ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「医療崩壊」という現実

 「〇〇崩壊」などと一言で済ませるのは憚るが、コロナ以後、この国の制度設計やシステムにかかわる深刻な問題が露わになってきているように思う。「崩壊」という語は、ガラガラと音を立てて何かが一気に崩れ落ちていく様を連想させるが、「医療崩壊」とか「霞が関の崩壊」というのは、ある日突然起こるようなものではない。「崩壊」に明確な基準があるわけではないだろうから、使う側がある種の「意図」をもってこの語を使えば、それを“早める”ことも、“遅らせる”ことも可能だ(「医療」や「霞が関(官界)」を「崩壊」という語と結びつけるのは“刺激的”だが、ちょっと考えものだ)。

 「医療崩壊」について言えば、自衛隊の出動要請をするなど病院が人材を他に要請する事態は、誰の目にも「崩壊」しているように思える。あるいは、病院が新規外来の受付を停止するというのも、実質的に「崩壊」状態だと思う。しかし、こうした個々の病院の「崩壊」をもって「医療崩壊」とは言わず、「医療崩壊寸前」とか「医療崩壊の瀬戸際」とか……。「迫りくる」、「逼迫している」などの形容句をつけようとする様は、春先にコロナが蔓延し始めた頃、政府が「ぎりぎり持ちこたえている」とか「瀬戸際にある」などと言っていたのと同じものを感じる。
 「崩壊」を認めると無用に人々の危機感を煽るという予感でもあるのだろうか(あるいは、「崩壊」させた責任論が浮上するのを避けたいのだろうか)。しかし、危機感をもつこと自体すでに“無用”ではない。Go to で移動する人は2倍のコロナ感染リスクを負っているという東大チームの調査報告があったが、この種の報道があっても、なおGo toを使って旅行することに執着するような人々には、もっと「危機感」をもってもらわなければ、感染拡大は下火にならない。政府にいたっては、Go to を見直すどころか、国境近くの離島旅行にはGo to とは別に5,000円の追加補助を出すと言っていて、これには唖然とする。万一離島の人々が感染したらどういうことになるのか、想像しないのだろうか。

 現実を直視しない、現実からスタートできない、こうした姿勢こそが「危機」であり、一番「崩壊」しているのは(「崩壊」していたのは!)今の「日本政府」ではないかと思う。自衛隊が限界になったら国連軍に出動要請でもするつもりなのだろうか。

 以下、12月6日付時事ドットコムと12月8日付NHKニュースより。

迫る医療崩壊、現場悲鳴 「ベッド空かず」「看護師不足」―限界寸前・新型コロナ:時事ドットコム

「退院でベッドが空いてもすぐ次の患者が来る。いっぱいいっぱいだ」。主に軽症の感染者を診る東京都杉並区の河北総合病院では、30床あるコロナ患者用病床がほぼ満床の状態が続く。感染対策で病室を分けるため、実際は全体の2割に当たる76床分を割いており、設置数は限界。杉村洋一院長は「これ以上増えれば、入院を断らざるを得なくなる」と苦々しげに話した。
 重症化した患者が移される拠点病院も切迫する。東京医科歯科大病院(文京区)では、入院の長期化で8床ある重症者用ベッドが空かず、受け入れに支障が出ている。内田信一院長は「本来2週間程度で病状が改善するが、高齢者が増え、なかなか良くならずベッドが回転しない」と話す。
 重症者のケアには通常の集中治療室の約4倍の人手が必要。スタッフ数で逆算すると8床がぎりぎりだ。内田院長は「手を尽くしても良くならず亡くなる。この状態がいつ終わるかも分からず、ストレスは大きい。この体制がいつまで持つか」と悩みを打ち明けた。
 感染者の高止まりが続く北海道では、一般患者への診察にも影響が出ている。クラスター(感染者集団)が発生した札幌市の病院では、感染した看護師らの離脱が相次ぎ、救急対応の制限や約2週間の外来診療休止を余儀なくされた。通院患者には原則、対面診察を行わず、薬の処方箋だけを渡している。コロナ病床も深刻で、担当者は「人繰りが厳しく、もう受け入れられない」と悲鳴を上げ、綱渡りが続く。
 救急搬送も窮地に立つ。札幌市消防局では、感染者が増えた10~11月、病院3カ所以上から受け入れを断られた搬送患者が前年の倍以上の724人に上った。感染増などによるベッド不足に加え、院内感染のリスク回避で発熱者の受け入れを渋った病院もあったとみられる。9回以上も搬送拒否された患者も63人いたといい、担当者は「1分1秒を争う状況もあるのに」と危機感を募らせた。


旭川厚生病院の医師「通常業務全くできず 医療崩壊と思う」 | 新型コロナウイルス | NHKニュース

旭川厚生病院では、先月20日から21日にかけて患者と職員合わせて29人の感染が確認されて以降、急速に感染が拡大し、感染者は230人を超えて国内最大規模となっています。
医療体制がひっ迫する中、旭川厚生病院に勤務する医師が匿名を条件にNHKの取材に応じ、これまでの院内の様子を語りました。
この中で医師は、院内での感染が始まった当初の様子について「看護師1人が発熱して新型コロナに感染していることが確認され、接触した可能性のある入院患者や看護師などを検査したところ、感染が広まっていることが分かった」と述べました。
そのうえで「予想していた以上に感染のスピードが速かった。ある程度の人数で抑えられるとたかをくくっていたが、こんなに一気に感染が広がるとは思っていなかった」と振り返りました。
現在院内では、診療科にかかわらず新型コロナウイルスに感染した入院患者を専用の病棟に集めていて、医師は「感染をこれ以上広げないため、回診は当番の医師が行い、結果をそれぞれの主治医に報告する形をとっている」と説明しました。
そのうえで「通常業務は全くできていない。医療が崩壊し、機能不全に陥っているのではないかと思う」と述べ、新たな感染者の発生が続く中で医療体制がひっ迫して十分な診療を行えない現状を明らかにしました。
そして、医療従事者の現状について「特に看護師が疲弊していると思う。精神的に耐えられなくなって休んでいる看護師もいる。本当に使命感、自分がやらないとだめだという使命感だけでやっている。そういう状況の中で耐えられない人がいてもやむをえないと思う」と述べ、ギリギリの状態で治療を続けている厳しい実情を訴えています。


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