ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

イスラエルと日本の「連立構想」

 イスラエル大連立構想が話題になっている。通算15年も続いたネタニヤフ政権の汚職と腐敗、外交の行き詰まりに対する国民の批判の声を受け、野党勢力8党が連立政権樹立で電撃的に合意し、大連立政権が実現する可能性が高まっているという。
 ただ、8党の内訳が右派から左派まで幅が広すぎる。極右政党とアラブ政党が同居するなど、これでどうやって政策合意ができるのかと思う。それでもあえて反ネタニヤフ、反リクードの一点でまとまる――これは日本のかつての細川・反自民連立政権と似たものがある。その「立役者」であった小沢一郎のインタヴュー記事を読んだ。佐藤章『職業政治家 小沢一郎 』の内容に部分的に重なるところもあるが、興味深かった。
 以下に要約して部分引用する。

倉重篤郎のニュース最前線:シリーズ・ニッポンの出口/10 小沢一郎が咆哮 菅政権は「日本の悲劇」だ | 毎日新聞

 菅政権も半年がたつが、こういう時の宰相の器としては荷が重いのではないかという気がする。トップリーダーの資質の問題として、自分の信念、哲学、理念をきちんと持っていないから何と言っていいかわからない。オドオドした目つきで何も答えられない。これでは国民が逆に不安を感じてしまう。
 安倍政権下の官房長官の時は、トップリーダーの陰でムチの役割を果たしていればよかった。霞が関を人事で抑え、永田町を官房機密費で籠絡すれば物事が動いた。しかし、自分がトップになると、裏仕事ができない。代行する者もいない。
 本人はもどかしさを募らせていると思う。悲劇だ。彼にとって悲劇だが、日本国、日本国民にとってはもっと悲劇だ。歴史の節目ともいえる危機の時代に、とてもその器ではない最高指導者を戴いてしまった。僕には戦前の昭和史と同じに見える。大恐慌に遭遇し、右往左往して、政治が機能しないまま、戦争に突入する。誰も責任を取らない。日本的コンセンサス社会、民主主義の悲劇がここに凝縮して出てきた感だ。

 この悲劇を終わらせるには政権交代しかない、しかも、それは十分可能だ、というのが僕の考えだ。政治状況は2009年9月の鳩山民主党政権誕生時に酷似している。時の政権が不祥事や基本政策の失敗の重なりで求心力を急速に失っている。麻生太郎政権はリーマン・ショック対応で失速、菅政権はコロナ敗戦が明らかになりつつある。
 野党第1党の小選挙区に占める議席数も、かつての民主党も今の立憲民主党も60前後だ。当時僕はこれを150人に増やせば過半数を取れると言った。実際にそうなった。自民党を80減らせば行って来いだ。ほんのちょっと締めれば自民党過半数割れを実現できるところまで来ている。なぜそれをやらないのか、不思議でしょうがない。

 野党第1党でそこそこ取れればいいや、ではダメだ。昔の社会党になってしまう。自社55年体制下では、社会党は常に130前後の議席を取れていた。それで満足していた。それでは話にならない。だから、これだけ敵失があるにもかかわらず低空飛行が続いている。意識を変えることだ。追い風は十分ある。後は各候補にそれぞれ適応するような対策を講じていくことだ。カネのないところはカネの支援をし、人がいないところは人を送る。僕が代表の時は全選挙区回った。少しでもエンジンを吹かすことができれば機体はグーッと上がっていく。

 具体的には立憲民主党共産党との話し合いができていないことだ。共産党はそのうち話しましょうと言われてその気になっているが、いつまでたっても進まない。政権構想をどうするかがネックになっている。双方の努力が必要だ。先日、志位和夫共産党委員長に会った際『権力というのは奇麗ごとだけでは取れない』と念を押しておいた。
 勝負のカード、つまり票を持っているのは志位共産党だ。枝野(幸男・立憲民主党代表)君が持っているわけではない。共産党がもうやめましょう、今まで通り候補を全国で立てましょうと言えばおしまいだ。候補者もお金も持っている。ただ、共産党も安倍・菅政治打倒の旗を掲げ野党共闘路線でここまでやってきた。ここで降りる選択肢はないはずだ。要はネゴ、交渉だ。大雑把でもいい。お互い乗れるところで一致点を見いだすことだ。

 細川政権でも鳩山政権でも僕がやったころは連合もよく協力してくれた。僕がズケズケ言っても文句言わずについてきてくれた。特に、地方連合は献身的だった。彼らはみんなと仲良く組まないと勝てないということがわかっている。現場に近いから共産票の重みへの理解があるし、一緒にやれることを知っている。
 例えば、僕の地元・岩手県議会では共産党は与党だ。沖縄県議会も共産党が与党だが、過半数を取っているのは岩手だけだ。達増拓也知事は選挙では共産も含め、与党の県議を全員応援した。自民党はカッカしていたが、与党県議は皆喜んだ。この岩手に学ぶべきこともあるのではないか。

 それにしても、野党間協議がどんどん遅れていくのは好ましくない。数カ月以内に衆院選挙があるのはわかっている。これで国会が終わり、都議選が終わって、なおかつ何もできていない、ということになったらどうする。取れる議席も取れなくなってしまう。菅政権誕生に次ぐ悲劇となる。時間がない。立民、共産両党執行部の英断を求めたい。

 そんな中、立憲民主党枝野幸男代表は昨日6月17日、連合中央執行委員会の会合に出席し、「理念で違う部分があるので共産党との連立政権は考えていない」と発言した。じゃあ、どこと組んで政権をとろうというのか。単独で過半数がとれるとでも思っているのだろうか。共産党からしたら、とにかく自公政権打倒を優先しようと言っているわけで、それなら閣外協力でもなんでもやるぞと言うのではなかろうか。
 こういう「後ろ向き」の発言が、小沢氏の言う「次の悲劇」にならないよう、イスラエルのような〝英知〟を望む。話は選挙が終わってからだ。そもそも、まだ「勝てる」かどうかだってわからないのに。



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