ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

東京五輪の開会式のこと

 東京五輪の開会式。小生は少ししか見ていないのだが、総じて評判があまり芳しくない。昨日出先で会った人は酷評していて、NHKの紅白歌合戦ばりのノリでつくられたものを見せられているような感じだと言っていた。昨夜TBSの番組「新・情報7daysニュースキャスター」に出演したビートたけしも、「外国、恥ずかしくて行けないよ。本音はそうでしょ、あれ、すばらしかったですか?」とにべもなかった。
 しかしながら、直前までドタバタが続いて、開会式自体をやれるかどうかもわからない中、各パートを演じた人たちの心中は察するにあまりある。子どもたちも違法に夜中まで駆り出されて…。

 そんな中、文春が今回の開会式の演出をめぐる「内幕」を暴く記事を配信した。

 当初開会式の演出を統括するはずだったのは振付演出家のMIKIKO氏だった。彼女は昨年役を下ろされ、電通のCMクリエイター、佐々木宏氏が統括役へと代わった。…しかし、その佐々木氏は今年の春、例の侮蔑発言が問題となって辞任することになる。昨年のプレゼン段階ではMIKIKO氏の演出案は評判がよかったと言われている。それなのにどうして彼女は外されたのか。そこにはまたしても森喜朗組織委員会電通の影を見ることになる。

〈東京五輪開会式の闇〉「このやり方を繰り返す怖さ」「日本は終わってしまう…」 女性演出家MIKIKO氏を“排除” した「電通五輪」 | 文春オンライン
森・菅・小池の五輪開会式“口利きリスト” 白鵬、海老蔵、後援者… | 週刊文春 電子版

 文春の有料記事は、「有料」といっても高額ではないのだが、フタガワカサラさんのTweetを読んで済ませてしまった。昨日の連続投稿から一部借用をお許し願いたい。

https://twitter.com/FutagawaKasara/status/1418661354521587712

当初のMIKIKO案のオリンピック開会式ってどんなだったんだろうな~って調べるために有料記事読んでみたら、なんであんな一貫性のない演出になったかの答え合わせが全部書いてあってワロタ、いや笑えねえ… 政治VSクリエイターじゃん。今年の3月には全部決まってたんだな

端的に言うと、森元が懇意にしてる海老蔵を入れてくれとか百合子の支援団体の江戸消防記念会を参加させろと要望出してきて、演出路線に沿わないMIKIKO電通が排除して言うこと聞く演出家を据えた、みたいなことが今年の前半に行われましたって書いてあります。実現しちゃったね…

オリンピック開会式の演出が統一感なくてなんかちぐはぐなの、多分派閥とか利害の対立があるんだろうなとなんとなく思ってたけどとっくの昔に答え合わせされてるとは思わなかったよ。
……
悲しくなってきたな… 関係者みんなダメダメだったんじゃなくちゃんとできるチームが揃ってたのにしょうもない人間につぶされてしまった顛末がここまで克明にわかってしまうと…

これは政治の話題以上にこの国で活動するクリエーターの未来の話だよ こんな悲劇を繰り返してはいけない
……
途中に挟まった、一見意味がわからない森山未來コンテンポラリーダンスはこの開会式にたどりつ<ママ>までに排除されてきたクリエイター達の無念の表れがその一端にあると理解を得た。
……
この開会式がいいところもあれば最悪につまらなかったところもあったのは衰退の現れとかではない。どうしようもない人々とクリエイターの戦いがあり、倒れた人もいれば生き残った人もいてその結果が現れた。そして「膿」は何なのかが明確になった。そういうことなんだと思う。

 コンサルティング会社代表の安川新一郎氏も、7月24日付のブログで、MIKIKO氏が統括役から外された事情に触れている。

モヤッとする翌日、東京オリンピック2020開会式が露呈したもの、僕たちはそれらを噛み締めて前を向いていかないといけない|安川新一郎 (インパクト投資家、未来思考「構造と文脈で世界とその未来はシンプルに理解できる」)

気心の知れた偉いおじさん仲間で仕事を回す
 開会式の演出チームは、解散辞任が続き混乱が続いた。
 組織委員会の体質に愛想を尽かして辞めていった人は多い。エンブレム問題の処理にあたり、改革チームを率いていた豊田章男氏が、根深い組織委員会の体質に見切りをつけたのは5年以上前だ。
 現場の組織委員会関係者も認める、様々な「天の声」による現場への介入。
真相は、もちろんわからない。
 昨年の6月に開会式演出チームの3人目の執行責任者としてアサインされたMIKIKO氏が、同年の秋ごろから本人の意向確認なしに静かに外された。後からその事実を知った本人が抗議の上、11月に辞任をしている。

 電通の)社命を背負っている高田は、次第に、現場を管理・監督するようになり、MIKIKOを排除し、佐々木を全面に出していく。昨年11月、彼女は辞表を提出することになるのだが、その前の10月16日に、自らに降りかかった出来事を克明に記したメールを電通幹部に送っていたそうだ。そこには、「高田さんより、『今までの労いと共に、佐々木さん体制の報告を会長の口から受ける』と伺ってトリトンに出向く」とある。そこで森会長はこう告げたという。「引き続き、オリ開会式はMIKIKOさんにお願いしたい」。佐々木体制への変更を覆すような発言をしたというのである。同席していた高田は、訝る彼女を別室に連れて行って驚くべき発言をした。「森会長はボケているから、今の話は事実と違うから」と、佐々木体制で行くと念押しされたそうだ。電通幹部の説明だと、森会長はMIKIKOの能力そのものは買っていた。だが高田は、佐々木ならば意のままに動かせるし、電通の利益にも適うから、森発言をなかったことにする必要があったというのである。

〈去年の6月に執行責任を任命され、全ての責任を負う覚悟でやってきました。/どんな理不尽なことがあっても、言い訳をしないでやってきました。それを一番近くで見てきたみなさんはどのような気持ちでこの進め方をされているのでしょうか?/(略)でも、またこのやり方を繰り返していることの怖さを私は訴えていかないと本当に日本は終わってしまうと思い、書きました〉(MIKIKO氏 電通関係者10名へのメール)

 このやり方、というのは、おそらく現場不在で、一部の上層部の意向でコンテンツを作っていくやり方、そして怖さとは心あり才能あるクリエイターが、忸怩たる思いで、去っていく状況を指すと思われる。

「もし時間が巻き戻せるなら、このコロナ禍のセレモニーで、何を伝えるのか、何が出来るのかを全員で話したかった」オリンピック・パラリンピックのプロジェクトをサポートして下さっていたある尊敬するスタッフの方の言葉です。(MIKIKO 3/26 ツイッター

MIKIKO氏の演出で「新しい世代の日本の世界観」を出し切ったほうが、グローバルには共感を生んだはず。
<以下略 引用終わり>

追補で、東京新聞7月23日付記事も付す。
「天の声」に翻弄された開会式…組織委関係者が語る「五輪の闇」 :東京新聞 TOKYO Web

 ひどい話だ。しかし、この「どうしようもない人々」を「悪役」に仕立てても、すべて解決というわけにはいかないと思う。五輪組織委員会は、今、「どうしようもない人々」の重鎮、森喜朗組織委員会の「名誉最高顧問」にするつもりだという。これには、当たり前だが、官邸でさえ反対している。これほどの暴挙を組織委員会が平気で通そうとするのは、多くの悪事を、許し、黙り、忘れてくれる国民の「おかげ」なのだ。これに怒りもしない国民がもう一度開会式をやり直し、改めて「新しい世代の日本の世界観」なるものを発信したとしても、世界の共感は得られないだろう。



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