今年の冬は寒い。先日雪が降ったからそう思うのではなく、備忘録代わりにつけている日誌の今月の最低気温を見ると、
1日 0℃
2日 -2℃
3日 0℃
4日 -1℃
5日 2℃
6日 0℃
7日 -3℃
8日 0℃
9日 -1℃
で、平均すると-0.55℃である。小生の居住地は比較的海岸に近い。暖かな千葉県で内陸部でもないのに最低気温マイナスの日が続くのは珍しいと思う。札幌の知人からは皮肉のひとつも飛んできそうだが…(笑)。
地球温暖化は右肩上がりに持続的に温度上昇するわけではなく、地球本体や宇宙の?エネルギーのやりとりを通じて進んでいくとすれば、暖かさと寒さのジグサグはあるのだろう。とはいえ、基本的に温暖化が頭にあるから、庭の紅梅の小さな蕾が余計赤くなったように見えてしまう。
昨日気候変動に関わる記事をいくつか読んだ。だいたいが危惧や警告を発信する記事だが、温暖化による環境変化で生物分布が変化していることを改めて認識した。
1月9日付の毎日新聞の記事には、生物分布の変化についてこうある。
相模湾がトロピカルな海に? 陸でも生物分布に変化、温暖化影響か | 毎日新聞
「いよいよトロピカルな(熱帯のような)海になってきたな」。山田(和彦 観音崎自然博物館・学芸部長)さんは約40年前から三浦半島西岸で定置網にかかった魚種を記録し、約20年前からは浅瀬で潜水調査もしてきた。近年、熱帯や亜熱帯にすむ生物が増え、同博物館が19~21年に相模湾で確認しただけでも、「北限」が塗り替えられた魚や貝類は約20種にのぼる。
山田さんによると、黒潮の影響で以前から相模湾には南の生物が偶然たどりつくことはよくあった。17年8月に始まった黒潮の大蛇行の影響も大きいとみるが、「近年確認されるのは、種類も個体数も『たまたま』では説明がつかないほど多い。大蛇行が収束した後も続くようであれば、温暖化の影響がより深刻だということになる。今後数年の調査が重要だ」と話す。…
気象庁によると、九州南岸から本州南岸の冬季の海水温は、過去100年間で約1・08~1・46度上昇したという。熱帯や亜熱帯の魚は水温が15度付近を下回ると生息するのが難しくなるが、1年を通じてこれを下回らない海域が増えているようだ。津田准教授は「分布域が変わると、近い種同士や、同じ種でも遺伝的に異なる集団の間で交雑する可能性がある。餌や生息場所の競合で絶滅に追いやられる種や地域集団が出てくることもありえるのではないか」と指摘する。
漁業では既に影響が顕在化している。サンマやスルメイカなどは近年、記録的な不漁が続いているが、温暖化がその一因とされる。
水産庁の「不漁問題に関する検討会」の報告書によると、サンマの漁獲量は1980年代は年20万トン以上だったが、20年は約3万トンにまで落ち込んだ。温暖化などに伴う海況の変化で、分布が沖合に偏るようになった。沖合域は餌となる動物プランクトンが近海よりも少なく、資源量減少につながっていると考えられる。スルメイカは01年の30万トンから最近は4万トン台に減少。水温上昇で産卵可能海域が縮小していることなどが指摘される。
陸上ではさらに深刻な事態が懸念されている。
琉球大の久保田康裕教授(マクロ生態学)は、日本列島の生物分布の記録を分析し、1980年代と2010年代を比較。分布の北限や南限などの変化を調べた。脊椎(せきつい)動物のうち、鳥類は平均で北限が緯度にして0・78度分(距離に換算して約85キロ)北上しており、気温の上昇に伴い、分布を変化させている傾向が分かった。
久保田教授によると、日本の年平均気温を10年単位で比較すると、10年代は比較的寒冷だった80年代より1・08度高い。これは距離に換算すると南北約120キロの気温差に相当するという。昆虫類のうち、チョウやトンボなどは分布域の変化が確認されており、「鳥類など移動能力の高い生物は、確実に分布を変化させている」とする。
一方、哺乳類、爬虫(はちゅう)類、両生類、淡水魚類の分布域はほとんど変化しておらず、解析した種のうち95%以上は北上傾向が確認できなかった。久保田教授は「気温が上昇しても脊椎動物の多くが分布を変えられていないという事実は、移動能力が低いとさらに温暖化が進行した場合に対応するのが難しいかもしれないことを示している。また海洋生物と異なり、陸は海で分断されているため、陸上生物は簡単に分布を変化させられない」……「日本のような島国の場合、固有種の多くが温暖化の進行で絶滅する可能性がある。生物多様性の大切さを、節目の年にもう一度考えてほしい」と話す。
昆虫の分布域の変化については、1月9日付「PRESIDENT Online」に宮竹貴久氏(岡山大学)のミカンコミバエ再侵入についての記事がある。
「日本でミカンが食べられなくなる日」コロナ禍に進む"知られざる重大危機" 侵入生物に「国境」はない… | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
根絶したはずの害虫が復活
ミカンコミバエは、メスが果物や野菜に卵を産みつけ、幼虫が実などを食べて腐らせる。日本では1919年に沖縄本島で初めて確認されて農作物に重大な被害を与える「有害動物」に指定された。それから約70年、国と地方自治体が長年駆除・防除に取り組み、1986年になってようやく「根絶宣言」が出されるに至った。
ところが、である。
2020年になって、鹿児島で84匹、熊本で5匹、宮崎で1匹のミカンコミバエのオスがトラップで発見された。さらに2021年5月に長崎・熊本・鹿児島でそれぞれ5匹、18匹、4匹のオスが発見されたのを皮切りに、1年間で福岡7匹、佐賀4匹、長崎128匹、熊本41匹、鹿児島23匹、沖縄311匹と、合計514匹(2021年12月13日時点の植物防疫所ウェブサイトより)のオス成虫がトラップされたのである。
一般の人はピンと来ないかもしれないが、はっきり言って「異常な事態」だ。
長崎県と鹿児島県のウェブサイトでは、果実から幼虫が発見されたと公表している。これはつまり、国内での繁殖を許したことになる。公表はされていないが、トラップされたオス成虫の数の多さは、ミカンコミバエが繁殖していた可能性を示唆している。
侵入害虫の専門家として僕が警告を発したいのは“この点”だ。
ミカンが食べられなくなる?
スーパーで買ってきた「ミカン」の皮をむいて家族で食べようとしたところ、子供たちが「ミカンの房の中に白くて小さなものが動いているよ」と言う。眼鏡をかけてよく見るとそれはウジ虫、つまりハエの幼虫だった。この出来事がトラウマとなり、子供たちは以来、ミカンを食べられなくなった──。
実はこれは、1986年まで日本の南西諸島でありふれた光景だった。そんな“過去の亡霊”がよみがえって日本全体に広がる危機に、いま僕たちはさらされているのである。
ミカンの房からウジ虫が湧く日常はなんとしても回避したい。前述のとおり、ミカンコミバエは幼虫がフルーツや野菜を食べて加害する大害虫であるが、近年、世界的にその生息域の拡大が確認されている。
わが国でも、ここ数年、このハエのオス成虫が九州で再発見されるようになってきているのだが、この脅威は、九州以外の地域に住む人には広く知れ渡っていない。
宮竹氏の記事は、これまでミカンコミバエ根絶のために培われてきたノウハウや人付き合いの絆(チームワーク)は、一度途切れてしまうと再生させるのが大変だというところに話の重点がある。そこまでは引用していないので、念のため。
それにしても、一方で、何もしないと「絶滅」するという記事を読み、他方で、何もしないと「根絶」できない(繁殖する)という記事を読むと、ダブルバインドということもないが、何か不思議な気分になり、どちらにしても人間の都合なのだと思ってしまう。それでも、なるべく次世代に負の遺産を残さないようにという一点だけで気を取り直す。
1月9日付毎日新聞の長谷川眞理子氏(総合研究大学)の記事・「時代の風」にも共感するが、小生が引用すると、お茶を濁した感じが否めない。でも、末尾だけ引用させていただく。
時代の風:加速する種の絶滅 決断の先送り、やめよう=長谷川眞理子・総合研究大学院大学長 | 毎日新聞
……世界中で開発が行われ、人々がより快適な生活を送れるように環境が改変されていく中、たくさんの種が絶滅している。でも、その危険性については、まだ一般社会では重要視されていない。見知らぬ虫やら植物やらがいなくなっても、その場ではなんの実害も感じられないのは事実だ。
実害が感じられるようになったときは、私たち人類も含めて全員がおしまいだ、ということなのだが、それを想像するのは難しい。
名も知らぬクモやコケが絶滅してもそれが何だと言うのか。しかし、そうやって種の絶滅を続けていくと、自然界のバランスは、あるところでがらっと変わる。
私たちは、地質学的時代としてはとても短い間に、もうすでに莫大(ばくだい)な数の種を絶滅させてしまった。環境の変化とともに種が絶滅するのは、いずれにせよ自然現象だという意見もあるが、それは絶滅の速度を勘定に入れていない。近年のヒトによる他種の絶滅速度は、1日当たりで100種を超え、1年間では4万種が消えている。こんなことは今までにはなかった。
先の見えない時代だとは、よく言われる。しかし、今がとくに先が見えないわけではない。何をしなければ世界がだめになるのかは、もう事実としては明らかだ。あとは、どういう世界を作るかを決め、それに向かって困難を一つずつつぶしていく決意が必要なだけなのではないか。「先の見えない時代」という合言葉のもと、決断を先送りにするのはやめにしよう。
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