票した人のなかには、自分はちがうという人もいると思う。
 だが、両区は長年自民候補が盤石で、早々に野党統一候補の擁立が見送られた(諦められている)地域である。公明支持者たちはほぼ組織だって投票するから、あとは自民と維新に入れる人たち如何ということになるだろう。こうして、改めて中道から右寄りの人たちの投票行動を想像してみるに、こういう足し算が成立するのは、それほど不思議なことでもないように思えてくる。
 これを逆に見れば、小選挙区自民党候補に投票する人は、(いくら自民党を批判したり叱咤する気持ちがあっても)維新以外の野党には投票しないということになるから、これが事実なら、野党共闘を進める側にとってはけっこう痛烈である。ただ、裏を返せば、比例で維新以外の野党に投票している人たちは、誰も自民党候補には入れていないということにもなるわけで、ここを「固定層」として次の戦略を立てていくこともできるだろう。右寄りの層が全然顔を向けてくれないとしたら(もちろん向けてもらう努力はつづけるにせよ)、投票率を上げるべく、新たな支持層を発掘していくしかない。もっとも、下の若い世代の支持政党の傾向を見ると、これもおいそれと、というわけにはいかなさそうではあるが…。

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ANN出口調査

 選挙結果を受けて昨日立憲民主党枝野幸男代表は辞意を明らかにした。次の党の顔を選ばなければならない。何人か意欲を示している人が見えるが、その中に香川1区の小川淳也さんもいる。小生は直接見ていないが、小川さんはTBSの「ひるおび」で維新との距離感を訊かれ、共通項があれば連繋する可能性を否定しなかったらしいが、これが波紋を広げ、一部には拒絶反応も出ているようだ。
 そもそも維新の側が何もないのに立憲に近づいていくようにも思えないが、それにしても、まだ具体的に何かが動いたわけではない。「維新と組むのは危ない」とか「希望の党の二の舞になる」とか、維新の作法に嫌悪を感じる人がいるのは承知しているが、評論家の方々も含めて、ちょっと過敏に反応し過ぎではないか。少数派の(なかの多数派である立憲)側が、初発の段階で、目的が合致すればどことでも連繋しますと間口の広さを世に示すのは、姿勢としては当然ではなかろうか。世の人がみんな維新の「素顔」を熟知しているわけではない。「新自由主義」「リバタリアニズム」――なんじゃ、それ? である。最初から「排除します」と言う方が、世間的にはむしろ「希望の党の二の舞」だろう。イスラエルの連立を見て欲しい。極右とアラブ系が連立を組んでいるのである。唖然とするが、そういうことが起こるのも、また、それを実現するのも政治である。結果はどうあれ、ここはしばらく外野は黙って見ているべきだと思うが。

 そして、維新にならうというのも変だが、地方議会、地方自治体首長から順次積み上げていかないと、政権は獲れないし、かりに政権交代したとしても、すぐに「揺り戻し」にあうだろう。それを我々は9年前にすでに見ているではないか。

 地方は高齢化と人口減少の影響がじわじわと顕在化し、中小都市からもかつての活況が失われている。下関市のある山口4区のアベシンゾー氏も2000年代なら12万とか14万の得票があったのに、2010年代は10万、投票率が低いとはいえ、今回は8万票である。数々の不祥事もさることながら、地方選出なのに東京にいて地方の荒廃のことをまったく分かっていないと下関?の人たちは怒っているのである。立憲民主党ほか「野党」の方々もこの基本に立ち返って党勢拡大や戦略について問い直すよう望む。
 もちろん、夫婦別姓はじめジェンダーLGBTの人権のこと、地球温暖化のこと、等、地方だけでは尽くせない問題は山積である。政党のリーダーにこうした問題に無関心な人がつくべきでないのは言うまでもない。

……衆院選の話はまだいろいろあるが、とりあえずこれで区切りをつける。今日はこれから草取りである(笑)。


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