衆院選挙当日。今日は勢い余って個別のことをあれこれと書くわけにはいかないが、ジャーナリストの鮫島浩さんが特に「若い世代」に向けた投票の秘策(と論理)を発信していて、ドイツの政党と比較するなど大変おもしろい内容だった。これは「世代」に関係なく、すべからく読むべき秀逸な記事だと思う。日本の個別の政党名を出さないと元記事の「箔が落ちる」感じは否めないが、比定したドイツの連立政権のところだけ、以下に引用させていただく(是非元記事をお読みいただきたい)。
10月29日付記事より。
高齢化時代の少数派「若い世代」の声を政治に届けるための秘策〜二大政党ではなく少数政党に投票を!│SAMEJIMA TIMES
……「少数派」の声を政治に届けるための強力なツールが、連立政権の鍵を握る「少数政党」なのだ。
世界各地でこのような連立政治はすでに実現している。わかりやすいのが、9月26日に総選挙があったドイツである。
得票結果は ①社会民主党(SPD)25.7% ② キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)24.1% ③ 緑の党 14.8% ④ 自由民主党 (FDP)11.5% ⑤ ドイツのための選択肢(AfD)10.3% ⑥ 左翼党 4.9% だった。今後の連立交渉で有力視されるのは「社会民主党、緑の党、自由民主党」か「キリスト教民主・社会同盟、緑の党、自由民主党」の組み合わせである。
ドイツでは中道左派の社会民主党と中道右派のキリスト教民主・社会同盟が二大政党である。しかしどちらも単独で過半数を制する力はなく、これまではメルケル首相のもとで二大政党が手を結ぶ「大連立」政権が続いてきた。
しかし、今回は二大政党のうち第3党の緑の党や第4党の自由民主党との連立合意を成功させたほうが首相の座をつかむという「連立相手の争奪戦」が始まっている。二大政党が第3党、第4党を引っ張り合うというわけだ。
緑の党は地球温暖化対策を最優先にする政党である。逆に自由民主党は経済発展を最優先にする政党である。この連立交渉は極めて難しい「大人の協議」となろう。それを経て、緑の党や自由民主党の政策は採用され、実現するかもしれない。
ここで注目すべきは、今回のドイツ総選挙で、70歳以上の約7割は二大政党のどちらかに投票した一方で、若者の間では「第1党は緑の党、第2党は自由民主党」だったことだ。ドイツの若い世代は二大政党を敬遠し、緑の党や自由民主党という「少数政党」を支持することで、連立協議を通じて自分たちの声を政治に反映させようとしたといえる。
第3党以下がキャスティングボートを握り、政局を左右するという点では、今年の3月に総選挙があったイスラエルはもっと劇的だった。
6月14日付BBC NEWSより。
https://www.bbc.com/japanese/57465072
……(今年3月の総選挙の結果)リクードは第一党となったが、(リクードの党首)ネタニヤフ氏はまたも政権を樹立できず、2位につけたイエシュ・アティドのラピド党首が組閣を任された。
ネタニヤフ氏の首相続投への反対は、左派や中道に加え、イデオロギー的にはリクードに近いヤミナなど右派政党からも強まった。
ヤミナは3月の総選挙で7議席の5位にとどまったが、その支持の行方が政界再編の鍵となった。ラピド氏は数週間の協議を経て、ヤミナを連立に組み入れることに成功。ネタニヤフ氏を首相の座から下ろすことだけを目的とした協力態勢だった。
8党による連立政権(計61議席)の樹立は6月2日に合意に至った。さらなる総選挙実施が決まる数時間前のことだった。この合意で、ネタニヤフ氏の退陣は実質的に決まった。
新政権の特徴と前途
ベネット新首相が率いる政権は、イスラエルの73年にわたる歴史で前例のないものとなる。
参加政党によって政治思想は大きく異なり、アラブ・イスラム主義政党ラアムも加わっているのが最大の特徴だ。過去最多の女性大臣9人の就任も見込まれている。
ラアムや非アラブ系イスラエル人でつくる左派政党と、ユダヤ人のヨルダン川西岸への入植を強く支持する右派政党のヤミナや「新しい希望」などが、パレスチナ政策などをめぐって衝突する可能性がある。
また、社会問題に対する立場も異なる。いくつかの政党は同性婚など同性愛者の権利の促進を求めている一方、イスラム主義のラアムは反対の立場だ。
宗教的な制限の緩和を望んでいる政党が複数ある一方で、国家主義的な宗教政党のヤミナは、これを認めないことが予想される。
ベネット氏は、合意が可能な分野で新政権としての仕事を集中的に進める方針を示している。経済、新型コロナウイルス対策などがそれに当たる。
ベネット氏は最近、「誰もイデオロギーを捨てる必要はない」、「しかし、全員が夢の実現を先延ばしにしなくてはならないだろう(中略)できないことを議論するのではなく、実現できることに集中していく」と表明した。
BBCのトム・ベイトマン中東特派員は、新政権の政治的立場はこれまでにない幅広さだとし、それゆえ、これまでにない不安定な政権になりうると説明。ベネット氏は連立の維持に多大な努力を払うことになるだろうとした。
これはどなたも思い当たるところがあると思うが、右派政権だからといって、右派寄りの政策ばかりやってるわけではなく、むしろ、左派寄りの政策を打ち出すことがある(これは左派政権でも同じことで、時に支持者から「裏切り者」呼ばわりされることもある)。
つまりは、政権を担うというのは、みんなに「いい顔」をしないといけないから、それなりにアンチ勢力も取り込まないといけなくなる。自分の主義主張だけを押し通すわけにはいかないのだ。
「小異を捨てて大同につく」。それも(が)「政治」だと思う。「野合」かどうかは「大同」の価値によるだろう。それで社会がうまくいくならまーるくおさまる。
……と書いていると、余計なことに言及しそうなので、ここで止める。
今日は静かに結果を待つことにしたい。
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