ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

18歳で引退覚悟 内田舞さんの記事

 むかし学校にいた頃、女子生徒が何人も「もう年だから…」とか「わたしババアだから…」と自嘲しながら話をしていました。最初は「おいおい」と思いながら笑って聞いていました。軽いランニングをした後、廊下の雑巾がけをした後など、ちょっとしたことでもすぐ口にします。挙げ句には座学の授業の後にまで言うので、ほんとうに「おいおい」です。しかし、だんだんと、これは単なるジョークでもなく、当人たちからすると、「昔(小学生時代? 幼稚園生時代?)」のような元気が出ないというのは実感で、半分くらいは本当のことを言っているのでは、という気がしてきました。

 しかしこれが、ロシアのフィギュアスケート界になると、「若年寄り」は笑い話ではなく深刻な問題のようです。ロシアの女子フィギュア選手が10代ばかりなのは、以前から何となく気になってはいましたが、驚くべきことに、10代の終わりが実際に選手としての「しおどき」になっているというのです。小児精神科医の内田舞さんの「10代半ばの選手の危機」という記事を読んで、こんなにひどいことになっていたのかと、驚き呆れました。2月18日付「現代ビジネス」の記事にこうあります。一部引用させてください。

ロシアのワリエワ選手「ドーピング疑惑」小児精神科医として見逃せないこと(内田 舞) | FRaU

驚異か脅威か!?「チーム・トゥトベリーゼ」
カミラ・ワリエワ選手、アレクサンドラ・トゥルソワ選手、アンナ・シェルバコワ選手の技術、演技、これまでの努力、様々なことを耐えて五輪の滑走までたどり着いた精神力に、この上ない敬意を感じています。選手達には大きな拍手を送りたいです!
しかし、彼女たちを囲む大人達には同じことが言えません。
ドーピングが公式に発覚したのは今回が初めてですが、ワリエワ選手を指導しているエテリ・トゥトベリーゼコーチの指導法に関して、選手への精神的、そして身体的な悪影響は以前より広く議論されていました。

2014年に浅田真央選手(当時24歳)が世界選手権を優勝してからの8年間、世界チャンピオンはほぼ全員15〜18歳のロシア女子選手ばかりでした。プルシェンコを育てたミーシンコーチに師事するエリザベータ・トゥクタミシェワ選手(2015年世界選手権を18歳で優勝)以外は、全員トゥトベリーゼコーチのチームに指導を受けている10代半ばの選手だったのです。
トゥトベリーゼコーチの教え子で、2014年以降世界選手権で表彰台に乗ったロシア選手をあげてみると……。

【ユリヤ・リプニツカヤ選手】(現在23歳)
15歳でソチ五輪の団体金メダル、世界選手権銀メダル、19歳で故障と摂食障害で引退。

【エフゲニア・メドベージェワ選手】(現在22歳)
15、16歳で世界選手権金メダル、17歳平昌五輪銀メダル、エテリコーチに引退を奨められ、カナダのオーサーコーチのもとに移籍して18歳世界選手権銅メダル。20歳以降競技には出ていない。

アリーナ・ザギトワ選手】(現在19歳)
15歳で平昌五輪金メダル、16歳世界選手権優勝。17歳で競技から離れる。

【アリョーナ・コストルナヤ選手】 (現在18歳)
16歳でグランプリファイナル優勝(このシーズンはコロナ禍により世界選手権なし)、18歳骨折で今季後半より欠場。

そして、今回の北京五輪には、以下3名の選手が参加しています。

【アンナ・シェルバコワ選手】(現在17歳)
15歳で出場グランプリ大会全優勝(このシーズンはコロナ禍により世界選手権なし)、16歳で世界選手権金メダル

【アレクサンドラ・トゥルソワ選手】(現在17歳)
15歳で出場グランプリ大会全優勝(このシーズンはコロナ禍により世界選手権なし)、16歳で世界選手権銅メダル

【カミラ・ワリエワ選手】(現在15歳)
今シーズン最も高得点。今回、ドーピング問題が発生した。

見ての通り、ほとんどの国際大会を15歳の少女が独占し、10代後半までに競技人生が終了しています。

次々と新しい才能が出てくることは素晴らしいことですし、若い世代が4回転やトリプルアクセルなどの難度の高い技ができるのもすごいことと思います。そこに行きつくために、才能のある選手たちは、小さい頃から想像を絶する、厳しい制限や努力をしていることも間違いないでしょう。
しかし、その指導法には選手ひとりひとりに対する「人間としてのリスペクト」を感じません。本来は、それぞれの年齢や体格、特性に合ったテクニックを教え、その選手個人のスケート人生が大切にされ、豊かに感じられる指導が大事なはずです。ですが、チーム・トゥトベリーゼの指導は、全員同じ方法で15〜16歳までの数年間の賞味期限のある商品のように「作られては、捨てられている」ことに私は憤りと問題を感じるのです。

また、これはチーム・トゥトベリーゼの選手ではありませんが、ロシアの14歳のジュニア選手が以前インタビューで、「私は毎日(北京)オリンピックが2023年に延期されることを祈っている。(北京の)次の五輪になると私は18歳だ。18歳でできる技はない。私は生まれた年が間違っていた」と答えていました。18歳で競技が続けられないと感じさせてしまう現状に、問題があると感じます。
<以下略>

 18歳で引退を覚悟しなければならないスポーツ競技とは何なのでしょうか。そしてまた、10代の子どもに薬物を入れることに何のためらいもない指導者や医師がいるとしたら、それも惨い話です。いったい人を何だと思っているのでしょう。
 滑り終わって帰ってきたトゥルソワ選手が、迎えたコーチに向かって「スケートなんか大嫌い! あなたたちは全部知っていた! 触らないで!」(字幕)と言い放ったシーンは小生もテレビで見て衝撃を受けました。夢舞台を汚された選手のショックははかりしれません。彼女たちの人生はまだこれから何倍も長いのです。

 内田さんの記事を是非多くの人に読んでいただけたらと思います。

 今朝の毎日新聞にも同趣旨の記事がありました。
北京2022:フィギュア女子、傷心ワリエワへ 「なぜ攻めなかった」 コーチ詰問に苦言続々 | 毎日新聞


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