ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

毎日新聞150年に寄せて

 昨日毎日新聞は創刊150年を迎えたそうです。1872(明治5)年2月21日、東京で最初の日刊紙として「東京日日新聞」第1号が発刊されたのが最初ということです。が、調べてみると、まだ旧暦の時代だったので今の暦で言えば3月29日のようなのです。まあ気にしないことにします。べーさん@京都さんの以下の記事に創刊号の写真があるので是非ご覧ください。
まちかどの西洋館別館・古写真・古絵葉書展示室

 この150年を記念して、今月から新聞紙上に著名人の短いインタビューや寄稿が連載されています。短いながらも、本庶佑さん(京都大学)とさだまさしさんの記事には共感しました。是非引用させてください。

まず、2月16日付の本庶さん。

創刊150年・毎日新聞にのぞむ:/6 新聞は自己批判を 本庶佑・京都大特別教授 | 毎日新聞

……メディアの役割は引き続き重要ですが、流れとしては紙媒体は衰退していく可能性が高いと思います。ただ、ネットの情報は結論だけまとめられたものが広く流れます。それだけを読んでいて本質を十分に考えるようになるのか、問題に感じます。結論だけを知って元のデータを探す努力をせず、深く物事を考えない悪い癖を生みやすいのではないか。新聞社はネットの記事をどう見せるか、より詳しい記事をリンクに張るなどの工夫が必要です。
 また、全ての新聞社、メディアに言えることですが、方向を間違えることがあります。極端な一つの例が全てのマスコミがあおった第二次世界大戦です。なぜそうなってしまったのか。自己批判をいまだにやっていないと考えます。同じことを繰り返さないため、150周年という節目に、新聞の使命に照らしてどうだったか、総括してもいいのではないかと思います。

そして、2月19日付のさださん。

創刊150年・毎日新聞にのぞむ:/9 信頼できる「真の報道」を 歌手・さだまさしさん | 毎日新聞

……さて近年新聞購読者が激減し、ニュースはネットで足りる、というオソロシイ人が増え、匿名を隠れみのに汚い言葉を吐き散らすひきょう者も増えました。事件事故情報や伝聞をただ広げることを「報道」と呼びたくありません。TVまでずさんなネット情報に揺らぐ現代は「真の報道の危機」だと感じます。丁寧な、足で書く「検証報道」や正義感を捨てない「真実の追求」という新聞の「志」までもこうしてゆっくりと消えていくのでしょうか。では、僕らはどんな情報を頼りに世の中を正しく見つめていけば良いのでしょうか。信頼できる報道こそ毎日新聞の真骨頂だと信じます。日本最古の新聞の誇りを持って「大人の事情」ではない「本当のこと」を書いてほしいのです。この国の未来のために、何とぞ何とぞ頑張ってください!

 先日の『ルポ プーチンの戦争』の著者、真野森作さんも毎日新聞の記者で、本のあとがきにこう書いています。

 ……私がウクライナへ初めて足を踏み入れたのは12年5月のことだ。観光をテーマとした少人数の旧ソ連四カ国周遊プレスツアーに参加し、首都キエフにある世界文化遺産のペチェールスカ大修道院や独立広場、さらには南部オデッサを訪ねた。先に滞在したジョージアグルジア)では、ロシアとの間で08年に起きた南オセチア紛争の傷痕を肌で感じていた。対するウクライナは美しいけれど印象には薄かった。ポーランドと共催するサッカー欧州選手権の開幕を間近に控え、初夏のキエフには浮ついた雰囲気があった。
 ツアーを終えた私は、そのまま旧都サンクトペテルブルクへ移動して一年弱の社命留学に入る。プーチン大統領の母校である国立サンクトペテルブルク大学(ソ連当時はレニングラード大学)の外国人向け語学コースへ下宿から通い、ほぼゼロからロシア語を頭に叩き込んだ。帰国半年後の13年10月、モスクワへ赴任。その翌月にはキエフで反政権デモが始まる。特派員としての三年半、ウクライナ情勢を追い続けることになった。
 17年3月末に日本へ帰任し、大阪本社…に異動した。やや因縁めいた話をすれば、毎日新聞の前身である「大阪毎日新聞」ではちょうど100年前に優れたロシア特派員が活躍していた。1917年のロシア革命に際して、首都ペトログラード(現サンクトペテルブルク)に布施勝治、モスクワに黒田乙吉の両特派員がおり、世界を揺るがす激動を日本の読者に生々しく伝えた。布施記者は革命3年後にクレムリンレーニンのインタビューにも成功している。「大毎」で始まった特派員たちの現場主義を受け継ぎたい思いが、私にもある。
 海外特派員にとって大事な仕事の一つは戦争報道である。「反戦平和」と我々日本人は言う。そのためには歴史に学ぶのと同時に、世界各地でやまない現代の戦争を丁寧に知る必要があるはずだ。ましてロシアは隣国なのだから、と考える。
 例えば。戦争開始半年後のキエフでは人気寿司チェーン店で新商品の「ビクトリー・ロール(勝利巻き)」を見かけた。具はエビ、クリームチーズ、パプリカ。売上げの30%が政府軍兵士らの支援に回るという。かたやモスクワでは、ロシアで愛国主義を象徴する黒とオレンジの「ゲオルギーのリボン」が包装ビニールに描かれたレタスをスーパーで売っていた。戦争と愛国が日常生活に溶け込んだ現地の空気は、70数年前に戦争へ突入していった当時の日本と少し似ているかもしれない。

(同書、392-393頁)

 今朝、ロシアのプーチン大統領が、親ロシアのウクライナ東部の「ドネツク民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、「両国」へのロシア軍の派遣を指示したと伝えられました。危機は一段と深まっています。
 真野さんのような記者さんたちの思いを、我々も新聞記事から読み取れるようにと思います。毎日だけでなく、新聞、がんばれ、です。




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