ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

選択的夫婦別姓のこと

 名前の文化は興味深い。日本の名前にも、出自をはじめ、いろいろとおもしろいネタが多いが、世界でも、たとえば、ビルマミャンマー)の人には代々継承されるような姓がないとか(必要な場合、両親いずれかの名と自分の名が併用される)、ロシアだと、名(個人名)・父称(父親の名前を変化させたもの)・姓名のほか、愛称もあり、一人の人物にいくつも名前(のパターン)がついてまわるとか(おまけに男性と女性で形が変化するから、プーチン(男)とプーチナ(女)が同じ名前だということに気づかなかったりする)……。

夫婦同姓を選んでも…姓が男性・女性で異なるロシア 困ることはないの?ロシア人に聞いてみた(まいどなニュース) - Yahoo!ニュース

 夫婦別姓について言えば、ビルマでは生まれてから死ぬまで名前が変わらないから、そもそも結婚で名前が変わるという「法慣習」がない。ロシアでは夫婦同姓が一般的とはいえ、同姓にしなければならないきまりはない(すでに1926年の法律で、同姓にするも、別姓にするも、選択可能となった)。今の時代に、法律で夫婦同姓を定め、選択的別姓を認めない国というのはかなり珍しいことになっている。
夫婦別性 世界はどうなってる?? | 大阪相続遺言相談センター

 これは国連の指導が大いに関係していて、世界的には夫婦別姓や選択的夫婦別姓を導入する国が増えてきている。日本も1985年に「女性差別撤廃条約」を批准しているので、夫婦別姓の他にも、女性の再婚待機期間の短縮、法定婚姻年齢の引き上げ、婚外子差別の撤廃……など、女性差別につながる事項の是正を強く求められ、それに従って国内法を整備してきた。残された大きな問題がこの「夫婦別姓」なのである。

 以下、ライターの和久井香菜子氏の2018年4月1日付記事からの引用。

夫婦別姓を選べないのは、世界で日本だけ。なんでなの? | 女子SPA!

ポイントは、自由が認められる国にするかどうか
 日本は結婚したら夫婦が同じ姓を名乗らなければいけない、と民法で決められています。その背景には、「夫婦は同じ姓じゃなきゃ意味がない」「絆が壊れる」「子供の姓はどうするのか」などなど、夫婦・家族は同姓であるべきという考え方があります。
 筆者も、結婚したときは相手の姓になることに何の疑問も持ちませんでした。むしろ「名字が変わることで昔とは違う自分になれる」「結婚したことが周囲に一目瞭然」などと誇らしい気持ちだったように思います。
 しかしいざ姓を変えるとなると、とてつもない嫌悪感が襲ってきました。夫のことは好きでしたが、夫の家族は単なる他人です。その「家」に入るような感覚が、イヤでたまりませんでした。「姓を変えるのが嫌だ」と夫に訴えましたが「俺は男だから嫌だけど女だからいいだろ」と言われ、自分の感情を夫にすら理解されない淋しさを感じました。
婚姻届に記入する女性の手「選択的夫婦別姓」は、同姓にしたい人は同姓に、元の名字を使いたい人は別姓にできる、より自由度の高いシステムになるということです。これは同姓で結婚をしたい人も含め、あらゆる人にメリットがあると、打越先生(弁護士)は言うのです。
「他人の自由を認めることは、将来的に自分に返ってきます。『自分は夫婦になったら同姓がいい』と思っていても、違う意見の人を尊重することで、社会はうんと過ごしやすくなるはずです。
 そういう社会なら、いずれあなたがなにかをしたくなったとき、周りの人たちもあなたを尊重して応援をしてくれるでしょう」(打越先生、以下同じ)

世界で日本だけ…国連から何度も勧告を受けている
 さらに日本は、今すぐにでも夫婦別姓を認めなければならない状況にあると、打越先生は言います。
「それは日本が1985年に批准している『女性差別撤廃条約』に違反しているためです。これは1979年に国連で決まった条約で、男女が同一の権利を確保し、女性に対する差別の根絶を目的としたものです。
 この委員会から、日本は繰り返し勧告を受けています。その内容は『女性の再婚待機期間の短縮や法定婚姻年齢の引き上げ、夫婦別姓婚外子に対する差別の撤廃』などです。
 このうちの夫婦別姓以外については動きがありました。残るは夫婦別姓を勧告に従って取り入れることが急務なのです」
結婚 夫婦別姓を法律で認めていないのは、今や、世界で日本だけなのだそうですね。
「夫婦同姓が定められていたアメリカは1970年代に、ドイツは1993年に、オーストリアとスイスは2013年に別姓が認められました。タイでは夫婦同姓強制の条文を違憲とする判決を受けて、2003年に選択的夫婦別姓を実現しました。別姓か同姓かだけではなく、結合姓も選べるなど、選択肢が多い国もたくさんあります。
 世界各国で夫婦別姓が推し進められてきた理由は、同姓を強いることで妻が自分の姓を失うことになり、女性差別につながるという国際的な判断なのです」
 このうちの夫婦別姓以外については動きがありました。残るは夫婦別姓を勧告に従って取り入れることが急務なのです」

<以下略>


 これは「AをBに変えろ」、とか、「BをAに変えろ」というのではなく、「AでもBでもどちらでもよい」という話だ。自由社会に適合的なのがどちらかは自明である。しかも、これは男性側が多く求めていることでは全然ないのだ。

 しかるに、3月10日、自民党がこの「選択的夫婦別姓」制度を議論するワーキングチーム(WT)の設置を発表し、そのメンバーは座長・石原伸晃元(63)、事務局長・西村明宏(60)ほか、冨岡勉(72)、奥野信亮(77)の計4名が幹部だと発表された。この還暦を過ぎた男性4人は夫婦別姓にどんな問題意識をもっているのか。冨岡は2014年に態度保留、2016年の新聞アンケートで「自由に選択すべき」と回答しているようだが、あとの3名は全員夫婦別姓には反対である(こうなると、冨岡の選出自体アリバイとみなさざるを得ない)。自民党にそもそも女性議員が少ないとはいえ、なぜ、女性議員が誰一人としてこのWTの「幹部」に入らないのか? 接待の釈明の方が忙しくてやってる暇がないか、別に「女性」としてどうでもいいということなのか?

自民党が選択的夫婦別姓の論点整理も幹部に“女性なし”で批判続出 | 女性自身

 森発言から発火したこの国の後ろ向きな女性差別撤廃問題——まず自民党内にその病巣があるといってよいと思う。





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