これが現実でなく、テレビ・ドラマのひとつか何かだったら、不愉快ではあるが、どんなに気が楽か知れない。
毎日続く、スガ首相のダメダメ笑劇場。このほど延長拡大された「非常事態宣言」、実は17日に来日予定だったIOCの「ぼったくり男爵」が「日本には行かない(行けるか、そんなんで!)」と言ったから、延長を決めたのではないか、と囁かれている。
31日まで「宣言」を引っ張ることを決めたスガ首相は、記者会見で記者から東京五輪の開催について質問された。
ワクチン「1日100万回の接種目標」菅首相が宣言延長で会見(2021年5月7日) - YouTube
東京五輪「開催できるのか、開催していいのか」と問われ菅総理「国民の命や健康を守り、安全安心の大会を実現することは可能」(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース
「コロナ禍に東京五輪を開催できるのか、開催していいのか。国民の間にも、アスリートの間にも不安や疑念が広がっている。どのような感染状況になってもIOCが中止を判断しない限り、日本政府として開催に向けた取り組みを続けるという立場は変わらないのか。国民の命とくらしを守ることと、五輪・パラリンピック開催の両立は可能なのか。」
「大会の中止を求めるオンライン署名が開始3日で20万を超えた。これは素直な国民の世論だと思うが、現在行われているテスト大会などでアスリートに取材すると、このコロナで大変なときにスポーツをすることや五輪を目指すことがいいのか、世間からの風当たりに厳しいものを感じ、非常に苦しんでいるように見受けられる。彼らにどんな言葉をかけてあげられるのか。」
これは、わりと切実な問いである。これに対して、スガ首相はカンペを見ながらこう答えた。
「東京五輪の開催について心配の声が国民の皆様から上がっていることについては承知している。まずは、現在の感染拡大防止に全力を投入していく。選手や大会関係者の感染対策をしっかり行っていく。そうして、国民の命と健康を守っていく。これが大事だと思っている。訪米した際、ファイザー社CEOから東京五輪の各国の選手などに対して、ワクチンを無償で提供したいとの申し出があり、IOCと協議の結果、各国選手へのワクチン供与が実現することになった。さらに選手や大会関係者と一般の国民が交わらないように、滞在先や移動手段を限定したい。選手は毎日、検査を行うなど、厳格な感染対策を検討している。こうした対策を徹底することで国民の命や健康を守り、安全安心の大会を実現する。このことは可能と考えており、しっかり準備をしていきたい。このように思います。」
「五輪開催に向けテスト・イベントが数多く行われている。大会本番を想定して感染対策を徹底している。外国の選手については一般国民と交わらないようにし、選手は毎日検査を行うなど厳格な対策を行っているところだ。テスト・イベントを通じて様々な知見を得て、安全安心な大会にするので、是非懸命に取り組んでいただきたい、そういうふうに思っています。」
全力でやってますが、感染者は減りません。でも、安全安心な大会を実現するから選手の皆さん、がんばってください——「全力」とか「厳格」とか「徹底」という言葉が空しく響く。これも精神論の延長なのだろうか。ドラマならそれでもけっこうだが(つまらないが)、「全力」を注いでダメなら、現実社会では、誰か別の人に交替してもらうしかない。
ところが、その「誰か別の人」の有力候補が何ともさえない。
小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ5月号」で、河野太郎ワクチン大臣が子ども記者からオンラインで直撃取材を受けているという。「なりたい大臣はありますか?」とストレートに聞かれた河野は「総理大臣です」と答え、「国内のことから外交までを総合的にみて、責任を持ってやりたい。自分がこうしたいという政策を実現したい」と言ったという。
その河野、5月5日に放送されたテレビ・ニュースに出演し、コロナ・ワクチンの大規模接種センター東京会場での1日1万人の接種について質問され、「1日1万人接種できるかどうかは自衛隊の検討次第」と発言し、これでは自衛隊に ”丸投げ” ではないかと批判されている。
AERA dot. の5月7日付記事より。
「1日1万人接種は自衛隊次第」河野大臣の”丸投げ”発言に自衛隊から怒りの声 (1/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)
……官邸周辺関係者がこう語る
「官邸のトップダウンの指示に何とか対応しようと現場が奔走している中、河野大臣の丸投げ発言はあまりに酷い、と防衛省幹部は嘆いています。防衛省では現在、全国にどれだけの医官、看護官をセンターへ派遣できるか、聞き取り調査を行っているのですが、地域医療をも支える自衛隊病院から引き抜くわけにもいかず、部隊の医務室に医官や防衛医大の大学院生を何とかかき集めようとしています。実はそれでも人員が全く足りず、1日1万人と大々的にぶち上げたものの、実際は非現実的で無理という声が出始めています」
河野大臣の出演した番組を視聴した自衛隊OBは「発言に耳を疑いました。そもそもワクチン接種は厚生労働省の管轄でやるべきではないでしょうか。自衛隊の医療スタッフ、看護助手だけでは人数が足りないし運営は不可能です。厚生労働省が主導で自衛隊がサポートするなら理解できますが…。自衛隊の本業は国防です。元防衛大臣の河野さんはそのことを一番わかっている政治家だと思うのですが…」と渋い表情を浮かべる。
SNS上でも政府の対応に疑問の声が目立つ。
「自衛隊関係者です。1日一万人として、8時から20時まで13時間運営。割り算すると、1時間あたり770人の接種が必要。おじいちゃんおばあちゃんで頑張って1人接種を5分で終わらせるとして、接種場所1ヶ所で1時間に12人に接種するのが限界。770÷12=64、つまり計算上64ヶ所の接種場所が必要です。自衛隊が以前大阪に医療スタッフを派遣した際は頑張って40人でした。問診や看護助手、交代要員も必要ですから自衛隊が64箇所の接種場所を何とかセンターに設置して運営するのは絶対に不可能です」
「あまりに無責任ではないでしょうか。自衛隊は全力で努力するでしょうが、無謀な目標を丸投げされたことには怒りとなさけなさを感じます」、
「自衛隊の医官と看護官はそれぞれ約千人とされ、東京で1日1万人、大阪で1日5千人にワクチン接種するだけの人員を派遣できるとは思えない。最初に大層な接種目標を掲げておきながら今頃になって『自衛隊次第』とトーンダウンするのは如何なものか」
前出の自衛隊OBはこう語気を強めた。
「自衛隊は有事に国を、人命を救うのが仕事だと自負しています。昨年の2月にコロナ感染が集団発生した大型クルーズ船『ダイヤモンドプリンセス号』で約2700人の自衛隊員が動員されて医療支援を行ないました。ただ今回のワクチン接種が自衛隊の任務と言われることには疑問を感じます。もし、大規模接種センターでの接種がうまく機能しなかった時に自衛隊に責任を押し付けるのはやめてもらいたい」
1日1万人の接種が果たして現実的な数字なのか、多くの高齢者が大規模接種センターを訪れることで密状態にならないかなど懸案事項は多い。
「1都3県だけでも900万人の高齢者がおり、1日1万人も大挙して電車で大手町の合同庁舎に連日、駆け付けたら、クラスターの発生リスクもあります。自治体から受け取った接種券を会場に持参すれば、いつでも接種できるようにするとを言っているが、見込み数を把握しないでどうやってワクチンを準備するのかすら検討されていません。打つ人がわずかしか来なかったら大量の廃棄が生じてしまうし、逆に希望者が殺到したらどうするのか」(政府関係者)
自民党は憲法9条に自衛隊を明記することによって、自衛隊員が憲法違反のそしりを受けず、胸を張って仕事ができるかのように喧伝してきたが、その自民党のトップ(総裁)の次の有力候補の一人がこれである。ワクチン担当大臣(しかも前防衛大臣!)なのに発言が軽薄かつ無責任で、思慮がなさすぎる。こういう類の人間が、望み通りに総理大臣になったら、ダメダメ笑劇場が延々と続いていくだけだ。
<追記>弁護士の澤藤統一郎さんの5月7日付のブログに「世相いろはがるた」を見つけた。笑えます。
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