ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

二階発言の裏読み つづき

 清水有高さんの「一月万冊」を見ていたら、ジャーナリストの佐藤章さんが4月15日の二階発言についておもしろいことを言っておられた。なるほど、さすが佐藤さん、「事情」通でいらっしゃる。部分的に起こしてみる。

五輪中止!二階幹事長の発言は実質的な東京オリンピック中止発言だ!それとも菅総理を見切ったのか?もしかしてタダのボケ?元朝日新聞記者ジャーナリスト佐藤章さんと一月万冊清水有高 - YouTube

 1月5日の発言(「自民党として開催促進の決議をしても良いくらいに思っている」「開催しないという考えを聞いてみたいくらいだ」)からしたら、これもう180度の転換じゃないですか。当たり前のことなんだけども、その当たり前のことを今まで言えなかったわけで、それを初めて言ったわけですよ、常識的なことを。これは何でなんだろうか、って話ですよね。
 私が聞いた確かな情報を一つ言うと、二階派の派閥内の若手から「オリンピックはもう無理だ」という声をたくさん聞いているらしいんですよ。前にも説明しましたが、4月10・11日の土日に、自民党の若手はみんな選挙区に帰っているんですよ。そこで、後援会の人とか、普通の常識をもった人に改めて触れたわけです。そこで、「オリンピック無理だろ」と、「お前ら、いったい何考えてんだ」という声を聞いてきてるわけですよ。二階さんはそういう話を若手から散々聞いているわけですよ。そういうのが頭にあって、CSの番組がたまたまあって、そういう質問があったんで、つい言ってしまった、と。僕はね、この「つい言ってしまった」というのが、けっこう当たってるんじゃないかな、という気がするんですよね。

 ただね、保険をかけたんだという見方もありますよね。菅さんはもちろん(開催へ)突っ走ってるけれど、これが本当にダメで、中止に追い込まれれば、菅政権にとっては大打撃になります。そこで、ここで一応逃げ道をつくっておく、という穿った見方もあります。
 ……自民党の上層部は今ゆれてるんじゃないかと思います。菅さんは突っ走ってるけれども、本当にこれできるのかな、と。普通の常識に立ち返れば、そう思うじゃないですか。そこで、自分は菅と同じ運命に陥りたくないと思っている人もいるんじゃないかということです。それを二階さんは感じてるかもしれないし、もしかすると、二階さん自身がそう考えているかもしれません。そうなったら、菅を切るというのもシナリオの一つです。
 アメリカに行く菅さんにとっては、これはとんでもない発言ですよね。これからバイデンと会って、オリンピックのアメリカ選手団派遣の言質を取るという前提で飛行機が飛ぼうというときに、ええっ!という。
 というのは、菅さんと二階さんのあいだには相当ヒビが入っていて。菅さんは、最近、二階さんをいろいろな場面で外すらしい。それで、二階さんはカチンとくることが重なっているそうなんです。だから情勢次第では、二階さんはいつでも菅さんを躊躇なく切ると。でも、まだそういう見通しがついているとは思えないんです。

 菅さんは、森喜朗さん(蔑視発言)の一連の問題を受けて、一時中止に傾きかけたんですよ。ところが、東北新社問題で、息子の正剛さんが総務省の接待係をやっていたという事件が出てきて、(世間の関心をそらすために)一転強行路線に戻るわけですよ。何としてもやると。で、アメリカに行ってバイデンからアメリカ選手団の派遣の確約をとりつければ一歩前進になる。この場面で二階さんがはしごを外したわけなんです。もし、これ意図的にやったとなれば、それは「スガ切り」以外の何ものでもない。水面下で相当な工作をやったということになるわけです。でも、そういう情報は入って来てないですね、僕のところには。

 週刊文春の記事の中で「8割おじさん」で知られる、前の北海道大学の教授で今は京都大学の西浦博さんが「オリンピックの1年延期を」という提言をしています。実質的には「中止しろ」と言っているに等しいんですが、この記事によると、4月7日に厚労省のアドバイザリーボード(諮問委員会)、厚労省に助言する会議ですけど、そこで大阪府兵庫県には緊急事態宣言が必要だと訴えてるわけです。ところが、2日後の4月9日に開かれた分科会(基本的対処方針分科会)で、菅さんは緊急事態宣言は発令しなかった。つまり、(提言を)無視したわけです。これが菅さんの状況です。大阪の吉村知事はどうかというと、19日の週まで待とうと言ってます。蔓延防止の効果を見極めたいということで。これで日付が合うわけですね。つまり、菅さんが15日から17日までアメリカへ行って、バイデンとオリンピックのことを話すと。それを待って19日の週と言ってるわけです。菅さんがアメリカに行く前や言っているあいだに緊急事態宣言を出してしまうと、バイデンとしても言いようがない。「オリンピック、がんばろう」とは言えないし……。言ってるそばから「ロックダウンしてるじゃないか」と、「科学的な話をしようじゃないか」と言われてしまう。だから、19日まで待たせて、菅さんが帰ってきたら、(緊急事態宣言も)仕方ないかなと……。そういう推測も成り立つんです。……でも、西浦さんは、そんなことを度外視して、一年延期した方がいい、議論してくれと言ってるわけです。

 医療ガバナンス研究所の上昌広さんにもいろいろと聞いてみたんですけど、意見が一致したのは、二階さんの発言はオリンピック中止と全く一緒で、これは決定的であると。どういうことかと言うと、季節性要因と変異株によって、今の第4波は7月から8月までそのまま行ってしまう。そもそもピークは5月から8月で、そこまでは上げ潮でいく。世界中が同じ時期にピークを迎えている。イメージとしては潮の満ち引きと同じで、最悪の場合、8月まで増えて、そのまま冬に突入することもあり得ると。これは自民党政権が国民にお願いはするが、ほとんど有効な対策をとってこなかったからで、その「お願い」にしても、一番強いお願いは「緊急事態宣言」なのに、それさえもやらない。そのわけは、今言ったように、菅さんが訪米するから、その間は待ってくれと。そういう推測しか働かない。そうでなければ、吉村さんが緊急事態宣言を出さない理由は見つからない。


 先回引用した4月15日付毎日新聞の記事の最後にはこうある。

タブーだった中止の2文字 二階氏発言に世界は…迫る決断の時 | 毎日新聞

……決断の時は刻一刻と迫っているが、森喜朗・前組織委会長が女性蔑視発言で辞任し、開催を強力に推進するキーマンが不在となったことも「迷走」に拍車を掛ける。組織委関係者は「みんな誰かがハンドルを持っていると思ったら、誰も持たずに進んでいたという状況に陥っている」とこぼした。

 運転席には誰かが座っているだろう、座っているはずだとみんな信じてきた。確かに、途中まではそこに誰かが座っていたのかも知れないが、よくのぞいてみると、実は誰もいなかった、と。前政権のときには「サルが運転していたら……代わりを見つける前にサルを止めるだろう」と言われたけれども……。


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