ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

1か月後、病院の風景は……

 昨日は延び延びになっていた検査を受けるため父親を病院に連れて行ったのだが、びっくりするほど人が多かった。ここは病床のない小さな病院だが、検査の間様子を見ていると、医師も看護師も決して広いわけではない処置室にいる患者のもとをせわしなく往復していて、それはもう見ているだけで頭が下がる思いがした。うちの父親の場合は、予約していた検査なので昼前くらいには終わったが、待合室にはまだ大勢の人が残っていた。中には長時間待たされているのだろう、事務職員に自分の順番を確認する人も見えた。双方ともにやりとりは柔らかく、救われる思いがしたが、いつもそういうわけにはいかないだろうと思う。2日前にも別の病院に連れて行ったが、ここも患者が多く、看護師さんは忙しそうに動いていた。病院はどこも大変そうだ。

 新型コロナの感染者は増加し続けていて、このままでは医療体制が崩壊すると、医師会をはじめ多くの専門家が警告している。病床を確保したとしても、相応の人員(”マンパワー”?)を確保するのは困難だという。昨夜のTBSのNスタで、具体的にはどうやって人員を確保するのかという問いに、出演していた専門家は、病院内の他(科?)から人を集めてくるしかない、というような話をしていた。学校で言えば、英語の授業に、授業のない空き時間の社会や数学が専門の先生に来てもらってサポートしてもらうという感じだろうか。しかし、社会や数学の先生が生徒に個別に英語を教えて大丈夫だろうかという不安は先生・生徒の双方にある。これは病院内でかり集められた人たちも同じではないだろうか。機器の取り扱い、患者への対応……。また、人員をもっていかれた科はどうなるのだろうか。総合病院で言えば、内科はやるが外科は閉鎖するとか、一時的かもしれないが、コロナ患者を受け入れている病院では、そういう診療科の取捨選択をせざるをえなくなるのではないか。

 東京新聞11月26日付の記事より引用する。

ばらまかれるコロナウイルス…感染急増で崩壊迫る医療現場…危機感ない政府にいら立ち:東京新聞 TOKYO Web

◆病床も医療従事者も足りなくなる
 病床は埋まり始めている。重症者は24日現在、全国で376人で、1週間前と比べて100人増えた。
 感染ピーク時に受け入れ可能な病床数からすると余裕はあるようにみえるが、ピーク時の病床数は、都道府県が医療機関から聞き取った受け入れ可能な最大ベッド数を足したもの。いわば「目標値」だ。
 座長の脇田隆字たかじ国立感染症研究所長は24日の記者会見で「病床が箱として準備されても、そこには医師や看護師が必要だ。そういった人たちを簡単に増やせるわけではない」と強調した。日本医師会の釜萢かまやつ敏常任理事も「これ以上の病床を用意するのはとても無理という感じ」と語った。

◆東京が一番大変
 「病床の逼迫ひっぱくは東京が一番大変」。専門家組織のメンバーの一人はそう話した。東京都の重症者用病床は150床あり、使用率は4割弱だが、都立駒込病院の今村顕史医師は24日の専門家組織の会合で「ベッドがあっても対応するマンパワーの問題で、いっぱいまでは受け入れられない」などと説明したという。
 都福祉保健局の担当者に確認すると、重症者が少しずつ増えていけば対処は可能だが「一度にとなると難しい」と説明した。1日に20人、30人と重症者が増えていけば、受け入れられなくなる可能性がある。現在、軽症者はホテルや自宅療養となり、入院するのは中等症以上で、1人の患者をみる負担が重くなっている。
 日医の中川会長は25日の記者会見で「コロナ患者を受け入れるために、脳卒中心筋梗塞など、他の疾患の受け入れが困難になりつつある」と話した。

◆「GoTo調整なんてしている暇ない」
 医師ら専門家と政府の温度差は大きい。24日の専門家組織の会合後、メンバーの1人は「政府のいろいろな方に、非常に強い危機感がちっとも伝わらない。悲痛な感じ」と話した。2週間、3週間後の医療体制を維持できる見通しが立たないという。
 「ピンポイントでこれをやれば、感染拡大が止まるという状況ではない。ウイルスが地域にばらまかれている」と感じている。「国と知事がGo To トラベルで調整なんてやっている暇はない。移動制限が必要だし、飲食店の営業時間短縮を強力にやらないといけない」と訴えた。


 感染阻止には「初動」が肝心だということは、第一波の際に痛感することだった。大型クルーズ船内の感染者への対応、春節だった中国ほか、外国からの入国遮断など……迅速に対処すれば、2月3月の国内感染は相当抑えられたはずだった。スピードではなく、スピードが大切なのだ。
 また、感染がいったん落ち着いても、第二、第三の波は必ず来ると言われていたのだから、感染が下火になった6月頃に、次の「波」に備えて、準備を整えておく必要があった。ところが、医療体制を整えるよりもGo to に前のめりになり、東京をこれに加えたために、感染が下がりきらないうちに大波に襲われているというのが現状だ。市中感染が広がり感染経路不明が多数になっている状況では、Go to の中断どころか、人の移動そのものを管理しなければ抑制効果は上がらないだろう。「非科学的」なことばかり続けているのに、エビデンス(科学的根拠)があるとかないとか、それでいて、火事場泥棒のように国民投票法の改正とか、……政権が替わって3か月だが、あきれるばかりだ。

 昨日、先生は終わり際に「○○さん、また年の瀬にお会いしましょう」とおっしゃった。ほとんど耳の聴こえない父親だが、先生の笑顔はわかったようで、にこにこしながら診察室をあとにした。「これからの3週間が感染拡大を抑制するため極めて大事な時期だ」そうだが、医師と患者のこういうやりとりが一か月後もふつうであることを願う。




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