ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

共産党・志位委員長のTweetを見て

 共産党志位和夫委員長の9月24日付Tweetがちょっとした波紋を広げた。反共側から反響(!)があるのは、まあ当然のこととして、志位委員長自身がマルクスの「法則」や「共産主義」をどう理解しているのかがほの見えて、個人的には少し驚いた。

志位和夫 on Twitter: "「共産主義はどうも」という方に2つの質問をしたいと思います。
1、資本主義という矛盾に満ちた社会が人類の到達した最後の社会か?
2、マルクスは21世紀では古くなってしまったか?
人類社会は資本主義で終わりでなく、その先に進むことができる。その法則を明らかにしたのがマルクスなのです。"

 理屈はさておき、「印象」を記す。
 まず、この「質問」、分からない人が答えを知りたい、教えてほしいという「質問」ではなく、すでに「答え」は用意されている。しかも、それは揺るぎないもので、ほとんど「議論」の余地がないもののように感じる。これでは「質問」というより「反語」に近い。こういう教師然とした、「教えてあげる」式のスタンスが鼻につくという人は少なくないと思う。志位委員長には申し訳ないが、こういうある意味「感情的」なTweetをされた意図に少々驚いている。最近続いたマスコミの反共攻撃にいらついていたのだろうか。

 若い頃、共産党の人と話をしていると、たびたび「確信をもって」という言葉を口にする人がいたことを思い出す。仲間うちで「40人学級」の実現を求める署名、学校予算の拡充を求める署名をしようという話になって、場違いと思いつつ、小生も恥ずかしながら街頭で呼びかけて署名集めをしたことがあるが、こうした方針を話し合うとき、共産党の人は必ずと言っていいほど「確信をもって行動する」「確信をもって取り組む」などと繰り返していた。あまりに連呼するので、小生のような優柔不断な人間に対する呼びかけ(苦言)というより、当人自身を鼓舞する言葉のように思えたのをおぼえている。

 今回の志位委員長のTweetにも同じものを感じた。資本主義社会が人類の到達した最後の社会かどうかは、人類の「最後」に立ち会っているかどうかわからない以上、「普通の人」にはわからない。志位委員長は、「資本主義で終わりでなく、その先に」共産主義社会があると「確信」しているようだが、それも「普通の人」にはわからない。キリスト教の「最後の審判」や仏教の末法の世と同種ではないかという指摘は、経験上、よくわかるし、こちらの方が「説得的」だ。

 もちろん社会を語る人にはそれぞれの理想があると思う。戦争のない社会、誰もが生き生きとする社会、公平な社会、…等々。それをどういう名前で呼ぶかはいろいろだ。志位委員長の思い描く「共産主義」社会もその一つかもしれないが、しかし、もしかしたら、資本主義と同様「矛盾」があるかもしれない。資本主義もある時代、ある人々にとっては「理想」だったはずである(今もか?)。

 「マルクスは21世紀では古くなってしまったか?」――そんなことはないと小生も思う。でも、それはマルクスの書いたものに、時代的な制約はあるにせよ、現在でも参照すべき「古典的」意味があるということであって、「アダム・スミスが古くない」「孔子が古くない」の類いと変わらない。
 マルクスが「明らかにした法則」というのも、実験室では「検証」できない「法則」だから、これも「確信」するかどうかという話になってしまう。もし、これをあくまで「法則」というなら、「法則」どおりに資本主義の次に成立したソ連や中国の「共産主義」を、本来の「共産主義」とは違う、時期尚早だった、あるいは、逸脱である、日本共産党ソ連や中国の共産党とは違う…と説明するだけでは、少なくとも「普通の人」には通じない。もっと自分たちの社会や組織にひきつけて検証することが必要だ。そうでないと、日本共産党も同じ陥穽にはまるのではないか。

 志位委員長は2000年から日本共産党のトップを務めているから、もう21年になる。当然、後継のことは考えていると思うが、20年以上組織のトップが変わらないことをどう考えるか。また、それを組織内から議論しようとする声が上がらないとしたら、常に民主主義を標榜する組織として、それはどうなのか。併せて考えていただきたいものだ。共産党の党内には有能な人、誠実な人は多いと思うが、まさか委員長と同じ「共産主義」の考えをもっていないと、党員や議員になれないわけではないだろう。

 愚直であることは、人間的には評価されても、政治的には必ずしも評価されないのかも知れない。今回の志位委員長のTweetとその反応を見ていて、そんなことを考えさせられた。批判的な繰り言になったが、これは非難や攻撃ではないことを、念のため申し添えておく。


 
 

↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村