ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「俗世」は品格のないニュースに事欠きません

 先日叔母が亡くなり通夜に行ったのですが、最近は読経が済むと僧侶が挨拶というか、法話をすることが多くなってきた感じがします。話の内容はある程度定型化されているかも知れませんが、次の日(告別式)のこともあるし、参列者を前に何を話すのかは、なかなか悩ましいところがあると想像します。小生もむかしは職業柄、人前で話をする機会が、授業を含めて多かったのですが、学校などとちがって場が場です。それに、こういう局面では忌み言葉などもあります。聞いてる方に気づかれなければ聞き流されますが、仏法を説く者としては、たとえ相手の理解が足らないからといっても、品格を落とした話をするわけにはいかないでしょう。

 ……などと思いながら帰宅すると、「俗世」は品格のないニュースに事欠きません。昨日は3つほど、気になりました。
 まず、国会質疑で自らの新曲とディナーショーの宣伝発言をしたという中条きよし参院議員。「宣伝に聞こえてしまったのは、不適切で大変申し訳ない」などと定型化された釈明――「そういう意図はなかった」「本意ではない」「そのようにとられかねない」式の弁明をしていましたが、実際の国会質疑でどう言っていたかというと、

「もう時間だということなので最後になりますが、私の新曲が9月7日に出ております。杉本眞人の作曲で昭和の匂いのする『カサブランカ浪漫』という曲でございます。ぜひ、お聞きになりたい方はお買い上げください

 ……と見事なまでの宣伝をしています。これを宣伝と認めない「話法」には、毎度のことながら、やはり驚かされます。維新はこの部分を議事録から削除するよう求めたということですが、ジャーナリストの立岩陽一郎さんが言うように、これは削除などせず、「十字架」というか「負の記念碑」として残していく方が、日本の民主政治のためになると思いました。
立岩陽一郎氏 中条きよし氏の国会発言の議事録修正に反対「こんなバカな発言は残した方がいい」 | 東スポWEB
【会見詳報】維新の中条きよし参院議員が謝罪「宣伝に聞こえてしまったのは大変申し訳ない」「芸能界最後にして頑張る、のつもりで話した」国会質疑で『新曲とディナーショーを宣伝』発言 党は口頭厳重注意(MBSニュース) - Yahoo!ニュース

 中条議員の件は、「あそこまでやったんですから、どうせなら歌ってほしかったですね」(きっこさんの16日付Twitterより)と経済評論家の森永卓郎さんがラジオで揶揄したようですが、笑える要素がないこともありません。
https://twitter.com/kikko_no_blog/status/1592661992879554560

 しかし、次の杉田水脈・総務政務官の答弁は、失笑のレベルを超えています。
 参院政治倫理の確立及び選挙制度に関する特別委員会で立憲の小西洋之議員から、例の「生産性がない」と書いた記事を修正・撤回するかどうか、そのことだけを端的に答えてくださいと問われた杉田議員、修正・撤回には触れず、「今後とも差別のない社会の実現のため、しっかり努力をしてまいります」と同じ釈明を繰り返します。訊く方も執拗ですが、答える方はそれに輪をかけて執拗(しつこい)。おまけに、質問に答えていないので、しっかりと答えさせるべき、と言われた議長役の委員長は「答えてるでしょ、ちゃんと!」と驚きの返しです。委員長のむごさもさることながら、ここにあるのはもはやズラシ答弁でさえなく、時間の無駄というか、単に答えないという、人と言葉を愚弄する姿勢のみです。改めて、政務官がこういう人でいいのかと思います。辞任ドミノが続くとしたら、次の次は、この人以外には考えられないという思いが強くします。
https://twitter.com/emil418/status/1592800603797073920

 ところが、この杉田氏にしても、答弁上は一応「配慮を欠いた表現をしたことは真摯に反省し」と「反省」を口にしています(氏の場合、「反省」という単語を口にすること自体が、逆に「失言」のような気がしますが)。
 それからすると、続く3人目は、さらにその上を行っています。政治家ではないので、最初は取り上げるつもりはなかったのですが、この人は、伊藤詩織さんを中傷するイラストなどをTweetし、動画の中では同じイラストを掲げて伊藤さんを嘲笑するなどしたことで、伊藤さんから名誉毀損で訴えられた漫画家です。先日地裁に続き高裁でも敗訴し、賠償額を増額する判決が出されたところですが、これで伊藤さんに公式に謝罪するのかと思いきや、「お仲間」の杉田氏が上告したからか、このたび、「国民の表現の自由を守るために!!最高裁に上告すると、聞き捨てならないことを言っています(1・2審ではイラストは伊藤さんを表現したものではない、だから名誉毀損ではない、と言っていたはずで、「表現の自由」と言ってましたかね)。しかも、(ついては国民の「自由」のためにやるんだから)裁判費用の支援を求めるのだそうです。上塗りしすぎて、もう塗る恥がありません。
#はすみとしこ - Twitter Search / Twitter

 腹いせに過ぎない上告であっても、世の中は広いので、中には付き合ってくれる人がいるかもしれませんが、しかし、「表現の自由」の意味を知らず、ゆえに、そんなことはどうでもいいと思っているのに、「国民のために」などと平気で口にする人――この漫画家は伊藤さんと関係のない「あいちトリエンナーレ 表現の不自由展」を持ち出して、伊藤さんの「仲間たち」と書いていますが、そのこじつけにならえば、この手の誹謗中傷をのさばらせてきたのが、安倍政権時代の約10年のこの国の姿だったと言っても全然言いすぎではないでしょう(今も残存しています)。

 世の中には他にもっと差し迫った大問題があり、エネルギーのかけどころは別だと思いつつも、それぞれの持ち場で、こうした下品な事例を一つひとつ潰していくというか、ダメだと言っていくことも大切なのだと思います。「俗世」ゆえにでしょうか。



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