ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

提案型野党の末路

 国民民主党衆院で政府予算案に賛成投票したことが波紋を呼んでいます。公明党の山口代表が、聞かれればまあそう答えるにしても、「自公連立政権の枠組みには影響を与えない」と念を押しているところから逆推(邪推)するに、事前に自民と国民の間に何らかのやりとり(口約束)があったのではと想像させます。夏の参院選の候補者の「相互推薦」をめぐって、公明との間に隙間風が吹いている自民としては、国民に秋波を送って公明を牽制しておくのも悪くはないというところでしょうか。さすが百戦錬磨の自民党です。
 しかし、この後、国民民主党はどうする気でしょうか。いくら議院が別だといっても、衆院で「賛成した」予算案に参院でケチをつけるというのも、なかなか難しいのではないかと思います。本会議の採決から逃げた人もいます。このままでは、分裂・合流・縮小の悪循環が再来しかねません。我々はまたしても同じものを見せられることになるのでしょうか。

 国会審議にはもちろん予算や法案をめぐる「交渉ごと」がありますから、批判でも提案でも何でもやって、実をとっていかなければなりません。しかし、それだけではなく、森友加計さくらなど、税金が不正に支出された疑惑があれば実態を解明しなければなりません。資料要求をして「相手」が素直にすべて出せば解明はスムーズに進むかもしれませんが、まず、この資料からして出てきません。しぶしぶ出されても黒塗りだったり捏造だったり、挙げ句にはシュレッダーで証拠隠滅です。こういうときに、国民民主の言う「対決よりも解決」がどれだけ有効な「戦術」なのか知りませんが、私的には、むしろ「対決なくして解決なし」ではないかと思います。まっ、語呂合わせで遊んでる場合ではありませんが…。

 昨年秋の総選挙で衆院議員に返り咲き、現在無所属の福島伸享さんがインタビューでこう言っています。2月22日付朝日新聞の記事より引用させてください。

「提案型野党なんてクソ食らえ」 無所属議員がみた「国会の花形」:朝日新聞デジタル

「野党の仕事は提案ではない」
 ――野党の衆院予算委員会の論戦をどう見てきましたか。
 迫力不足ですね。各党バラバラ、質問者もそれぞれが聞きたいことを聞いているだけ。波静かで穏やかで、眠くなってくる。
 予算委は「国会の花形」と呼ばれます。政局を決定づける論戦の場だと私は思っています。
 政権・与党と野党の価値観の違いは何か。政権の権力構造の本質はどうなっているのか。こうしたことを国民に明らかにする場のはずなのですが、今はそうなっていないですね。
 「提案型野党」なんて言葉がはやっていますが、「クソ食らえ」ですよ。野党の仕事は提案ではありません。与党になって自らが掲げる政策を実現するため、政治闘争を挑むのが本筋でしょう。
 政治闘争をする気がなく、政権に政策を提案したい政治家なら、シンクタンクで働けばいい。提案するだけなら、必ずしも政党や政治家である必要はないと思います。私が良いシンクタンクを紹介しますよ。
 「政治闘争なき提案」の末路が玉木雄一郎代表が率いる国民民主党の予算案への賛成の姿勢ではないでしょうか。しかも、ガソリン価格を下げるために減税できるトリガー条項の発動を政権側が飲んだと主張しているようですが、証文も予算的な根拠もない。周りからは「自民党に入りたいだけだ」と思われるだけでしょう。

立憲は「批判ばかり」を恐れている
 立憲民主党は「野党は批判ばかり」と言われているのを恐れているようです。ただ、枕ことばが足りていません。「くだらない批判」ばかりがいけないのです。
 政権を倒すことを目的にした批判、権力構造の本質を突く批判は体を張ってやらなければならないと思います。野党時代の自民党は、そうだったと思います。「批判ばかり」と言われておじけ付くなら、政治家をやるべきではないでしょう。民主政治の危機になりますよ。
 この国会では、自民党京都府連が国政選挙前に候補者から集めた現金を地元議員に配っていたとする月刊誌報道や、政府の経済安全保障法制準備室長の更迭人事といった問題が浮上しました。特に京都の問題は、選挙違反を取り締まるべき国家公安委員長自身が関係する事案です。
 立憲は予算委で追及し、二之湯智国家公安委員長参院京都選挙区)があいまいな答弁をしたけれども、審議は数分間、中断しただけでした。
 権力側が間違えている、自分たちのバックに民意があると思うなら、野党は批判を恐れずに体を張って審議を止めるべきでしょう。不祥事の背景を明らかにするのは国会での野党の大切な役割のはずです。

……
 ――福島さんは民進党に所属していた17年の国会で森友問題を取り上げましたね。
 手前みそですが、私は政局の大きな節目になると思って追及をしました。森友学園への国有地払い下げをめぐり、衆院予算委で安倍首相から「私や妻が関係していたということになれば、総理も国会議員も辞める」という答弁を引き出したのです。
……
 民進党は週刊誌に出たネタをパッと予算委で質問し、ニュースで扱われておしまい、ということが多々ありました。テレビに映ったか、新聞に記事になったかによって、次の質問の機会を与えられるかが党内で決まっていく。「くだらない批判ばかり」と受け止められても仕方がない面はありましたね。
 ただ、私は森友問題で独自の取材ルートを持っていました。霞が関の知人や大阪の関係者たちから情報を得ていました。ただ、民進党の幹部から、「偽メール」問題で衆院議員を辞職した永田寿康氏(故人)の名前をあげて「第二の永田寿康になりたいのか」と言われ、党の弁護士からは極めて慎重に対応するように説得され、質問させてもらえるまで1カ月ほどかかりました。
 私は国会論戦で、政権の権力構図を浮き彫りできたと思っています。当時、安倍政権はアベノミクスや外交でうまくやっているとみられていましたが、権力の内部で身内びいきの縁故主義や忖度(そんたく)が起きていることを国民の前に明らかにできたのです。
 こうした不公正・不公平の構図は、加計学園問題、「桜を見る会」の問題、菅義偉政権の日本学術会議の任命拒否問題にも通底しているのではないでしょうか。
 私には脅迫の電話がかかってきたり、頼んでいないモノが送り届けられたり、ネットで汚い言葉で誹謗(ひぼう)中傷されたりしましたよ。警察に私の家や事務所を巡回してもらったこともありました。

……

共産のせいにしても仕方がない
 ――立憲は昨年の衆院選議席を減らしました。
 民主党出身で無所属の野党議員の立場から言うと、立憲は本質的な選挙総括ができていないと感じています。
 私が17年の衆院選希望の党で挑みましたが、選挙後に党がなくなってしまいました。そのまま私は立憲にも国民民主にも属していません。昨年の衆院選ではどの党からも推薦を受けず、自民党の候補との一騎打ちを制しました。私は保守政治家を自認していますが、共産からも「自主支援」を受けました。
 立憲には「共産との共闘によって得票が減った」との声があるようですが、他人のせいにしても仕方がありません。私も相手陣営から「共産党支援の代議士はいらない」と批判されましたよ。けれども私は「党より人物」をキャッチフレーズに掲げてどぶ板選挙を展開してきました。むしろ自民党公明党の支持層も取り込めました。
 候補者の「人物」を理由に入る票は、どの党から応援を受けようと離れることはありません。候補者や党が一人ひとりの有権者と向き合う努力をしているか、魅力があるか否かが根本的な問題なのだと思います。

民主党政権は退場勧告を受けた
 そして、旧民主党に関係していた人たちは「民主党政権は国民から1度、退場宣告を受けている」と正面から認めなければならないのではないでしょうか。12年の衆院選の惨敗で民主党政権が終わって以降、その流れをくむ民進、立憲、国民民主はどの党も振るいませんよね。相変わらず民主党政権時代の幹部も表に出続けていますし。
 「謝る」と言うと安っぽいですが、民主党政権の何が悪くて国民の期待を裏切る結果になったのか、その反省を踏まえてどう出直すかを国民の納得のいく形で示さないままになっているのではないでしょうか。民主党政権をつくろうと09年の衆院選で投票してくれた人たちの「後悔」に、投票してもらった側は正面から向き合わないといけなかったのです。
 無所属で出馬することは勇気がいりましたが、私は独自に世論調査をしたり、地元の人たちの声を聞いたりする中で、一度政党を離れた方が勝算はあると読みました。すると、09年衆院選で応援してくれたけども、それ以降は距離を置いていた人たちが、支持者として戻ってきてくれました。
 17年の衆院選での希望の党や、今回の立憲民主党は「旧民主党の議員たちが議席を守る道具」と有権者に受け止められていたのではないでしょうか。

<以下略>



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