ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

ジュース買ってあげるから協力してね

 北海道放送HBCテレビ)が2年前、2020年4月26日に放送した『ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~』を見ました。2019年7月15日、参院選の応援でJR札幌駅前で演説を始めたアベ晋三(当時首相)に対して、「アベやめろ!」と声を発した男性が十数人の警察官に取り囲まれて遠くの方へと連れ出される場面から始まります。人混みの中には「安倍総理を支持します」というフリップカードをもつ人が幾人も見えます。

 男性「抗議だよ、抗議…。」
 道警「いや、抗議はわかるけどさぁ」
 男性「暴力とかじゃないからさぁ」
 道警「協力してね…」

北海道放送の調べでは、この日の札幌では「増税反対」と声を上げた人など、少なくとも9人が街頭演説の場から排除されたということです。

HBCテレビ『ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~』2020年4月26日放送 - YouTube

 昨日、「FRONTLINE PRESS」に、元北海道新聞記者でジャーナリストの高田昌幸さんによるこのドキュメンタリー番組の検証記事がありました。引用させてください。

ヤジすら飛ばせないのか? 「小さな自由が排除された先」に何があるのかを見通した番組

◆「お金あるからジュース買ってあげる」と警察官
……
「やめろ、これが民主主義か。暴力で追放するのか」と男性。「危ないっす、危ないっす」と繰り返して群衆の中から連れ出す警察官たち。男性が「この国は、人間が権力者に対して物を言うことを警察権力で規制する国なの?」と抗議すると、警察官は「違う違う違う。そういうことじゃない」と言いながら男性の包囲を解かない。その後も数人の警察官がつきまとい、なかなか自由にさせなかった。

この日の札幌では、「増税はんたーい!」とヤジを飛ばした女子学生も排除された。女性警察官は女子学生から1時間半ほども離れず、どこまでも付いてくる。女子学生が「もう、どうすればいいのよ?」と言うと、警察官たちはこう言って付きまとう。「ウィンウィンの関係になりたい。ウィンウィンの関係に」「なんか飲む? 買うよ、買うよ。お金あるからジュースを買ってあげる」「コーラですか? ジンジャエールですか? ウーロン茶ですか?」。その時を振り返って、当の女性は番組内のインタビューでこう語った。

なれなれしくて、なんか懐柔しようとしてくるみたいな……懐柔って言うか、なれなれしいけど、すごく見下している感じっていうか…。なんかもう、“はい良い子にしててね〜”みたいな。

北海道放送の取材によると、この日、札幌では計9人が街頭演説の場から排除されたという。「年金100年安心プランどうなった?」という小さなプラカードを掲げようとしただけで、警察官に囲まれた女性もいる。そのプラカードが安倍首相の目に入らないようにするためだった。取材に対し女性は「無言でプラカードを掲げるというのは誰にでもある権利。弱者ができる唯一の、一人でできることを奪う国は民主主義ではない」と訴える。あの演説会場では、自民党支持者らのプラカードについては、何のおとがめもなかったのだ。そうした動きは札幌だけではなかった。カメラは本州にも向かい、同様の、首相を批判するヤジや掲示物を次々と排除している実態を明らかにしていく。
これはいったい、何なのか?

◆「怖かった。でも、みんな見てるだけ。誰も助けてくれなかった」
札幌の事件に関し、弁護士団体や市民らは北海道警察に抗議し、説明を求めたが、道警は7か月間も何の説明をしなかった。その後、道警は「ヤジ排除は適正だった」と結論付けた。この番組は排除された当時の映像を独自に集め、公職選挙法や元警察官、刑法の専門家などへインタビューを行い、ヤジ排除の正当性について真正面から検証する。さらにかつて北海道内で治安維持法によって逮捕された当事者にも取材。言論の自由を弾圧した原点「弁士中止」も発掘する。弁士中止とは戦前、演説に問題ありと警察が判断したとき、やめさせるために警官が発した言葉だ。

地方都市で起きた警察によるヤジ排除。「たかがヤジで…」という声も少なくない。しかしこの問題を放っておいていいのだろうか。小さな自由が奪われた先に待つものは何か。あの日札幌でおこったヤジ排除は、この国の民主主義になにをもたらすのだろうか。
それが番組から視聴者へのメッセージだ。番組の最後、「あの日、警察に排除された人たちに対し、救いの手を差し伸べる人たちがいませんでした」というナレーションに続き、排除された人たちはこう語っている。

女性「ほんとにもう、ずっと助けてほしくて。ひたすら、ずっと、怖かったんですよ、なんかもう……(周囲の人は)なんで見てるだけなの、カメラ撮ってるだけなのっていう感じなので…すごい悲しかったですね」
男性「日本社会の中で、他とは違うものを冷遇するとかっていう風潮は、やっぱり強い、強まっているかもしれないですけどね」

◆自由の価値はジンジャエール並みなのか
『ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に~』は、日本ジャーナリスト会議賞やギャラクシー賞奨励賞など多数の賞を受けた。作品のプロデューサーだった北海道放送山崎裕侍編集長は朝日新聞のインタビュー記事『ジンジャエールあげるから黙れ』の中で、おおむね、次のように語っている。

(当日は)異様でしたね。『安倍やめろ』と大声を出したとはいえ、1人の一般市民を何人もの警察官が取り囲み、一瞬のうちに数十メートル後方に離していった。周囲とトラブルがあったわけでも、暴力沙汰が起きそうな危険性があったとも思えない中で、ああいうふうに排除するというのは恐ろしいなと思いましたね。
道警は、最初にヤジを飛ばした男性だけでなく、『増税反対』とヤジを飛ばした女性や、別の場所では年金問題を批判するプラカードを掲げた女性も排除していました。警察官はジンジャーエールを買ってやるから黙れ、というふうな言い方を女性にしていました。警察官が、言論の自由ジンジャーエールの値段ぐらいにしか思っていなかったとすれば、それは違うだろうと。また、札幌駅前では大勢の自民党支持者らが『安倍政権を支持します』と書かれたプラカードを掲げていましたが、それに対しては何も言わずに、政権を批判するプラカードは下ろすよう干渉しました。掲げている内容で排除する、しないを決めるのはおかしいと思いました。

◆警察はマスコミを無視している
総理の街頭演説とあって、当日は地元メディアも数多く詰めかけていた。ヤジ排除は、その中で行われた。番組の中で、元道警釧路方面本部長の原田宏二氏は取材に来た北海道放送の記者に向かって、次のように指摘する場面がある。
今回の場合、恐ろしいなぁと思ったのはね、たくさんのマスコミのカメラのいる前で堂々とやったってことです。あなたたちは無視されたんですよ。
番組を取材した記者は「その言葉を聞き、ハッとさせられました。ショックでした。この問題は、私たちメディア側も問われているんだ、と気づかされました」と言い、山崎氏は「報道機関が当局を批判しなくなり飼いならされているという原田さんの危機感を感じた」と言う。与野党を問わず、政治家に対してヤジすら飛ばせない社会はおかしくなる。それが番組の結論である。


 札幌のヤジから3年。同じようなことが千葉でも起こるのかと想像します。そのとき、小生も含めて、県警の警官に「おかしいだろ、そんなの!」と言える人々やマスコミ、世論でいられるでしょうか。
 そしてまた、北海道放送がこのドキュメンタリー番組を放送してから2年の今、捏造字幕のNHKはこうした番組を制作し放送できるでしょうか。

 「ジュース買ってあげるから…」にはバカにするな!と思いますが、「ジュース」でなければなびく官僚やメディア関係者はいるでしょう。今やそっちの方が「主流」になってこの国を壊し続けているのですから。わずか2、3年で歯車はさらに回ってしまった感じがします。

警察が安倍首相の演説をヤジった人を排除したわけ - 原田宏二|論座 - 朝日新聞社の言論サイト




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