ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「トンボ」の謝罪で思ったこと

 暖かな週末です。入学式まで桜が散らずに何とかもってくれてよかったなと思います。しかし、新学期早々あいにくトラブルに巻き込まれ、穏やかに入学式を迎えられなかった人たちがいることを知りました。東京の多摩地域で中学校の入学式までに制服が届かないお宅が100軒もあるというニュースは2,3日前に知りましたが、これとは別に、東大和市の中学校でも新入生約170人の制服が間に合わない事態になっているようです。注文を受けた業者に受注処理漏れがあることが分かったのが何と1週間前で、もはや納品が間に合わず、入学式は代わりの品でしのいで、後日改めて納品ということになったようです。業者は学生服メーカーの「トンボ」(岡山市)で、テレビCMにも出てくる名の知れた会社です。ちょっとあきれたお粗末さです。

新入学・新学期 トラブル相次ぐ メーカーミス、制服届かず 東京「受注処理漏れ」 | 毎日新聞

 記事にはトンボ側の謝罪の文言があり、「制服アパレルとしてあってはならないことだ。受注や納品体制を見直し、再発防止に努めたい」としている、というのですが、トンボのHPで調べてみると、「制服アパレルとしてあってはならないこと」と「受注や納品体制を見直し…」という文言は、4月6日付の釈明文の中にあります。

【お知らせ】東京都内の中学校1校に対して代用品をお渡した件について

しかし、末尾の「再発防止に努めたい」という文言は見当たりません。おそらくは、取材に対応したトンボ側の誰かが口にした言葉かと思います。

 しかし、この「再発防止に努めたい」、何か舌足らずというか、違和感を覚える言葉づかいです。来年以降も引き続き弊社にご注文をいただけますよう、二度とこうしたことが起こらないよう鋭意努めて参ります、という意味なのでしょうが、信用の喪失が会社の存亡に直結するメーカーだったら、こんな文言はとても使えない気がします。そう考えると、心底謝罪しているととれるか心許ない。「制服アパレルとしてあってはならないこと」というのも、そもそも重大なミスをした当事者が使うべき言葉ではないのではないでしょうか。周りから言われるに前に先に言ってしまって、叱責の言葉を封じてしまおう、予防しようという意図すら感じられるものです。

 この種の定型化された文言がそこら中で使われるのは、きちんと調べていませんが、これまでの政治家や官僚の釈明ぶりと大いに関係があると思います。訴訟のコメントを求められれば、「訴状を見ていないのでコメントは差し控える」とか、失言を咎められれば「誤解を与えたとすればお詫びします」とか。先日もアベが敵基地攻撃能力は「中枢攻撃も含むべき」とトンデモ発言をしたことについて、松野官房長官は「政治家の発言の一つ一つについてコメントは差し控える」と述べました。政府の中枢にある人が黙っていたら、容認しているととられてしまうのですが…。トンボの釈明も、こういう先例と「世の空気」にならっただけなのかもしれません。
 しかし、これらはその場しのぎの対応に記号として言葉をくつけただけです。日本の「国力」の斜陽化が言われますが、これもひとつの現れかも知れません。便乗せずに言葉に力を回復させていかないといけないと思います。できあいの言葉に乗っかるのでなく、自分の魂を込めた言葉を使って…。



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