ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

ジョコビッチの「半々」

 梅雨明け間近となった。
 今朝赤くなった庭のトマトを捥ごうとしたら、枝にアブラゼミがとまっていることに気づいた。ニイニイゼミが6月の下旬に鳴き始めたのには気づいていたが、いよいよアブラゼミの順番になったかと思った。…と、朝食を食べ終えたら、今度は何と、ミンミンゼミの鳴き声を聞いた。ミンミンゼミの初鳴きが7月12日というのは、この辺りでは異例の早さである。例年なら7月末か8月に入った頃だ。まだ、アブラゼミの鳴き声もまともに耳にしていないのに…。セミの世界も「梅雨明け」に向けて動いているようだ。

 人間界の方は、今のパンデミック下で、梅雨明け前後の「風物詩」たる祭りなどのイベントは中止になっている。ところが、ワクチン接種を終えた国々のスポーツ・イベントはかなり広範に開催されている。テニスの「ウィンブルドン大会」もその一つで、去年は中止になったが、今年は昨日(7月11日)男子決勝が行われ、ジョコビッチ選手が勝って、3連覇を果たした。
 試合後、東京五輪に出場するかどうかを尋ねられた彼は、「半々」だと答えた。かねてより東京五輪が「無観客」開催になった場合、「参加は考え直す」としてきただけに、この回答は、「前向き」なのか、「外交辞令」なのか、でも、正直な気持ちを吐露したようにも思える。7月12日付AFP他の記事より引用する。

ジョコビッチ、東京五輪出場は「半々」(AFP=時事) - Yahoo!ニュース

 ジョコビッチは、「これから考えなくてはならない。前に言った通り、これまでは常に五輪に行く計画だった」とした上で、「だが今は少し割れている。ここ数日耳にしたことを踏まえ、半々といったところだ」と話した。
 東京五輪をめぐっては今週末、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ほとんどの会場を無観客とすることが決定した。
 すでに無観客開催となった場合は参加を再検討すると話していたジョコビッチは、「それを聞いて非常にがっかりした。選手村の中の規制も多くなると聞いている」と述べ、「他の選手の競技を生で見られないかもしれない」と語った。
「極めて重要なチームの一部であるストリンガーさえ帯同できない。自分のチームとして連れていける人数も限られている。それについては考えなくてはいけない」

 「無観客試合」が無機的になることは想像していた。選手や関係者にとっては張り合いがないだろうなとは思っていた。しかし、選手たちも、自分の競技がなければ、我々と同じように他競技を観戦する一人の人間である。一代表選手として競技に臨むのは当然としても、付随して、他のアスリートの競技を生で見たいと思ったり、他の選手と交流したりと、そういうのを楽しみに思うのは普通の感覚ではなかろうか。オリンピックは世界のアスリートが4年に一度、一同に会する「お祭り」で、そういう意味では特別な行事なのだから。

 それを、観客のいない会場で競技をし、選手村では行動が制限され、終わったら早々に帰国せよと言われるのである。パンデミック五輪だからしかたない部分があるとはいえ、心の奥底では自分たちは〝モノ〟ではないと思うのではなかろうか。

 さらに言えば、この段階で「無観客」を「宣告」されたボラティアなど、関係者の「失望感」は大きい。
 7月11日付毎日新聞の記事より。※年齢などは省いた。

五輪、福島無観客に 「復興」理念、地元に虚無感 札幌も一転 97%払い戻し | 毎日新聞

 開幕まで2週間を切った東京オリンピック福島市で行われるソフトボールと野球は「復興五輪」の目玉になるはずだった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大の影響で10日、無観客での実施が決まった。「地元の人も見られないオリンピックに何の意味があるのか」。関係者の間では白けムードが漂っている。

 「せっかく『覚悟を決めて頑張ろう』と思っていたのに。突き落とされたような気分だ」。観客を案内する福島県の都市ボランティア(シティキャスト)に選ばれていたNPO法人「うつくしまスポーツルーターズ」の斎藤道子さん=福島市=は語る。
 8日に4都県の無観客が決まった際は、「観客が入る福島は逆に注目が集まるはず」と自分を納得させた。10日午前にはシティキャストの現地研修に参加し、案内方法などの指導を受けたばかりだ。研修に参加したボランティアは「福島は観客が入るということで、みんなスイッチが入っていて、いい雰囲気だった」という。
 だが、無観客となり、都市ボランティアは活動中止が知らされた。選手団や関係者は感染対策で競技場以外には行けないため、現地で被災地の現状を知ってもらう機会はほとんどなくなることになる。斎藤さんは「今大会から復興五輪の意義を見いだすのは難しい。意義などないと言ってもいい」とあきれる。

 「自分の周りではみんなチケットを買って楽しみにしていた。それが無観客なんてね」。一報を聞いた福島県ソフトボール協会の常任理事、菅野哲雄さんは力なく笑った。福島県ではソフトボールが盛んで、菅野さんたちは21日の開幕試合などで運営の手伝いをする予定になっている。「張り合いがなくなったよね」

 東日本大震災津波で子供2人と両親を亡くした福島県南相馬市の上野敬幸さんは3月、家族や復興への思いを胸に聖火ランナーとして走った。無観客の決定に「今の状況だと人が集まるのは難しいと思うので、仕方ない。ただ、子供たちだけでも見せてあげられなかったか」と話した。

 福島県浪江町の行政区長会長、佐藤秀三さんは「県外からも多くの人が集まれば感染リスクも高まる。無観客は当たり前だ」と話す。浪江町福島第1原発の近くにあり、全域に6年間にわたる避難指示が出された。今も人が住めない地域が残る。佐藤さんは「コロナ禍の前から『復興五輪』は怪しいと思ってきた。薄い理念が、観客の有無といった別の議論でかすみ、もうどこかにいってしまった」と冷ややかだ。

 今朝のテレビで街の声が紹介されていたが、一人が「あとは選挙で決めるしかないということ」と述べていた。この発言をした人、編集を経てこれを放送する局、それを眺めて「おっ」と思う人びと…。誰もが、〝モノ〟扱いに忍従するとは思えない。


↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村