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日常と世相の記

“Black Lives Matter” 黒人の命はどうでもいいのか!

 5月25日にミネソタ州ミネアポリスでその事件は起きた。たばこを買おうとしたジョージ・フロイドさんは、偽造紙幣を使ったとして、警官4人に拘束された。無抵抗で警官の指示に従ったが、地面にうつぶせにされ、4人のうち1人の白人警官に膝で首を押さえつけられた。「息ができません!」と何度も訴えたが拘束は解かれず、8分余りののち動かなくなり、死亡が確認された。フロイドさんはテキサス州ヒューストン出身のアフリカ系アメリカ人。コロナの感染拡大で、レストランでの仕事を失っていたという。
 事件から今日で10日目を迎え、各州で夜間外出禁止令が出される中、抗議行動は全米に広がっている。人々が呼応する背景について、BBCが次のように伝えている。
 
黒人男性の暴行死に抗議、全米で続く トランプ氏を教会関係者や映画監督が批判 - BBCニュース

 抗議に参加する多くの人は、フロイドさんの暴行死そのものに抗議するだけでなく、黒人市民への警察暴力全般に抗議し、「Black Lives Matter 」と繰り返している。
「Black Lives Matter」は、2013年から2014年にかけて、アメリカの黒人に対する差別や暴力に抗議する運動の合言葉となり、2014年8月に南部ミズーリ州ファーガソンで18歳の黒人男性が白人警官に射殺されたのを機に、全国的な抗議運動と共に広がった。「白人と同じように黒人の命にも意味がある」という意味が込められている。
今回亡くなったフロイドさんのほか、2014年7月にはニューヨークで黒人男性のエリック・ガーナーさんが警官に取り押さえられ、「息ができない」と叫んだ後に亡くなっている。
 フロイドさんが死亡したミネアポリスでは2016年7月、自動車の後部ライトが壊れていたため警察に呼び止められた黒人男性フィランド・カスティールさん(32)が、警官に撃たれて死亡している。また、この前日には南部ルイジアナ州で黒人男性が警察に射殺されていた。また1カ月後の8月半ばには、中西部ウィスコンシン州で黒人男性が警察に射殺され、続く同年9月下旬には南部ノースカロライナ州でも黒人男性が警察に射殺された、激しい抗議が市内で起きた。
 米国勢調査などによると、アメリカでは最も警察に射殺されやすい人種はアフリカ系。複数の調査によると、違法薬物を使う割合は白人と黒人で大きな差はないが、逮捕率は黒人の方がはるかに高い。

「自分たちは生まれつき、怒ってるわけじゃない」(スパイク・リー監督)
 アフリカ系アメリカ人の暮らしを映画で描き続けてきたスパイク・リー監督は、「ジョージ・フロイドさんを大事にすべきだが、それだけじゃない」と、差別と格差の問題の大きさについてBBCに話した。
 リー監督は、動画配信大手ネットフリックスで公開する新作映画「Da 5 Bloods」についてBBCに語る中で、アメリカの人種対立は「新しいことじゃない。もう400年も続いてきた」、「自分たちは生まれつき、ただ怒ってるわけじゃない」と述べた。
 アメリカでこれほど大勢が怒っている理由について、リー監督は「黒人があちこちで殺されて、おまわりたちにはおとがめなしだからだ」、「黒いみんなや茶色いみんなが怒ってるのは、教育とか水道の水が汚いとか、人種差別とか、持てる者と持たないものの格差がひどいからだ」、「自分が勝てないように仕組まれたこの世界で、毎日生きてるからだ」と話した。
 リー監督はさらに、相次ぐ抗議行動に対して軍の投入も辞さない姿勢のドナルド・トランプ大統領について、「ギャングだってことが分かったし、独裁者になろうとしてるのも分かった」と話した。
 トランプ大統領ホワイトハウスを出て教会前で撮影した一連の行動について、リー監督は「家族と一緒に夕べ見ていて、こんな演出がありかって信じられなくて、叫んでいた」と話した。
 「力を誇示して威圧した。自分が歩いて教会に行きたいからって、平和的にそこにいる罪のない人たちにガスを使って通りを空にするなんて。まったく馬鹿げている」
教会の前に立ち、自分のものではないという聖書を手にしたトランプ氏について、リー監督はさらに、「あの人の手の中で聖書はしっくりきていなかったし、本人も聖書を手にするのが居心地悪そうだった。あんなのは今まで見たことがない。特に世界首脳で」と述べた。

 もちろん、すべてのアメリカ国民がこうした抗議行動を「是」と見ているわけではないのかもしれない。感じ方の「温度差」もあるだろう。しかし、「正義」が曲げられたときの反応には「彼我の差」を感じないではいられない。もっとも、検察庁法の時のTwitterデモを思うと、そう単純ではないのかもしれないが…。


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