ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

石原伸晃議員と「トリアージ」

 〇トリアージ:フランス語 triage「選別」「優先割当」の意。大災害によって多数の被災者が発生した際に、どの負傷者から治療するか、どの患者を救急搬送するかといった優先順位を決めること。また、その役目。現場の人材・機材などを最大限に活用するために行う。
 ◆優先順位を傷病者の手首につけたタグで表示する。緑が軽傷、黄色が早期に治療が必要、赤が緊急治療が必要……。
デジタル大辞泉より)

 幼少の頃、風邪をひくたびに中耳炎になり、よく医者に行ったものだった。田舎で大きな病院もなく、耳鼻科は町に一軒しかないその町医者に診てもらうしかなかった。中耳炎というのは鼓膜の奥に膿などがたまるため、耳の後ろが痛くなる。小学校に上がったくらいのときに風邪をひき、朝から耳の後ろがひどく痛くて泣いていて、母親にその耳鼻科医院へ連れられて行った。待合室は大変混んでいて、待っていてもなかなか順番が回ってこなかった。その間、小生が痛い、痛いと泣いていたせいか、母親が係の女性に「順番はまだでしょうか」と何回も尋ねていた。「痛くて泣いてるんです」と。係の女性も忙しかったのだろう、ムキになって「みんな待ってるんですよ、あなただけ特別扱いはできません!」などと大声で母親を叱りつけたのだ(これだけはよくおぼえている。)。……でも、それは当然のことだ。母親はいたたまれなかっただろう。その気持ちは子どもにもよくわかった。だから、「おかあちゃん、いいよ……」と思って泣くのをこらえた。順番で呼ばれるまで、それからまたずいぶん待っていたような記憶がある。

 変な記憶が呼び覚まされてしまったが、昨日石原伸晃議員が新型コロナに感染し、 “即入院“ できたことが話題になっている。無症状とはいえ、この感染症の怖さを考えると、まずはすぐに検査と診療を受けられてよかったのではないか。しかし、緊急事態宣言が出されている中、病院が満杯だからと自宅療養を指示されて結果として亡くなっている人が次々と出ている。医療の世界では「トリアージ」が「命の選別」みたいな話になっている状況だ。これが昨年の話だったら、大阪の橋下徹氏のように揶揄される程度で済んだかもしれないが、この「特別扱い」に小生を含めて不審の目を向ける人がいるのは当然のことだろう。それを石原議員当人がどうとらえるか。「特別扱い」されて、「いたたまれない気持ち」になるのならわかるが、もう「慣れっこ」になっているとしたら……。

 これまでの石原議員の言行を掘り返して論評している昨1月23日付の「リテラ」の記事を読んだが、辛辣だった。少々勢い余っている部分もある。ネットの反応を紹介した最初の部分だけ引用する。

石原伸晃の「無症状でもすぐ入院」に非難殺到! 一般国民とは明らかに違う特別扱い 石原は過去に胃ろう患者を「エイリアン」と揶揄|LITERA/リテラ

 自民党石原伸晃・元幹事長(63歳)が新型コロナに感染したと昨日発表されたが、PCR検査で陽性と判断されるやいなや無症状なのに即日入院したというニュースを受けて、ネット上では疑義を呈する声や「上級国民」なる批判が巻き起こっている。 
〈報道では、現段階では体調に異変はないそうです。ですが何故、直ぐに入院出来たの?入院待ちしてて、亡くなる方々が続出してるのに。国会議員だから?お父さんの力?上級国民は優遇されるのかな?私や家族が罹っても、放置されると思うけど(>_<)〉
〈上級国民は即入院〉
〈一般人と同じように、まずは自宅療養すればいいのではないか!〉
〈一般人が無症状で東京医科歯科大学PCR検査ができるのか。無症状でも即入院できるのか。その時点で空きのベッド数はいくつで、待ってる人が何人いたのか。こんなことが許されて良いのか。しっかりと説明して欲しい〉

 さらに、石原氏が安倍政権下で環境相だった2014年、福島第一原発の除染で出た除染土の中間貯蔵施設建設で地元との調整について「最後は金目でしょ」と発言し、大問題になったが、この過去の発言を蒸し返すかたちで、「最後は金目で入院させてもらったのか」という声もあがった。


 こうした立場になった議員は、「あらゆる人がすぐにPCR検査を受けることができ、すぐに入院・治療できる体制」づくりに邁進するよう “天命“ を受けたと考えて、動いてもらえればいいと思う。あのイギリスのジョンソン首相もコロナに感染して自らの慢心を省みたというではないか。誰もが初めて経験するような事態なのだから、“ミス” や予想外のことはついてまわる。石原議員にも是非国民の多くが喜ぶ方向で動いてもらいたいと願うのだが、これは無理な話なのだろうか?(——ああ、そう……)。


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