ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

杉田水脈氏の動画を見て

 スポーツ新聞に載る社会関係の記事は、世論の動向を反映するものが多いので、わりと気にしながら見ています。昨日の東スポの記事に、自民党杉田水脈衆院議員が「デイリーWiLL」というYouTube番組で、アイヌ文化振興事業に公金不正流用疑惑があり、「流行語大賞にノミネートされてもよかったと思うんですけど、『公金チューチュー』……」などと発言したことに関する記事がありました(この動画は一週間前のものです)。東スポの記事では、この発言に対して「自民党として何の注意もしないのか」という、昨日16日の立憲民主党・長妻氏の発言が引用されていますが、先週の土曜から全国紙でもこの件は取り上げられていました。 
立憲・長妻政調会長「処分なしは信じられない」 アイヌ事業揶揄した杉田水脈氏の処遇に | 東スポWEB
杉田水脈氏、アイヌ事業関係者を「公金チューチュー」とやゆ 政務官辞任は「謝罪するのが嫌でやめた」:東京新聞 TOKYO Web
杉田水脈氏、保守系ユーチューブ番組でアイヌ事業関係者をやゆ | 毎日新聞

 だいたい人間、身内に甘くなるのは「人情」というものでしょうが、しかし、この人物の場合、「人情」というより「政治力学」、端的に言って、岸田首相や自民党による保守層への「機嫌とり」により守られているのだと。しかし、「機嫌」をとってもらっている側にしても、何度も何度もこういうことを繰り返して悦に入っている場合ではなく、中から一人や二人、こんなんじゃ嘆かわしいと言う人が現れてもよさそうなものだが……くらいに思っていたのです。しかし、問題の動画を見ていたら、「事態」はもっと深刻な感じもしました。
【杉田水脈】私を攻撃する「内なる敵」の正体【デイリーWiLL】 - YouTube
(※「発言」があったのは18分過ぎです)

 立場や世界観の違いは議論しても如何ともしがたい面があるので、ここでは棚上げして、「現実的」(政治的)スタンスだけを問題にします。杉田議員はこれまでの自身の言動を持ち出されて批判されるのがお嫌いのようですが、しかし、数が多いので一例だけあげれば、9年前に「男女平等は絶対に実現しえない反道徳の妄想だ」と衆院本会議で述べたことを、氏が間違いであったと認めたという話は寡聞にして知りません。動画中、自分は人権擁護のために活動していると話していたと思いますが、男女平等を否定する人が擁護する「人権」とは一体何なのか、日本の人はもとより国際社会でもとうてい理解される話ではないでしょう。
 動画では杉田議員を「自民党の良心」と持ち上げていて、本人もまんざらでない様子に見えました。けれど、その「良心」を国際社会に向けて発揮したら、おそらく「自民党」、ひいては「日本国」や「日本の人」の国際的評価は全般的に落ちていくだけでしょう。杉田氏は国会議員であり、そのコメントはたとえ一部分であっても、日本国の意見です。杉田氏を支持・擁護する人たちは、いや、それは国際社会の方が間違っている、杉田氏の言っていることの方が正しいんだ、と言うかもしれませんが、しかし、それでいいんだと思うか、それではよくないから「調整」する(折り合いをつける)のかでは大きな違いがあります。残念ながら、この動画を好意的に見ている人たちは、国際社会とのこの「落差」を「埋めていく」、「調整」する必要はないと考えている人が多いように思います。周りとの関係(付き合い)を一切抜きにしても国が成り立つなら、それでもいいのでしょうが、我々の国・日本国はそれでは立ちゆかない国です。
 もちろん、国際世論や世の風潮が常に正しいとは言えません。異議があるなら根拠を示し、説得力をもって発信していくことは大切です。しかし、独善的になるのはよくない。それは過去の歴史が教えてくれているとおりです。まさか国連を脱退するほどのことではないと思いますが、国際社会から孤立する国がどういう道を歩んでいくのか(あるいは実際に歩んでいるのか)、理解できない話ではないと思います。……いや、それでも、杉田氏は正しい、周囲からバッシングされても自身を貫き通していて素晴らしいと賞賛して、悦に入り、それに浸り続けるのでしょうか。



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