ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

佐藤さん、ファイザー社に電話する

 新型コロナのワクチンは9月までに届くようなことが言われている。
 河野太郎行革担当相(ワクチン担当大臣)は4月18日、フジテレビの番組「日曜報道 THE PRIME」に出演し、ワクチンの追加供給で米ファイザー社と実質合意したと述べ、現在接種対象とされている16歳以上の全員分が9月末までに調達できるとの見通しを示した。

https://www.fnn.jp/articles/-/171329

 以下は、その部分引用。

 梅津キャスター:今から10時間前、菅総理ファイザーのブーラCEOが電話会談を行いました。菅総理は日本のすべての対象者に今年9月までの確実な供給を要請しました。これに対し、ファイザー側は日本へのワクチンの確実かつ迅速な供給に向けた協議を進めると応じたということです。
 松山キャスター菅総理ファイザーCEOとの電話会談で具体的に何が決まったのか。
 河野大臣:今、6月末までに高齢者が2回接種できる分の供給をファイザー社から受けることは決まっております。今度は9月末までに日本が入手できる全てのワクチンで、今の接種対象者にワクチンの接種を完了できるペースでワクチンを供給してもらう、それに足りる分だけファイザー社にも追加で供給をお願いして、総理とCEOの間で大体そこはだいたいクローズしてもらった。
 松山:クローズというのは実質的にはもうこれで合意されたという認識か。
 河野:実質的に合意がなされていると。細かい9月までのスケジュールの調整というのは、またこちらでやりますけれども、実質的にそこはそういうことになった(=合意がなされた)と思っていただいていいと思います。


 これがもし本当なら喜ばしい話だ。敬意をもって(お詫びして)、スガ総理を菅総理に戻さなければならない。

 ところが、4月19日付「一月万冊」に出演していたジャーナリストの佐藤章さんの話はそうではなかった。以下は、要約した引用。

【特ダネ】菅総理や河野大臣が言うのは本当?9月にワクチン1億本合意?ファイザーに電話して確認した結果・・・これはあまりにも酷いプロパガンダだ。元朝日新聞記者ジャーナリスト佐藤章さんと一月万冊 - YouTube

 河野さんはファイザーといろいろ話し合ってきていて、菅さんに「いけるだろう」という話をして、それで、(訪米時の)電話会談になったわけです。これはどういう背景があるかと言うと、アメリカでワクチンが余り始めていると、国内の接種が進んでね。最大で数億回分が余る見通しとなったというんです。そこで、アメリカも中国に対抗して「ワクチン外交」を始めようと いう話も出ているんです。河野さんがファイザーと交渉に入ったとき、おそらくこういう状況を見ていたんだと思うんです。で、交渉して、菅さんの訪米前ぎりぎりになって、だいたいそういう話ができたんじゃないかと河野さんは判断したんでしょう。そして、菅さんに報告して、電話会談か何かやって詰めてくださいと、そういうことだと思うんです。

 ところが、今日、ファイザーの日本法人に電話して見解を聞いてみたんです。日本政府は「実質的合意」と言ってますが、ファイザーとしてはそういうことでよろしいんですか?と。そうしたら、広報担当者はこう言ってたんです。
 日本のマスコミが「実質的に合意」と書いているのは、菅首相の訪米に合わせ、外務省などが首相の行動についてホームページに書いているので、それを参考にして書いているのだと思う。ファイザーとしては、「協議は継続中」としか言えません。これはファイザー日本法人としてだけでなく、アメリカのファイザー本社としての見解です、と

 河野さんと菅さんは喜んで熱くなって語っているんでしょうけど、ファイザーの方は冷静で、「協議は継続中」としか言えないと、冷厳たる言葉で述べています。もし、これが実質合意であれば、もっと前向きな言葉を使っていいはずですね。河野さんが謎の微笑を浮かべて「結果(内容)についてはお楽しみです」(16日内閣府での会見)と言ってましたけど、これね、喜びすぎですよね。
 それで、ファイザーが外務省のホームページを参考にして言ってるんだろうと言うので、見てみたんですよ。そうしたら、こう書いてあるんです。

菅総理とブーラ・ファイザー社CEOとの電話会談|外務省

 現地時間4月17日午前8時30分(日本時間午後9時30分)から約10分間、ワシントンDC訪問中の菅義偉内閣総理大臣は、アルバート・ブーラ・ファイザー社CEO(Dr. Albert Bourla, Chairman and Chief Executive Officer of Pfizer)と電話会談を行ったところ、概要は以下のとおりです。
1 冒頭、菅総理大臣からは、日本に対するワクチンの供給を含めた新型コロナ感染症対策におけるファイザー社の貢献に謝意を表明し、日本に対するワクチンの引き続きの安定的な供給とともに、我が国の全ての対象者に対するワクチンの今年9月までの確実な供給に向け、更なる追加供給を要請しました。
2 これに対し、アルバート・ブーラ・ファイザー社CEOからは、新型コロナ感染症における日本政府のリーダーシップ、国際保健分野での日本の貢献に対する謝意が述べられ、日本へのワクチンの確実かつ迅速な供給及び追加供給に向けた協議を迅速に進めることを含め、新型コロナ感染症の克服に向けて、日本政府と緊密に連携していきたいとの発言がありました。

……これ、どこに「実質合意」と書いてあるのか。何もないですよね。
自民党筋にも聞いてみたんです。そしたら、「これから協議をすることが決まった」と言うんです。これ、意外に正確だと思うんですよ。ファイザーの話と符合してるし……。要するに、これから話し合いましょうってことだけなんですね。

……この河野さんの言葉を紹介した報道というのは「片手落ち」というのかな、河野さんが言ったことは事実だから、それは報道しなければいけないんですけど、一方で、ファイザー日本法人に確認してみたところ「協議は継続中。それしか言えない」という回答でした、と。ニュースとしては二つ載せないといけないし、また解説を書かなきゃいけないんですよ。さっきのワクチンが余り始めている背景があって河野さんは交渉に乗り出した云々のような……(ところが、最近ファイザーのワクチンは3回うたないといけないという話も出てきている)。

 それにしても「ウラをとる」というのは取材の基本ではないのだろうか。これを元(新聞)記者の佐藤さんがやって、スガ総理やコーノ大臣の「実質合意」発言には何の根拠もない、主観的な願望だということがわかったというのでは、他の現役の記者諸氏は何をやってるのかという話になる。


 4月20日衆院本会議でスガは先の日米首脳会談後の記者会見でロイターの記者の質問を無視した件に触れて、「バイデン大統領への質問のみと認識してしまい、結果として回答漏れがあった」と釈明。政府関係者も「首相はイヤホンで、同時通訳で質問を聞いていたが、自身に対する質問だったと思わなかったようだ。相当緊張していたのだろう」とフォローしたとのこと。

日米首脳会談 五輪質問答えず 首相、「想定外」に緊張? 「バイデン氏へのみと思った」 | 毎日新聞

 これがごまかしでないなら、改めてロイターの記者と同じことを質問されたら、スガ首相は答えられるはずだ。なぜ、誰も聞かない。そして、なぜ回答しないままで許してしまうのか。
「公衆衛生の専門家も疑問視する中で、五輪を開催するのは無責任ではないか?」
 ロイターの記者だけがその答えを聞きたいわけではないのだ。日本の新聞記者諸氏、がんばってほしい。



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