ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

もう一度アメリカを偉大な国に

 アメリカの大統領選挙。コロナ感染を避けるために導入された郵便投票が波紋をよんで、情勢は緊迫している。一般論として郵便投票に「不正」の入り込む余地があるのは確かで、接戦となれば、これが導火線になって対立感情が煽られることは予想できた。現状の混乱を見ていると、事前にもう少し厳格な制度設計ができたのではないかという気がしてくる。とはいえ、そういう「ルール」で始まった以上、投票結果が確定すれば、それに従う姿勢をみせないといけない(今までアメリカはそうしてきたのではなかったか!)。多くの大人たちがまるで子どものようなわがままを押し通そうと絶叫している様には、自分はアメリカ国民ではないとはいえ、本当にうんざりさせられる。

 弁護士の澤藤藤一郎さんのブログを拝見したら、11月5日付「Courrier Japonクーリエ・ジャポン*フランス週刊紙」の記事が一服の清涼剤になると紹介されていたので、早速読んでみた。他方で、こういう人たちがいるのもやっぱりアメリカなのだと感心した。敬意をもって以下に引用したい。

澤藤統一郎の憲法日記 » 2020 » 11月

トランプ支持者がご近所のバイデン支持者をリスペクト─「言論の自由」の尊さを息子に示した父 | クーリエ・ジャポン

看板盗難に見て見ぬ振りはできず
トランプ支持者がご近所のバイデン支持者をリスペクト―—「言論の自由」の尊さを息子に示した父

ウィスコンシン州のワシントン郡は、市民の大半が共和党支持者と言われている。
それゆえに、民主党ジョー・バイデン氏を支持する看板を庭に立てている家は目立つのだろう。先月末、バイデン氏を支持するティム・プレースという男性の自宅の前に立てられていた看板が、何者かによって盗まれた。
つまらないイタズラの被害に遭ったプレースは、のちに看板を再び立てられるようになるのだが、意外な人物の助けによってそれが実現した。
プレースに手を差し伸べたのは、ドナルド・トランプ氏を支持するジョシュ・シューマンという男性だった。シューマンは、単に共和党支持者というだけでなく、選挙によって選ばれたワシントン郡の行政府の長だ。その彼が、言うならば敵対候補を支持する市民のために動いた理由は、民主主義国家で重んじられている言論の自由を守るため、そして政治という枠組みを超えた人間関係の尊さを子供たちに教えるためだった。

シューマンは、自身のホームページに事の経緯を記している。彼は、普段は静かなワシントン郡でも、数日の間にトランプ氏支持を表明する看板が立て続けに盗まれる、あるいは破壊された報道を目にし、心を痛めていた。

次の世代に伝えたい大切なこと

ある晩、12歳の息子からバイデン氏を支持している隣人宅の庭にあった看板が盗まれたことを聞いたシューマンは、16歳の長男も含め、共和党支持の一家に生まれた2人の息子たちにとっても良い学びの機会になると思い、行動を開始した。
彼は民主党の事務所を訪ね、バイデン氏、副大統領候補のカマラ・ハリス氏支持者用の看板をもらえるか聞いたという。民主党員かどうかを確認されたシューマンは、正直にトランプ支持者であることを明かした。当然ながら民主党関係者は目を丸くさせたが、事情を説明すると納得してもらえ、無事に看板の入手に成功。帰宅後、次男を車に乗せて看板盗難の被害に遭った隣人宅に向かい、ドアベルを鳴らした。
車中、シューマンは次男に言論の自由の大切さを説いた。たとえ支持する候補者が違っていても、恫喝、破壊行動、盗みなどで自分の主張を通すような真似はしてはならないと説明したという。
シューマンの突然の訪問に驚いたプレースだったが、彼の善意に感動した。そして、もしシューマン家が同じような被害に遭ったら、同様の形でサポートすると伝えた。

シューマンは、「Fox News」に「(看板を盗む行為は)正しい行いとは思えません。私はトランプ氏を支持していますが、ご近所のみなさんのことも気にかけています。地域の全員に、言論の自由を守ってもらいたい」と話している。
今回の行動を実行に移すにあたって、シューマンは祖父から言われ続けた「他者に対する行動は、自分事のようにすること」という言葉を思い出したという。周りに自分を尊重してもらいたいのなら、まずは自分が他者の権利を尊重することの大切さを2人の息子に行動で示した彼は、今回の件を自身のホームページで次のようにまとめている。
ヨハネ23世は、『私たちを分かつものより、結びつけるものの方が偉大だ』と言っていた。だからこそ我々は、この国をアメリカ合衆国と呼んでいる。繋がり合いを持つという尊いギフトを、私たちの子供、孫に伝えていきたい。
(引用終わり)



私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る。
——今や文字通り「命がけ」になっている、このヴォルテールの言葉が、そのまま実践されている国、アメリカ。
この国を“もう一度偉大な国にする”のはトランプではない。



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