毎度の戯言とはいえ、生臭い話で恐縮です。
スガ：何だ、緑のた…、いや、コイケ都知事じゃないか。こんなところで何を？
ユリ：これは、これは、スガ総理、お待ちしておりました。
スガ：私を？ いったい何の用だね？
ユリ：実は、折り入ってお話が……。
スガ：話？ 私は聞く気はないよ、どうせやばい話に決まってるんだから……。
ユリ：まあまあ、そうおしゃらず。総理はいつも私に冷たくするから、ユリコ困っちゃう。
スガ：それを言うなら、リンダ困っちゃうでしょ。やめなさい、そういう昭和の人にしか通じないネタは…。
ユリ：総理もツッコミが鋭くていらっしゃるから、総務省の人たちも大変ですわ。
スガ：ん？ このあいだのポチ、いや、タケダ大臣の通達への嫌味かね。総務省は私の唯一の「島」だからな。
ユリ：総務省だけでなく、総理が公安や警察に通じてらっしゃるから、総理がどういう個人情報を握っているのかと、みんな戦々恐々としておりますのよ。
スガ：私はたたき上げで派閥もないから、それくらいの情報網がなければ、ここまでこれないよ。あなたも同じだろ？
ユリ：いえいえ、私などはテレビで少し顔を売った程度ですので。
スガ：大物に取り入るのなんかうまいもんだ。細川、小沢、小泉、アベ。最近では、２Fと。まさに「おやじ殺し」だな。マスコミを手なずけるのもお手のもんで、去年の学歴詐称もうまく乗り切ったじゃないか。
ユリ：あら、そんな、詐称だなんて……。本当にカイロ大学首席卒業ですのよ。
スガ：日本人が1人しかいないんだから、そりゃあ上から数えても下から数えても1番だわな。
ユリ：あら、でも、国際的な知己にはめぐまれておりましてね。アセアン諸国にもアルゼンチンにも知人は多うございますのよ。
スガ：私のネタはけっこうだ！ ところで、話とは何だね？
ユリ：実はオリンピックのことですの。
スガ：オリンピック？ このまま開催する以外に何があるのかね。いくらコロナ感染があるからって、もう再延期は無理だよ。だから、やるしかない。
ユリ：世界の論調も日に日に厳しくなっておりますしねぇ。ワシントン・ポストにまで書かれちゃって……。
スガ：何だね、開催都市の知事が何を弱気になってるの？
ユリ：いえ、「弱気」とかじゃなくて、ここは思い切った決断が必要ではないかな、と。
スガ：……というと？
ユリ：つまり、中止という……。
スガ：バカを言え、そんなことをしたら、莫大な損失が出るんだぞ。総選挙も大惨敗だ。あんたは私の政権をつぶすつもりか！
ユリ：いえいえ、そんな……。むしろ逆ですわ。
スガ：逆？ どういうことかね？
ユリ：誰が、いつ、中止を言い出すかっていうのが問題ですけど、このままオリンピックになだれ込んだら、史上最悪の悲惨な結果に終わりますわ。そのあと選挙をやった方が余計に傷が深くて惨敗するんじゃありませんの？
スガ：ほう。じゃあ、どうすると惨敗しないで済むのかね？
ユリ：ここは政府、組織委、東京都で共同でIOCに中止を要請します。
スガ：IOCが、それで、はい、わかりましたって言うのかね？
ユリ：言いますよ。感染拡大が深刻な国は選手を派遣できません。そこでまず、そういう国があるのにオリンピックを開催するのはいちじるしく公平性に欠ける、オリンピックの理念に反するって訴えるんです。
スガ：急にいい子ちゃんになるんだな。
ユリ：で、アメリカにも働きかけをするんです。やっぱり無理だから、一緒に中止の要請をしてくれ、と。
スガ：確かに、このあいだの訪米では、バイデンはオリンピックの話には乗ってこなかったからな。本人も東京に来る気は全然ないらしいし…。
ユリ：で、アメリカのテレビ局に放映のとりやめを迫るんです。アメリカの選手が出ないオリンピックなんか、中継する意味はないだろうって。
スガ：しかし、バッハ会長は17日に日本に来るんだぞ。いつ、中止だって言うんだね？
ユリ：バッハ会長には、日本は緊急事態宣言が延長されたからと、来日を延期させて、その間に、感染を少し抑えます。ポイントは第一波のときのように抑え過ぎないことです。それには完全封鎖、完全自粛が必要になるので財界から不満が出ますから。自然減に任せて、今年の3月に下火になったくらいの状態になったら、そのタイミングで「英断」を下すわけです。どっかの知事みたいに涙でも見せとけば、いかに苦渋の決断だったかと、あとはテレビや新聞に適当に美談にして報道させます。
スガ：まあ、相対的に傷口は深くならないかもしれないが、それも程度問題で、選挙で負けるのは確実だ。どっちにしても、私への非難は強まって党の総裁を降りろと言われるだろう。同じことじゃないか。
ユリ：そこで、誰が中止を言うかですが、都知事である私がIOCに中止要請の宣言をして、責任をとって知事を辞任すると言います。
スガ：なぬ？
ユリ：そして、今の憲法では政府の行うコロナ対策には限界があることが都知事として骨身にしみてわかった、「非常事態条項」の規定が絶対に必要だから、今後は憲法改正に尽力したいと言って、再び衆議院選挙に無所属で立候補します。
スガ：ばか、ばか、何を考えてるんだ。
ユリ：ついでに言えば、頃合いを見て自民党に復党します。２Fさんとは懇意にさせていただいておりますんで、「２F派」所属ということで。
スガ：あなたはそれでいいが、私の方には何のメリットもないではないか。
ユリ：いえいえ、そうでもありません。実は私と総理は国民のために極秘に何度も中止の相談をしていたんだとマスコミにリークします。国民の見えないところで別の選択肢も用意していたが、オリンピックを楽しみにしていた国民、とりわけアスリートのことを考えると、何とか開催して、思う存分活躍してもらいたいという思いでぎりぎりまで苦渋、難渋していたんだと。
スガ：それで……。
ユリ：私をだしに使って、コイケとともにぎりぎりまで悩みに悩んできたと、記者会見で一芝居うちます。私も逐一合いの手を入れて、スガ総理の苦悩ぶりを国民に伝えます。そうすれば、日本人は情にほだされるし、やっぱり、政権を野党に任せるのは…という話になって、ぎりぎり過半数くらいは守れると。
スガ：それで、いつ選挙をやるんだね？
ユリ：即刻解散ですよ。
スガ：バカを言いなさい。そんなことは公明党がうんと言わない。都議会議員選挙が終わるまでは無理だ。
ユリ：維新を使って、大阪みたいに対立候補を立てるぞって脅せばいいんですよ。
スガ：あれは大阪で維新が強いから何とかできたんじゃないか。全国規模じゃ無理だ。
ユリ：そんなこと言ってると、アベ前総理がまた動き出して、選挙に勝てる自民党総裁は私しかいないとか言い出しますわよ。
スガ：そうしたら、また、桜前夜祭の見積書か領収書のコピーかなんかをマスコミにリークして、へこませてやるから大丈夫だ。
ユリ：でも、ここは一気にやらないと。ピンチはチャンスですから……。
スガ：私はシモムラじゃないんだよ。とか何とか言って、あなた、政権を巻き込んで、体よく都知事の職を放り出し、衆院議員に戻って、次の次は自分が総理に、なんて腹じゃないのか？
ユリ：あら、そんなこと…。私はいつも民意を大切にしておりますから。みんなのユリコですのよ。
スガ：「政界渡り鳥」か「風見鶏」の間違いだろ。
ユリ：あら、そんな言い方されて…。スガ総理も、ご自身の次の選挙、安泰ではありませんことよ。
スガ：ん？ どういうことだ？
ユリ：私、次は、神奈川2区で立候補しようかと思っておりますの。
スガ：なにー！
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