ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

立川談四楼 五輪を斬る

 立川談四楼さん。名前でわかる通り、故・立川談志の弟子。辛口世評は師匠譲りか。

 師匠の談志は1971年、参院選挙に出馬し、当選。1期だけ議員を務めている。当時の全国区で、50人中50番目の最下位当選だったため、当選が判明したのは明け方頃だったという。談四楼さんによれば、「新聞記者ってのは意地悪でねえ、『談志師匠、ビリでしたねえ、ペケでしたねえ』と言ってくるんですよ」と。
 そこで、談志は名台詞で切り返す。
ばかやろう、真打は一番あとから出るもんだ!」。

立川談四楼 - Bing video

 無所属で立候補したのに、当選直後に自民党に入ったのはいただけないが、今の政治家のように害悪を垂れ流すようになる前に辞めたのは、性格というより、矜持だろう。


 談四楼さんは東京五輪の開会式に合わせて高座に上がったという。
 頭の中だけ寄席に行ったつもりで…。以下、毎日新聞8月6日付の記事より部分引用。

五輪選手の活躍はすごいが チャラにできぬ失態 立川談四楼さん | 毎日新聞

「ひとたび(五輪が)始まって、金メダルラッシュとなるとすぐに熱狂し、それまでのスキャンダルなんか忘れてしまうだろうと、まあ、菅さんなんかも思っているでしょうけど、どうですかね」
「今回は違う気がするんですね。見ない人は徹底的に見ない。私なんかは悪く言うためにチェックはしようと。つい感動して泣いてしまうかもしれませんが。こういう心情を見透かしているんですよ。統計が出てるんですかね。相当やらかしてもメダルラッシュでもってチャラになると……」

「そもそも安倍さんから始まっているんですよ、この五輪は。(招致の演説で東京電力福島第1原発事故の状況は)『アンダーコントロール』と言ったうそから始まった。嗅覚だけはいい人ですから。(安倍は開会式を欠席したが)開会式でヘラヘラ笑っているのが(テレビに)映るとまずいという判断が働いたんでしょうね」。

 開会式5日後のインタビューから(引用同上)

「この状況は選手ですら、喜びを素直に表すことをためらわせるものがあります。柔道男子66キロ級の阿部一二三さんは(金メダルが決まっても)表情を変えずに喜びをこらえました。コロナのせいで選手を普通にたたえたくても、たたえられない国民もいると想像します。阿部さんは試合後の記者会見でコロナ禍での大会開催への感謝を話していましたが、はしゃいだりしたら何を言われるか、瞬時に分かったのでしょう。大変な練習をしてきた成果だから、喜んでいいところなのに気の毒です」

「この時期は温暖で(アスリートにとって)理想的な気候と(招致委の2013年立候補ファイルに記されている)。海外の選手は、湿気もある日本の夏の酷暑に苦情を言っているでしょう。『アンダーコントロール』もそうだけど、初めからうそをついて招致しているわけです。本当にふざけている」

「スポーツには人を感動させる力がある。ソフトボール女子の活躍など、すごいと思いますよ。でも、それとこれとは別で、コロナ禍での開催に至るプロセスとか、五輪の勢いで衆院選に突入したい菅首相とか、政治の手口やもくろみなんかに怒っているんです。本来ならばコロナ禍で人の命には代えられないと中止にすべきだったのに、開催が強行された五輪には、安倍、菅政権のうみが噴出しています」

「昨年4月の1回目の緊急事態宣言の時は、我慢せよ、自粛せよと政府が言うことを聞いた人は多かったはず。この間に政府はコロナの検査態勢を整え、ワクチンを仕入れてくれると思ったからです。だから歯を食いしばれた。でも、蓋(ふた)を開けてびっくりですよ。『え? 今まで何してたの?』って。その上、昨年は観光支援事業『GoToトラベル』をやって。あれで感染が広まったことは明らかでしょう。そして、五輪を強行した。国の言うことを聞いていたら殺されるとみなさん気付いたんじゃないですか。『首相、あんたがそこまで言うなら』って、もう思いませんよ」

「落語界は意地を見せようともしました。笑いは人間が生きていく上で当たり前のように接するものだと。でも、休業に追い込まれるなどしました。落語ファンを名乗る加藤勝信官房長官は4月の記者会見で『寄席(よせ)』を『よせき』と読んだ。そういう人たちに、私たちの生活は決められているんですよ」

「大会組織委員会が任せた演出チームが(誘ったメンバーが)トラブルを招いたということらしいですね。安倍、菅政権の体質も影響しているんですよ。仲間内から人を集めて、コネで人を重用する。考えが違う人は排除する。安倍政権以降、ずっと続けてきたことが今回の問題につながったのだと思います」

日本オリンピック委員会JOC)の竹田恒和前会長は五輪招致の贈賄疑惑で辞めるわ、新国立競技場の設計でもザハ・ハディド氏案がひっくり返されて。その後、森喜朗元首相とかおなじみのメンバーが出てくるわけだけど……」
「演出チームの問題にしても、メンバーを公表する際になぜその人たちを選んだのか、世間が納得のいく説明をすべきでした。不明瞭なことが多すぎなのに、国民に説明しようとか説得しようとかする気がない人が、菅首相はじめ、ことごとくそろっている。五輪担当大臣までつくっているわけでしょう。その人もちゃんと説明しないしね」

「五輪というビッグイベントは、元からあったものを駆逐する面がある。(1964年の五輪を機に建てられ、今回の五輪の再開発で取り壊された都営霞ケ丘アパート。1988年の韓国ソウル五輪前の犬肉料理の禁止など)五輪のために古いものを壊しておきながら、魅力を発信するというのも矛盾しています。それも、西洋の基準に合わせている面があるように思います。そしてその基準を作っているのは、IOCのバッハ会長ら“五輪貴族”たちなのではないでしょうか」

「昔は飲み屋に足を運んで『面白い話はないか』ってネタを仕込んだものです。今は寝ていても入ってきます。バッハ会長なんてネタの宝庫ですよ。これだけ批判されても平気でやらかしてくれます。被爆地の広島まで行っちゃうんですから。ノーベル平和賞を狙っているんでしょう。IOC会長では満足できず、果てしない名誉欲にかられているんでしょうねえ」

「コロナ禍の中、危険を顧みずに競技に参加した(国内外の)選手たちはよくやっていると思います。でも、全体的に盛り上がっているとは感じませんね。いろんな国の選手たちが抱き合って、国境を越えて交流し合った64年の東京五輪閉会式のようにはならないと思います」

 
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