ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「ガッツと気迫で頑張ってくれ」

 「7月末までに高齢者のワクチン接種を終わらせろ」と、総務省をつかって市町村にワクチン接種の檄を飛ばすスガ首相。武田総務大臣名で自治体首長宛てに緊急要請のメールまで出している。
 そのメール(要請文)、
 「……災害や感染症の対応など、御心労の多い日々かと存じます。くれぐれも、ご自愛くださいませ。
と結ばれているが、
心労」のタネを増やしているのは、あなたたちですから!

 「俺が7月と言ったんだから、何が何でも7月に終わらせろ!」—— “裸の王様” をめぐるこの大混乱を、5月3日付「AERAdot.」が伝えている(今西憲之氏 AERAdot.取材班による)。部分引用を許されたい。

【独自】「7月末までに高齢者ワクチン接種完了は無理」全国の地方自治体の6割回答 菅首相の指示で混乱 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

「これまでワクチン接種は、田村厚生労働相や河野ワクチン担当大臣が中心だった。しかし、スピードが遅く、なかなか進まない。菅首相の“ポチ”と言われる武田大臣が呼ばれ、『とにかくワクチンを打ちまくれ』『何とかしろ』と厳命されたので、あたふたしています」(総務省関係者)

……しかし、現実は厳しい。厚労省が4月末、全国の地方自治体に内々で調査したところ、1741の市町村のうち6割以上の1100の自治体が「7月中に高齢者のワクチン接種完了はできない」と回答している
 主な理由は「ワクチンが国から届かない」「予約を受け付けると瞬殺で埋まってしまい、現場が大混乱」などなど…。
「市町村はワクチン接種の担当者だけでは手が足りず、他の部署から急遽応援を求めて、クレーム処理にあたっているそうです」(厚労省関係者)

(※下線は当方が施した)

兵庫県明石市泉房穂市長がAERAdot.の取材にこう語った。
明石市にはワクチンが1箱だけ届きました。接種できるのは300人くらいです。それで予約を受け付けると殺到して、現場が大変。十分なワクチンを供給できないのは、国、菅首相の責任です。これで何とかやってほしいというのは、無責任すぎる。ワクチンが届かないのですから、7月末に高齢者の接種が完了なんて、できるわけないわ」

 AERAdot.で既報したたように、菅首相の命令を達成しようと武田総務相が全国の知事や市町村長に直接、メールを送って「7月末に終わらせるように」と訴えている。総務省関係者がこう明かす。
厚労省調査に対し、『7月中には終わらない』と回答した市町村にはローラー作戦で電話をかけまくり、カネ(財源措置)というニンジンにぶら下げながら、『7月中に接種が終わるような接種計画だけでも作ってくれ』、そして7月中は無理という回答だけでも『撤回・修正してくれ』という上意下達の指示を出しています。都道府県の副知事や市町村の幹部に直談判しようと、出向している官僚をリストアップ。官邸の意向がダイレクトに伝わるよう訴えています」

 しかし、自治体からは『ワクチンが足りていない』『ワクチンが届く日程をわからないと、間に合うとは断言できない』『ワクチンが来ても医療従事者が確保できるか』など前向きな回答が得られない状況が続く。
 九州地方の市長はAERAdot.の取材に対し、総務省のローラ作戦を認めた上で、呆れながらこう明かした。
総務省から何度か連絡がきています。菅首相が7月末と国民に約束したから至上命題と言ってきた。しかし、ワクチンは届きません。うちのような田舎町だと、医療従事者の確保もそう簡単に確保できません。そこを説明すると、ガッツと気迫で頑張ってくれと精神論のようなことを担当者は言っていました。連休明けには7月末にできるか、回答してくれと言っていたが、要は連休も働けと強要しているようなもの。ワクチンも届かない状態でどうしろと言うのか。官僚ってどうしてこんなバカなことを言うんですかね。ガッツと気迫でコロナを克服できるわけありません」

(※赤字は当方が施した)

中には「ワクチンを保存するフリーザーが確保できない」「ワクチン接種の案内状の印刷費用の予算をつけてほしい」「ワクチン接種のインターネットのウェブ予約がシステム障害で電話対応しかできない」などと訴えている自治体もある。
 ワクチンが届いても冷蔵保存できる設備がなければ、接種どころではないし、接種案内を印刷する予算がなく、ウェブ予約のシステムが故障すれば、大混乱することは必至。
「人手不足で医師の確保が難しく、週末は接種できない。接種完了は早くて8月末」と回答する自治体が大半を占めるなど、菅首相の掛け声とは真逆のお寒い状況となっているのだ。

 菅首相総務大臣経験者で、自身の長男も総務省幹部との「口利き」接待に同席していたほど密接な関係にある。いわば、菅首相の「ホームグラウンド」だ。
菅首相は今や官邸で『裸の王様』状態。自分が直々に指示したんだから7月末までに高齢者接種は可能と思い込んでいる。コロナ感染拡大が収まらなくても、ワクチン接種が進めば、緊急事態宣言の早期解除と東京五輪開催の両立は可能と本気で考えているようです」(政府関係者)

 自民党幹部はそんな菅首相をこう突き放す。
菅首相の支持率低下の要因は、ワクチン接種が進まないことが大きい。感染拡大が収まらず、ワクチン接種がダメなら、東京五輪パラリンピックも中止か、無観客など縮小するしかない。そうなると、菅首相に次の目はなく、自民党総裁選の出馬すらできないだろう。菅首相は自前の派閥がなく、無派閥の親しい議員を束ねることで一定の結束をはかってきた。しかし、支持率低下などで無派閥の議員らも菅首相から離れつつあります。その焦りから総務省を使って、ワクチン接種を早めようと賭けに出た。7月末と期限を切ったことで、達成できなかったら、公約が守れなかったと退陣もあり得る」

 その一方、今日(5月4日付)の「御用新聞」は、4月28日時点で全体の約6割にあたる1,000を超える自治体で、高齢者向けのワクチン接種が政府目標の7月末までに完了する見通しだと伝える。

自治体6割、高齢者接種を7月までに完了…政府見通し「さらに増える」 : 医療・健康 : 読売新聞オンライン


 65歳以上の高齢者人口は、3,617万人(2020年9月時点)。すでに接種を受けた人も若干いるが、7月末までに2回の接種を完了するには、あと80日余のうちに全国で1日当たり80万回超の接種が必要となる。休みなくやったらという話だから、感覚的?には1日たぶん100万回くらい。そんな規模に対応するスタッフを全国でそろえるのは無理だろう。そもそも肝心のワクチンがまだそろっていないのだ。
 うちにも市から「新型コロナワクチン接種券 在中」なる封書が届いているが、「予約はまだできません」(電話するな?)と書いてある。

 Twitter
「ウチらの首相、原稿の朗読ぶりから国語が苦手なのは知ってたけども、……どうやら算数も苦手のようで」
(https://twitter.com/buu34/status/1388739529142530053)
というのがあった。

 朝からため息が出る。



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