『吠えない犬 安倍政権7年8カ月とメディア・コントロール』(双葉社)を出したニューヨーク・タイムズの元東京支局長マーティン・ファクラー氏が「赤旗」のインタヴューに応じている。2020年12月20日付「赤旗 日曜版」の記事より、以下に概要を記す(記事は「のら猫 寛兵衛」さんのブログからの孫引き)。
のら猫 寛兵衛:SSブログ
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2009年、ニューヨーク・タイムズの東京支局長に就任し、当時(麻生政権)の首相官邸にあいさつに行くと、官邸の国際報道官(外務省からの出向)から、「前任者の(「慰安婦」などの)記事が政権に批判的過ぎたので、官邸からの取材協力が欲しければ、前任者の記事を批判し、『自分は違う報道をする』旨を文書で提出するように」と言われ、驚いた。
以前、中国で取材中に天安門広場前で警官に捕まり、「自己批判」を迫られたことを思い出し、「日本の官邸は中国と同じことを」するのかと言うと、報道官は慌てて否定した。そして、その「誓約書」を提出しなかったところ、自分が支局長をしている間、首相にインタヴューをする機会は一度もなかった。他の海外メディアは、何度も首相(安倍)の単独インタヴューをしていたが……。
安倍氏の首相辞任表明の会見(8月28日)でフリーランスの人から質問が出た。「(官邸は)質問を事前に取りまとめ、事前に質問を出した社にしか当てない。それは首相自身の指示なのか。仮に知らなかったとしても、問いと答えが目の前に置いてあるという状況に違和感を覚えなかったのか」と。安倍氏はこの質問にまともに答えず、はぐらかした。首相会見自体が、官邸によって操作されるメディアコントロールの最たるものだと思う。
安倍政権下で、政権に批判的だったテレビキャスター、コメンテーターが次々と第一線から引いていった。その一方、テレビや新聞の幹部が安倍首相と夜の会食を繰り返していた。18年11月、「桜を見る会」問題が、「赤旗」の報道などで明るみになったが、その後も安倍氏は、連日のように、メディア幹部や記者クラブの記者らと会食していた。追及する側と追及される側が食事をする必要がどこにあるのか。
日本はアクセスジャーナリズム(取材対象に気に入られて内部情報をもらうこと)に偏っている。政府や権力内部から情報を得て、それを分析して伝えていくことも確かに必要だが、バランスが大事だ。もっと政府のウソを暴くような調査報道に力を入れるべきなのに、政府や権力が伝えたい情報、ストーリーをうのみにしていることが多い。アクセス権を奪われ、締め出されることを怖れている。ジャーナリズムというのは本来、権力者にほえる「Watch Dog」(番犬)のはず。しかし、日本では権力者を守る「ポチ」になってしまっている。
日本のメディアは太平洋戦争で戦争に協力するという大失敗をしたので、それを覚えている世代が元気なうちはまともだったと思うが、その歴史を知らない世代が中心になり、「楽な」方向に行くようになった。福島第1原発事故という「安全神話」の崩壊という大失敗から学ぶべきだったのに、そうなっていない。アメリカのメディアには、ベトナム戦争、イラク戦争での失敗がまだ生々しく記憶されている。「イラクは大量破壊兵器を持っている」などの政府のウソを見抜けず、協力したことへの反省も強い。
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