ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

地方選挙結果 & 台湾に学ぶこと 

 昨日投開票が行われた各地の選挙結果を見た(地方選挙速報2021年(選挙結果一覧と立候補者) | 選挙結果速報データ)。
 全体として現職や保守系候補の優勢に大きな変化は感じられないが、場所にもよるか、という印象。

 自民党推薦候補が落選した(or 落選が目立った)例を3つ。

北九州市議会選挙 

「政府の釈明に追われ…」コロナ一色、自民に逆風 北九州市議選|【西日本新聞ニュース】

自民党は、党福岡県連副会長を務めるベテランを含む現職6人が落選。選挙選では、候補者が後手に回る政府の対応を有権者から批判され、たじろぐ姿も目立った。……落選した同市小倉南区の自民現職の片山尹氏……。当選10回を数え、議長も経験した片山氏は麻生太郎財務相ら国会議員と気脈を通じ、市政運営に大きな影響力を持つ「重鎮」。前回は同区でトップ当選し、今回、片山氏の事務所スタッフの一部は他候補の応援に回った。党関係者は「片山さんだけは大丈夫と思っていたが…」と絶句した。


鹿児島県西之表市長選挙

西之表市長に八板氏再選 馬毛島基地に反対―鹿児島:時事ドットコム

 無所属現職の八板俊輔氏が、自民党県連推薦の無所属新人で市商工会長の福井清信氏を破り、再選。投票率80.17%。
 米軍空母艦載機の離着陸訓練(FCLP)の移転先として、防衛省が同市の無人島、馬毛島で進める自衛隊基地建設計画の是非が争点だったが、反対派の八板氏が票差144票で勝利。


東京都千代田区長選挙
都民ファーストの会」推薦の樋口高顕氏が当選。自民・公明推薦の候補を破る。


 国政と地方政治が直結するのかどうかは未知数だ。今までが今までだから、これをもって “自民退潮“ とか “自民崩落” とかと騒ぐのはまだ早いと思うが、現状に満足している有権者が少ないのは確かだろう。あとは「選択肢」と「受け皿」の問題。



 国政については、ジャーナリスト・編集者の近藤大介氏の1月26日付のインタヴュー記事が興味深かった。以下はその部分要約。

「日本の5年後」が台湾と韓国のいまの姿から予見できる理由(近藤 大介) | 現代ビジネス | 講談社(1/7)

<前略>
「韓国と台湾は日本の数年先を行っている」という法則がある。どちらも日本と同じ資本主義、民主国家(を標榜)だが、日本よりも人口や面積、経済規模が小さいため、世界の潮流の影響を、日本よりも先に受けて変化している。
 韓国では1998年、軍事政権、右派政権が終焉して、左派の金大中(キム・デジュン)大統領が就任した。2000年には台湾で国民党の長期政権が崩壊して、革新政党民進党陳水扁政権が誕生した。それから約10年を経た2009年に日本では鳩山・民主党政権が誕生した。
 その後2008年には、韓国では右派が復権し、李明博(イ・ミョンバク)政権が誕生。台湾でも国民党が復権して馬英九政権が誕生し、それから4年経った2012年末には、日本でも自民党復権し、安倍晋三政権が発足した。
 しかし、韓国では2017年に再び左派の文在寅ムン・ジェイン)政権が興り、台湾でも2016年に民進党蔡英文政権に代わった。
 こうした流れにそえば、近い将来、日本でも自民党が再び下野する可能性がある。世界のグローバル化とコロナ禍によって、どの国でも社会の二極化と格差が進み、社会に不満を持つ庶民層が多くなっているから、構図としては革新政党に有利だ。ただ、自民党の支持率の落ち方は緩やだ。まもなく、内閣支持率自民党支持率よりも下になる「ねじれ現象」が起こるだろうが、これは、野党が情けないからで、韓国や台湾ならば野党に流れる層を、日本の野党は拾い上げていない。野党の方々に言いたいのは、国民が納得できる政策と、信頼できるリーダーが現れたら、日本でももう一度、政権交代は可能だということだ。

 日本はコロナ対策で、もっと台湾から学ぶべきだということを以前に述べたが、野党も台湾の与党・民進党に学んだ方がいい。
 台湾の民進党民主進歩党)は1986年に、革新系の在野の人たちが創建した。1996年に創建された日本の民主党の台湾版だ。台湾の民進党と日本の民主党は、それぞれ国民党と自民党の長期政権による腐敗や金権政治に不満を抱く国民を取り込んで、政権奪取を実現したが、その後、日台ともに経済政策や外交・安保政策に疎い「素人政権」ぶりを露呈させ、下野した。
 しかし、日本と台湾のその後は雲泥の差だった。日本の民主党は、2012年末以降の安倍政権下で行き詰まり、立憲民主党や国民民主党などに分裂してしまったが、他方、2008年の台湾民進党は、なぜ国民党に敗れたか、どうしたら再び政権を掴めるかを徹底的に分析し、バージョンアップを図った。最大のポイントはIT化と、若者の取り込みにあると考え、IT政府を作れるよう入念に準備し、若者向けの徹底したSNS戦略を展開したことだ。
 私がチェックしているLINEの「民進党アカウント」には、毎日しつこいくらい中国語の発信がなされている。例えば、1月20日ジョー・バイデン米大統領の就任式に、1979年の米台断交以来、初めて簫美琴「台湾大使」が招待されたことについて、4本もの動画が解説付きで送られてきた。また、1月11日からは、「中華民国パスポート」に代わり独立色の強い「TAIWANパスポート」の発行が始まったが、どうやって切り替えたらよいかを懇切丁寧に書いて送ってきている。
 また、台湾では約1年前(2020年1月11日)に総統選挙と立法委員(国会議員)選挙があり、取材に赴いたが、当時130万人の「首投族」(ショウトウズー)の取り込みが選挙の勝敗を左右すると言われていた。「首投族」というのは、「初めて投票する人たち」という意味だが、台湾の総統選挙と立法委員選挙は4年ごとに行われ、選挙権は満20歳からなので、20歳から24歳の若者は、その時が初めての投票だった。民進党は、この「首投族」に向けて、御年63歳の蔡英文総統を、セーラームーンのようなコスプレのキャラクター「小英」(シャオイン)に仕立てて、毎日大量のLINEメッセージを流した。その際、ただ選挙公約を送っても読まれないので、「小英」が「首投族」に向けて、若者受けしそうな台湾語のジョークとか、タピオカミルクティの新製品の飲み比べ情報などを入れ込んでいった。「小英」は人気キャラクターになり、「小英グッズ」がもらえる民進党本部は、若者たちのデートスポットになっていた。民進党本部では他にも、訪れた若者たちが立候補者に扮して自分が思っている「公約」を述べたり、記念写真が撮れたりする「お立ち台」まで作っていた。

 IQ180のオードリー・タン(唐鳳)IT大臣も、そんな中から出てきた人で、天才IT大臣もすごいが、30代の無名の民間人を大臣(政務委員)に抜擢した蔡英文総統もすごいと思う。
 ある民進党幹部から聞いた話では、2015年に蔡英文氏が、民進党公認候補として翌年の総統選挙出馬を決めた際、自分が政権を取った場合に3つのことが恐いと思ったと。それは、「中国」「疫病」「地震」で、「中国」に関しては自分が専門だから、自分の頭で考えればいいが、「疫病」と「地震」は専門外なので、なるべくこれらの専門家を政府と党の幹部に置こうとしたという。民進党内には反対の声が強かったが、蔡氏が押し切った。結果として、政府と党の要職に「疫病のプロ」を配置したこの人事が「台湾の奇跡」につながった(1月24日現在、台湾の累計感染者数は889人、死亡者数は7人)。

<以下略>


 この国ももっとよくなるはずだ。外国でできることがこの国でできないことはない。




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