ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

利己心と五輪

 昨夜大ネズミが船から逃げ出したようだ。いやあ、呆れた。この大ネズミ、今度は腹も痛くないらしい。天皇が出席する開会式に組織委員会の「名誉最高顧問」が出なくていいんだったら、他にも「逃亡」する輩が出てくるのではないか。ひょっとしたらバッハまで「じゃあ、俺も出ない!」とか言い出しかねない。何せ、2日前に「東京五輪の開催に疑念を持っていた」などと、大会終了後でもない開幕直前のこの時期に、突然手のひら返しをするのだから。組織のトップに座っている人間たちがこれでは、末端で支えている人間はたまらない。昨日のアーレントではないが、こういう連中には「利己心」しかないのだろうか。〝インパール五輪〟という形容が誇大ではなくなっている。

安倍前首相 オリンピック開会式への出席見送り 無観客など考慮 | オリンピック・パラリンピック | NHKニュース

 それでも、来日した外国の選手やプレス関係者の中には、日本で「おもてなし」の気持ちに触れられるのではと、少しは期待があったかもしれない。しかし、それは開催地を決める投票権をもつIOCの「オリンピック貴族」に限定される話だったことがだんだんと露わになってきている。7月21日付「女性自身」の記事に、とんだ「おもてなし」の現実が書かれている。彼らには期待外れで申し訳ないような気もしてくるが…。以下、要約。

1600円ハンバーガーに相次ぐ失笑…海外記者もあ然の“おもてなし崩壊” | 女性自身

《MPC(メディア・プレス・センター)ハンバーガー。ゴムのような肉、冷たいパン、汚らしいプレゼンテーション。全部で1,600円。ジャーナリストの仲間たちよ、最初に食べよう》
 7月20日Twitterに《新たなオリンピックのスキャンダル》と題するフランス語のこの投稿。写真も添えられており、そこに写っているのはテイクアウト容器の半分を埋めるポテトと、具とバンズがバラバラになったハンバーガーなど。値段は1,600円だという。
 東京都・江東区にある「東京ビッグサイト」には報道拠点として、IBC(国際放送センター)とMPC(メインプレスセンター)が設置されているが、新型コロナの感染防止策として、五輪関係者が一般市民との接触を避ける「バブル方式」が導入されているため、食事についても、厳しい制限が設けられている。
 「来日した海外メディアは、飲食場所を大会会場内と宿泊施設に限定されています。もし宿泊施設で食事ができない場合は、コンビニで食料を購入することも例外として認められています。ただし15分以内に戻ってこなければ、取材カード(記者証)が没収されてしまう可能性も。現在、海外メディアからは“15分ルール”の撤回を求める声があがっています」(スポーツ紙記者)
 やむなく「東京ビッグサイト」内で食事を調達すると、上述のようになる。7月19日配信の東京新聞によると、MPCにある食堂の食事メニューは現在6種類。最も安い食事は1,000円のビーフカレーで、自販機のお茶がペットボトル1本(500ml)で280円と一般的なスーパーやコンビニよりも高額である。
 2013年9月の五輪招致プレゼンテーションで世界に発せられた「おもてなし」。それから約8年。五輪開幕前にゲストからクレームが飛び出すこの“おもてなし”のありさまに、ネット上で批判の声が広がっている。

《おもてなし、何処に消え失せた》
《「お・も・て・な・し」とはなんだったのか。逆にどこに行けば食えるんだよってレベルのまずそうなメシだわ。祭の屋台でもここまでひどいモノはない》
《想像以上に酷い飯だな 潤沢な予算は何処いったんだろうか》

 一方、「選手村」から「脱出」する選手団も現れた。アメリカの体操女子は選手村には入らず、外部のホテルに宿泊することを決めたという。
 7月21日付のハフポストの記事。

アメリカ女子体操チーム、選手村を「脱出」しホテル宿泊へ。「選手の安全を管理」 | ハフポスト
 
NBCによると、 コーチのセシル・ランディ氏は、7月19日にTwitterで「私たち全員で決めたことでもあります」と投稿。「オリンピックの経験にとって理想的ではないことはわかっていますが、パンデミック時には理想的なものは何もありません。ホテルであれば、選手や私たちの安全をより管理できると考えました」
アメリカ女子体操選手のうち、千葉県印西市内で事前キャンプをしていた1人の新型コロナウイルス感染が確認されている。
CBSによると、感染が確認された選手と、濃厚接触者となった別の選手の計2人は隔離されているという。
選手村では、20日までに3人の選手の新型コロナ感染が報告されている。
大会組織委員会は、NBCの取材に「個々のチームのパフォーマンスの決定についてコメントする立場にない」として、選手村からの「脱出」への見解を示さなかった。

 「ホテルであれば、選手や私たちの安全をより管理できる」というのも意味不明だが(選手村に対する嫌みか?)、感染者を出している選手団の動向について聞かれ「コメントする立場にない」と答える組織委には驚かされる。バブルはいったいどうなったのだ? 「何でもあり」ってことか?

 クーリエ・ジャポンが紹介する「ワシントン・ポスト」の記事によると、
…米体操連盟によれば、18日の検査で控え選手1人の陽性が判明した。女子体操チームはそれより3日前に日本に入国。彼女たちは19日夕方に東京の五輪選手村を訪れているが、代表選手6人はそのまま選手村にとどまらず、近隣のホテルに滞在すると、コーチがツイッターで公表した。
 しかし、この6人は選手村近くのホテルに移動するまでの数日間、事前合宿先の施設で控え選手と一緒に練習していた。米体操連盟の広報は「代表と控えはグループに分かれて」練習していたというが、選手らの写真を見れば、数メートルほどの距離を空けただけで同じ時間に練習していたことがわかる。
 宿泊先では、代表同士、控え同士がペアになり、2人で一部屋を使用していたが、陽性者が出てからは1人一室に変更された。バスでの移動時は、代表選手とそのコーチらが前方に座り、控え選手とそのコーチらは後部座席に座っていたという。

米女子体操でコロナ陽性「ワクチン接種済みだったのに…」 米紙が感染した選手について詳報 | 金メダルが期待される代表チームへの影響は? | クーリエ・ジャポン

 ここまでは、だいたい想定されたことが起きているような気がする。いったいどういう状況に至ったら中止の判断ができるのだろうか?
 アーレントが書いていたとおり、公的な事柄とはどういうものか、考えたこともない連中に、理性的な議論を期待するのは、現実的ではないし合理的でもないのだろうか?



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