ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「外国離れ」と「日本離れ」

 「英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い」という記事を読んだ。タイトルで言う日本人の英語力と外国嫌いがどれほど相関するかはわからない(話のとっかかりに思える)が、今、外国人識者が日本という国をどう見ているのか、英語力78位とか「一流」「二流」といった他との比較はともかく、この国にはびこる本質的問題が垣間見えるように感じた。

 『フランス・ジャポン・エコー』の編集長で、フランスの「フィガロ」紙の東京特派員というレジス・アルノー氏は、12月10日付「東洋経済」の記事で、空港で8時間待たされることが日常茶飯事となっている非効率的な日本の入国審査のことや、南アフリカでのオミクロン株感染者の発覚後、外国人の新規入国を原則停止する一方、日本国民の帰国は許容するという日本の入国措置の差別性などについて述べた後、こう続ける。

英語力「112カ国中78位」の日本で広がる外国嫌い | 政策 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 日本の「外国離れ」はあらゆる場面で見られる。
 例えば、政治家たちはかつてより外国人を軽視している。筆者が来日した1995年当時、有力な国会議員のスタッフには、若い外国人研修生がおり、外国からの情報を議員に提供するなどしていた。それは政治家たちが自らを世界に開かれた存在であると示す手段でもあった。そんな政治家たちは「国際派」と冗談で呼ばれていた。
「しかし、今では外国人研修生はいなくなってしまった。そんなことをしたら、その議員は日本人よりも外国人を優遇しているというシグナルを送ることになってしまうからだ」と、あるアメリカ人ロビイストは語る。
 今や岸田首相は、野党からも、外国人を日本から締め出すためにより一層の努力をするように迫られている。そして日本国民は90%の確率で彼の施策を支持している。私自身、国境をもっと開くことを支持するこのような記事を書くことで、多くの批判を受けるだろう。しかしこうした政策をとることによって日本が強くなるとは到底思えない。
 金融業界でも「孤立主義」が炸裂している。東京や福岡、そして大阪も「金融ハブ」を標榜しているが、上述の通り日本には英語を話せる人材が不足しているうえ、不透明な規制があり、新しい考えの受け入れに消極的で、キャピタルゲインへの厳しい課税があるにもかかわらず、こうした問題を解決するための具体的な努力をしていない。こうした中、海外の金融機関は東京を去り、シンガポールや韓国に拠点を置き始めている。

オフィスの新設場所に日本は選ばない
 こうした日本の状況に呼応してか、海外からの日本への関心も低下している。2006年、当時の小泉純一郎首相は、2011年までにFDI(海外直接投資)をGDP国内総生産)の5%に引き上げることを公約した。その15年後、FDIは4.7%とOECD加盟国の中で最低となっている。2番目に低い韓国は、日本の3倍である。3位の欧州連合EU)は75%で日本の15倍だ。767%のルクセンブルグは日本の163倍である。
 日本企業の買収に、いまだに興味を持つ外国企業もある。後継者がいない企業においては、これは一生に一度のチャンスとも言える。「しかし日本企業は、外国企業に買収される位なら死ぬほうを好みがちだ」と、フランスの監査法人の支社長は嘆く。
 今や外国企業は工場やオフィスの設立場所を決める際に、日本を迂回するようになっている。中には北東アジアの本部を日本から韓国に移した企業もある。日本はコストが高く、労働力が減少しているため、外国企業はますます日本に生産拠点を置く意味がなくなってきているのだ。
 かつて国際企業の若い幹部候補たちは、キャリアアップの足がかりとして日本でのポジションを切望していた。が、今はもう違う。日本におけるほとんどの市場が縮小しているため、日本は高齢の幹部が優雅にキャリアを終えるために定年前に甘い汁を吸える赴任地となっている。
 中にはこうした駐在員の赴任期間後に後任がこず、報酬の安い現地幹部(もちろん日本人である)に仕事を任せてしまう場合もある。こうした状態が続けば、日本人の現地スタッフは外国人とかかわる意欲や能力を失ってしまう。実際、「ソウルの韓国人社員はみな私より英語ができる」とあるフランス大手企業の日本支社長は打ち明ける。
 「日本離れ」は外交面でも顕著である。フランス外務省は、かつて最高の外交官を派遣していた。 私が来日した1995年以降、外務省のトップ官僚である「事務局長」の9人中4人が元駐日大使だった。

マクロン大統領の悲観的な見方
 しかし、フランスにとって日本は今や、二流の国になっている。真の意味での国賓訪問は、8年前の2013年に当時のフランソワ・オランド仏大統領が訪日したのが最後だ。
 エマニュエル・マクロン大統領は、フランスが開催する2024年パリ大会を見据えて、8月に東京オリンピックの開会式のために訪日したが、ある関係者によると、菅政権の硬直性とどんなテーマでも妥協する意思のないことに愕然としたという。マクロン大統領はすぐには再訪日しないだろう。

 日本は、東京オリンピックを開催したことで、世界の中心にい続けられると思っているかもしれない。しかし、1964年に東京で開催された壮大で革新的な大会のような重要性は、オリンピックにはない。むしろ、日本政府がオリンピックを重要視していることは、日本が現在の世界を誤解していることの表れでもある。
 日本政府はまた、2025年に大阪で開催される万博も桁外れに重要視している。岸田政権では、この問題を担当する国際博覧会担当相がいるほどだ。しかし、世界的な博覧会は、今や開催国以外では誰も気にとめないローカルなイベントとなっている。日本人で誰が、現在ドバイが万博を開催していることを知っているというだろうか。





↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村