ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

スガ首相の「内奏」

 清水有高さんの「一月万冊」で清水さんと佐藤章さんとの対談を見ていて、6月22日(火曜)に総理大臣が天皇に国政の報告をする「内奏」があったことを知った。この「内奏」、戦中の「上奏」を連想してしまい、よいイメージがわかないが、1973年当時の首相(田中角栄氏!)の答弁では、「天皇の教養を高めるために閣僚が所管事項の説明を行う」ものであり、1988年当時の宮内庁次長によれば「国情を知っていただき、理解を深めていただくということのためにご参考までに申し上げる」ものとされている。「天皇の教養を高めるため」とか「国情…の理解を深めるため」とか、もしアベスガがこれを言ったら、悪い冗談にしか聞こえない。

 スガ総理はこの日、天皇に48分間「内奏」したということだが、いったい何を「報告」したのか。天皇にしても、不明な点があれば、どういうことかと尋ねる(「下問」する)ことはあるだろう。そして、留意すべきは、時系列の順序では、天皇が「内奏」を受けた2日後の24日(木曜)、西村宮内庁長官の「拝察」発言があったことだ。

 6月26日付の「一月万冊」の佐藤さんの話から一部要約し引用する。

五輪中止!裏の戦い。天皇VS安倍菅。上皇以前から続いていた安倍晋三との確執。五輪中止側に立った天皇の生き残りをかけた戦略。元朝日新聞記者ジャーナリスト佐藤章さんと一月万冊清水有高 - YouTube

 ……来日したウガンダの選手から陽性者が出てわかったことは、一年前とちがって今はエアロゾル感染がわかっているんだから、全員一時隔離以外にはないのに、政府は旧式の「濃厚接触者」にしたがって対処してますよね。ふつうは全豪オープン(テニス)のときみたいに全員隔離、全員PCR検査ですよ。感染力が強いと言われるインド型、デルタ株が広がっているのに、いまだに「濃厚接触者」かどうかの「認定」とか、飛行機で言えば、前後2列以内とか、そんなことをやってるんです。この国はいったいどうなってるんですかねぇ。
 ウガンダの選手の本隊、残りの47人はこれから来るんですよ。今ウガンダは感染が急上昇していて、インド株、南アフリカ株、ブラジル株と、いろいろなものが流行してる状況でこれから選手がおおぜい入ってくるというのに、わかったことは、感染者が出た場合どうするかということが何一つ詰められていなかったということなんです。

 天皇はおそらくこうしたことをよく研究されていると思います。僕の推測では、たぶん菅さんよりも何十倍もよくご存じでしょう。菅さんと天皇が1対1で相対して、天皇からご下問があるわけですよ。まあ、「お疲れ様です、大変でしたね」、「…ついては、ウガンダの選手の取り扱い、対処方法についてなんですけど、こういった方法はどうなんでしょうか」などといろいろと尋ねるわけでしょう。「なぜ、(ウガンダ選手と同じ飛行機に乗っていた)80人はそのままだったんでしょうか?」とか、「ウガンダの残りの選手8人はどうしてそのまま(大阪へ)行ってしまったんでしょうか?」とか。そのときに菅さんがですよ、「説明できることとできないことがあるんです」(笑)なんて言おうものなら、天皇もひいちゃいますよね(笑)。
<清水:まあ普通にどうなってるのか尋ねていても、「安全安心、安全安心…」って繰り返すだけではねえ。ほんとに大丈夫かあ、って…(笑)>
 5分くらいだったらともかく、48分もあったら、ごまかせないでしょう。天皇は理路整然と「これはどうか、あれはどうなってるか」といろいろと細かいところまで気にされると思うんですよ。ウィルスそのものについてもよくご存じだと思うし、「一月万冊」をみてるかどうかわからないけど(笑)、「それによると、季節性要因で急上昇するようですが…」とか(笑)。そのあたりはよくわかりませんが、いろいろな要素についてもよくご存じだと思うんですよね。そのときに菅さんはたぶん詰まっちゃうと思うんですね。
 菅さんがこういう状態だったら、天皇でなくても、誰でも不安になると思うんです。これはまずい、非常にまずい、と。それで、24日の西村・宮内庁長官の会見(の発言)になったと思うんですよ。

 オリンピックの開会式で「私は第〇回近代オリンピアードを祝い、開会を宣言します」と挨拶する。これ、オリンピック憲章で君主(国家元首)がやることになっていて、日本の場合は天皇がやることになるんでしょう、前のオリンピックでは昭和天皇がやってますんで…。ところが、6月8日に加藤官房長官が会見でこの点を問われると、「調整中」と答えたんですね。これいまだに「調整中」なんですよ。1ヶ月前を切った今でも…。これは何を「調整」しているのかってことですよね。天皇にとっては、やはり、果たして挨拶をしていいものだろうか、という気持ちだと思うんですよ。天皇がここまでOKを出していないということだったら、相当のことだと…。やはり本音は「中止」ではないのか。
 …宮中ではおそらく、コロナが全然収束していないではないか、ウガンダの選手団でわかったように検疫一つ、まともに詰め切っていない、それで何が安心安全なんだ、これで挨拶ができるのか、と。これは参与とか侍従とか、あるいは西村長官とかに怒りや疑問を投げかけているかもしれない。……
<以下略>


 今朝(6月27日付)の毎日新聞・日曜版で松尾貴史さんも書いている。

松尾貴史のちょっと違和感:五輪・海外選手に不公平な制約 日本のメダル素直に誇れるのか | 毎日新聞

 いくら何でも、いくら菅政権でも、東京オリンピックは中止にするだろうと思っていたのだが、やはりまともではなかったようだ。どうあっても、国民の健康と生命を危機にさらしても、人材派遣会社や広告代理店の利益を優先したいのか。「開催か、中止か」の議論が、いつのまにか「観客ありか、無観客か」というテーマにすり替えられ、それがまた「1万人か、半分か」という話にずらされ、多くのマスコミも批判することなくその線に乗って報道し続けている。

 東京オリンピックの選手村がマスコミに公開されたが「ビレッジプラザ」というメインの施設には、金の装飾トイレなるものが設置されたと話題だ。そのトイレの洗面台は装飾にしか気が向かなかったのか、蛇口は自動や足踏み式ではなくプッシュ式の手動だ。センサーのついた非接触の蛇口は、今時大量生産されているから単価も抑えられているだろうけれども、金の装飾は特注なのでたいそうお高いのではないか。男性用の小便器もずらりと並んでいて、間隔も狭く飛沫(ひまつ)対策もお粗末だ。仕切りを作る神経は働かなかったのか。金のかけどころがすっとこどっこいというか、感染予防対策の観念が希薄で、ずさんなことが露呈してしまった。……<以下略>


 この「ずさん」さ、「すっとこどっこい」さによって、おそらく外国の方々が抱いている、日本の「おもてなし」や「丁寧な仕事ぶり」を好感するイメージはズタズタになるだろう。単に恥をさらすだけなら耐え忍びもするが、このまま進めば東京五輪が世界の新たなパンデミックの渦の中心になりかねない。
 これを回避するために、今日も「中止だ中止!」を繰り返す。


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