ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

新宿のデモ 看護師の声

 田中龍作さんの「田中龍作ジャーナル」の昨日(6月6日)付の記事により、新宿で看護師らのデモがあったことを知った。その引用。

田中龍作ジャーナル | 反五輪デモに襲いかかる街宣右翼 分断もたらす平和の祭典

……逼迫する医療事情を見て見ぬ振りをし、政府と組織委はオリンピックに突き進む。
 医療現場の声を聞くために田中は新宿に出かけた。新聞テレビが報道するよりも現実は酷かった。あるケアマネージャーに話を聞いた―
 練馬区の病院でクラスターが発生した。ここまではよく聞く話だ。
 病院内で勤務する医療スタッフにはワクチンが接種されたが、訪問系のスタッフには接種されなかった。
 結果、ワクチン接種がされなかった訪問系の部署のみでクラスターが発生したのである。看護師、ケアマネージャー、介護福祉士ら5人が感染した。
 病院では「診療控え」も起きている。骨折ぐらいでは入院させてもらえない。
 ケアマネージャーは「オリンピック・イコール命の選別ですよ」と話した。

 きょうのデモ(主催:「改憲・戦争阻止!大行進」実行委員会)は、街宣右翼がいつにも増して騒々しかった。
 デモのスローガンに「命よりカネ、利権と改憲の菅倒せ」などとあったからだろうか。
 スピーカーのボリュームを一杯にあげた「♪進軍ラッパ」の音が新宿の街中に響き渡った。
 「鼓膜が破れる」などというレベルではない。脳しんとうを起こすほどの強烈な騒音だった。
 街宣車から降りてデモ隊に挑みかかろうとする右翼隊員もいて、そのたびに警察に制止され、街宣車に押し込まれた。
 田中は星の数ほどデモを見てきたが、きょうほど街宣右翼が闘争心をむき出しにした場面は見たことがない。安保法制反対(2015年)の時もこれほどではなかった。
……
 街宣右翼は決して上級国民ではない。コロナにかかっても簡単に入院できない。オリンピック利権に与かることもない。
 オリンピックで命が選別される。豊かではない街宣右翼が、庶民のデモを妨害する。
 選別と分断をもたらす「平和の祭典」とは何だろうか。

 田舎に戻ってからというもの、久しくデモ行進とは縁がない。はるか昔のことだが、初めて国会前までデモ行進をしたときはドキドキしたことだけは覚えている。それから、街宣右翼のことで言えば、あるデモのときには「眼鏡なんかしやがって」と右翼青年に罵られて半笑い?したこともあった。デモのあと、ある同業者が「でも、彼らは誰かの教え子かもしれないんだよねえ」とぽつりと言っていたのを思い出す(「たぶん私のじゃないです」と返したら失笑されたことだろう)。

 それはさておき、各地で医療は逼迫を続けている。沖縄県の病床占有率は97.9%、重症者用の病床占有率も62.5%と、依然高い水準が続く。
 「初めて看護師になったことを悔やんだ」という大阪の看護師の言葉は身につまされる。以下、6月5日付毎日新聞の記事より。

「爆発的に襲来、医療の限界超えた」 大阪の看護師が見た第4波 | 毎日新聞

…30代の女性看護師が働く病院には約20床のコロナ病床があり、女性は救急外来や発熱外来で働いてきた。「3月初めから静かに増え、4月上旬になると爆発的に襲来した感覚だった」。3月末には約15床が使われるようになり、4月中旬にほぼ全床が埋まった。4月末には、救急車の到着から1分も空かずに次の救急車が来る、ということも相次いだ。朝から日付が変わるまで対応したり、昼食を取る暇もなかったりすることが続き、1カ月で5キロ痩せた。
……
 第4波では、中年男性が検査を待つ間に倒れる現場も見た。既存株ではあまりなかったが、30~50代でも急激に症状が悪化することがある。人工呼吸器は数に限りがあり、高齢患者への積極治療ができず、救急車で来院した数日後に納体袋で覆われ、ひつぎに納められて搬送されるのを、つらい気持ちで見送った。

 4月中旬には中等症までしか受け入れないはずの病院で、複数の重症患者が行き場をなくしていた。一方同じ頃、吉村洋文知事はまだ「マスク会食」を呼び掛けていた。保健所が逼迫(ひっぱく)する中、飲食店の「見回り隊」を発足させ、府市職員の会食調査をする対応にも、現場との意識のずれを感じた。「誰も責任を取らない状況で、行政は命や健康を軽視していないか」と怒りを覚えた。
 女性は「経済を回すなら徹底したゼロコロナを目指すべきだ。変異株の感染力が高いと見込んだ時点で疫学調査を強化し、検査ももっと拡大しなければいけなかった」と指摘する。第4波は検査と隔離の能力を超える勢いで、感染者が1人出ると家族全体に広がるなど拡大が止まらなかった。大阪市保健所では、陽性者への疫学調査を始めるまでに1週間程度かかることも。入院できない在宅死も激増した。3回目の緊急事態宣言が出た4月25日以降、6月4日までの1カ月余りで、大阪では2万5161人が感染し、1051人が亡くなった。

 「混乱の原因は、政治の誤った判断だと思う。知事は府民一人一人の命に向き合うべきだったし、対応を丸投げした医療現場でバタバタ重症化する患者を見に来るべきだった」と女性。「いつどこで感染症対応が滞り始めたのか、行政の失敗を検証してほしい。ワクチンの普及も重要だが、変異株の流入に対抗できるよう、保健所の人員を拡充し、検査や疫学調査の体制強化を」と訴える。
 府対策本部会議の専門家の発言にも首をかしげる。「ある医師が第1~3波の経験を『成功体験』と話していたが、驚きしかない。死者を増やしてきたこれまでを成功と評価するなら、第4波を招いた責任は対策会議にもある」。国の対応も疑問だ。医療従事者はせき込んだ患者の飛沫(ひまつ)や嘔吐(おうと)物を浴びても検査してもらえないのに、「五輪では何回も関係者を検査すると聞いて、悔しさがある」と困惑する。
 4月末、コロナ病床でまた一人の患者が亡くなった。するとその病床もすぐ次の患者で埋まり、挿管することになった。「患者に十分、向かい合えていないのではないか」――。やりきれない思いで、看護師になったことに後悔の念が浮かんだ。その日は大阪で44人の死亡が発表された日だった。しかし朝から続いた雨が上がると虹が見え、「頑張りや」と言われている気がした。高齢の親族が書いてくれた「コロナ頑張れ。腐るな」というメッセージにも励まされた。「一日も早い収束を願って頑張っていきたい」。過酷な現場に消えそうな気力を、ぎりぎりのところで奮い立たせている。

 これで五輪に医療と人員をさいたらどういうことになるか、「五輪ムラ」でつるんでいる者以外は誰にでもわかる(認められるはず)。あの前地方創生大臣でさえ、とうとう「(五輪を)何が何でもやるというのは大きな間違いのもと」と言い始めたのだ。

北村誠吾・前地方創生相 五輪「何が何でもやるのは間違いのもと」 | 毎日新聞



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