ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

オリンピックが政治を狂わせている

 島根県丸山達也知事が2月17日、5月に県内で実施する予定の五輪の聖火リレーや五輪開催そのものの中止に言及し、波紋を呼んでいる。

 ぼうごなつこさんの漫画は以下。
なすこ on Twitter: "#100日で収束する新型コロナウイルス
58日目
収束まであと42日… "

 加藤郁美さんのTweetもわかりやすい。
https://twitter.com/katoikumi/status/1362328680672858112

 丸山知事の発言を拾うと

 「県は、五輪組織委に対して立場が弱く、聖火リレーをさせてもらっている、させてあげているという関係」
 「耐えがたきを耐えて、仕方ないと思っていましたけれど、(県内のコロナによる窮状を考えれば)そんな遠慮をしてる場合ではないということ」
 「感染を抑えている地域も12月、1月、かき入れ時、お客さんが来ない」
 「閑古鳥が鳴いている。その状況は感染拡大地域と変わらない」
 「感染防止を一生懸命やってきた地域が、ある意味、捨て置かれているといった状況」

 さらに
 聖火リレーの政治利用だという人もいるが、五輪の招致段階で政府が関与していて、政治そのものじゃないんですか」


 経済アナリストの森永卓郎さんもこう書いている。

オリンピックがコロナ対策を狂わせた | | 森永卓郎 | 毎日新聞「政治プレミア」

 オリンピックを開催するかどうかの最終判断は、3月上旬に行われるとみられる。いま東京で大規模PCR検査を行えば、大量の陽性者が発覚して、開催が困難になってしまうのだ。東京にいまどれだけの感染者がいるのか、PCR検査を抑制している現状では分からない。ただ、厚生労働省が昨年12月に行った抗体検査で東京都の抗体保有率(過去に感染したことのある人の割合)が.0.9%だったことを考えると、現時点で陽性の人の割合がその10分の1と仮定すれば、東京都の陽性者数は1万人前後になるのではないか。
 ただ、仮にそうだとしても、1万人という陽性者数が明らかになったら、オリンピックは開催できなくなる。だから大規模なPCR検査ができないのだろう。

緊急事態宣言は最初から「2カ月」だった

 オリンピックは、緊急事態宣言の期間にも影響した可能性がある。1月8日から2月7日までの1カ月間、11都府県に発出された緊急事態宣言は、栃木県を除いて3月7日まで延長されることになった。それは、当初から想定された事態だった。昨年の緊急事態宣言のような幅広い自粛要請はなく、今回の宣言は飲食店の夜間営業自粛を中心とした緩いものだったからだ。
 緊急事態宣言の経済損失は大きい。例えば、野村総合研究所の推計では、経済損失は2兆3000億円とされている。ただし、この推計は、緊急事態宣言が1カ月で終わると仮定した数字だ。宣言が2カ月続けば、経済損失も2倍になる。………
 なぜ経済損失が大きくなるのか。それは、緊急事態宣言の影響が飲食業にとどまらないからだ。「家計調査」でみると、昨年の一般外食費は27%の減少となったが、交通費はマイナス49%、教養娯楽サービスはマイナス31%、被服履物費はマイナス19%と大きなマイナスとなっている。
 今回も、イベントが次々に中止となり、エンターテインメント産業が大きな被害を受けている。また、通勤や外出を減らせば、スーツや外出着が売れなくなる。それに伴ってクリーニングなどの関連業界も大きな影響を受けるのだ。

f:id:Amurin:20210219071424j:plain

 しかも、緊急事態宣言は、指定された自治体以外にも大きな影響を及ぼす。図を見ていただきたい。緊急事態宣言が発出されたのは、1月8日だ……が、感染から報告まで2週間のタイムラグがあることを考えると、緊急事態宣言の影響を受けていない最後の日は1月21日に公表された新規陽性者数ということになる。そこで1月21日の新規陽性者数を100として、過去7日間平均の新規陽性者数の推移をみたのがこの図だ。これをみると、緊急事態宣言後の新規陽性者数の減少度合いは、宣言県でも非宣言県でもほとんど変わらないことが分かる。ちなみに2月14日のデータは、宣言県が24.6%、非宣言県は27.4%だ。
 この事実は、緊急事態宣言が発出されていない道県でも、発出された都府県と同じくらい人々が行動を自粛したことを意味する。
 緊急事態宣言は、経済や国民に大きな負担を強いる。短期間で終わらせることが、何よりも重要だ。ところが、政府は2カ月、継続することを前提に緊急事態宣言を実行した。それは、なぜか。緊急事態宣言を1カ月で解除したら、その後のリバウンドで、オリンピック開催の可否が判断される3月上旬の感染者数が増えてしまう可能性がある。だから、念には念を入れて、判断の直前まで緊急事態宣言を継続することにしたのではないか。


 また、組織委員会会長の後任について、政府は当初「政府に会長人事の権限はなく、組織委員会が決めること」と言っていたのに、川淵後継の話になった途端、“ハシゴ外し“ に出たのはなぜか。森永さんは、こう推測している。

 私には思い当たるふしがある。川淵氏は森前会長から後継指名を受けた2月11日に、記者からの問いかけに「会長は東京オリンピック開催の可否について判断しなければならない」と答えた。森前会長は、「開催の可否を検討するのではなく、開催のためにどうするのかを検討する」という立場だった。また、川淵氏は、「観客がいなくてオリンピック、日本でやる値打ちあるの? 海外でやるのと同じ」とも話している。無観客開催で、テレビでみるだけなら、日本でやる意味がないというのは、多くの国民が共感する「常識」だ。その常識を語った川淵氏を引きずり下ろしたということは、裏返せば、政府は無観客でもオリンピックを開催する強い決意を固めているということだろう。


 多くの人が言っているように76年前の戦争末期もこんな感じだったのだろう(それだけに丸山知事の発言は貴重!)。こういう国に各国のオリンピック代表選手が来る気になるだろうか? また、国として選手を送り出しても大丈夫だと思うだろうか? 遅かれ早かれ、世界の人々、世界の国々から「三行半」をつきつけられることになるだろう。そうなってもなお、森喜朗の「謝罪」会見のごとく、批判される意味も分からずに「(「揚げ足」ばかリとりやがって)おもしろおかしくしたいんだろ!」と言い放つのだろうか?


↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村