ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

東京五輪 撤退できない狂気 

 延長されていた首都圏の非常事態宣言は3月21日に解除される見込みだという。専門家も指摘しているように、このまま続けていてもこれ以上感染者が減る見通しがない=やっても意味がないから、ということらしい(やるべきことははっきりしているのに、政府がやらないだけだが……)。この間、政府の指示に従い身を削る思いで協力してきた人々、業者にとっては「一体何だったのか!」という思いが強い。総理大臣は国民にどういう説明をするのだろうか? すでに前政権の時代から政府の言うことは信用できなくなっているが、この非常事態に、言うとおりにしていると命を落としかねない政府というのは、国民には痛恨過ぎる。

 非常事態宣言が解除されると25日から福島をスタートに聖火リレーが始まることになっている。3月の半ばには「英断」が下されると思っていたが甘かった。政府もIOCも、その無責任さとカネの亡者ぶりは想像を越えていた。肝心の選手はどうなるのだろうか?(というか、まだ代表選考さえままならないのに……)。巷では聖火ランナーの辞退、ボランティアの辞退が続出するなど、先行き不透明な状況に、実際的な労力と資金を提供する側の多くは悲観的だ。とりわけスポンサー企業にとっては、このまま五輪を強行されてもほとんどメリットがないのに、金だけ巻き上げられるかたちになりかねないのである。

3月14日付Yahooニュースに「週刊FLASH」2021年3月23日号の記事がある。

東京五輪開催を支持する? 大企業2000社への調査に「お金はいいから逃げ出したい」の“本音”爆発(SmartFLASH) - Yahoo!ニュース

 それによると、
 2月に緊急事態宣言が延長され、大手広告代理店が緊急アンケートを実施した。14歳以上のテレビ視聴者・男女各900人/合計1800人に、「東京オリンピックパラリンピックの開催を支持しますか?」と質問したところ、「積極的支持」が7.5%。無観客や一部開催など、「条件つきでの開催支持」が9.8%で、両者を合わせても「開催支持」は2割にも満たず、「開催反対」が70.3%にものぼったという。
 この結果を受け、大手広告代理店は約2000社に及ぶ大手企業を対象に調査を実施したが、部分開催や無観客での開催などの「条件的支持」を含めても、東京五輪の開催を支持する回答は、全体でわずか12.7%なのに対して、「条件的不支持」(再延期や東京以外での開催)と「全面的不支持」の合計は65%となり、前出の一般視聴者を対象とした調査結果とほぼ変わらなかった
、という。

 各企業の担当者のコメントも厳しい。「全面的不支持」の理由から拾うと、

「社内で『開催』と『中止』で、それぞれの場合の損失額をシミュレーションしたのですが、『仮に開催されたとしても、広告効果は期待できない』という結果が出ました。今まで多額のスポンサー料を支払ってきましたが、どうやらドブに捨てた格好です。
 コロナ禍で弊社も業績の落ち込みが酷く、もはや五輪を支援するなどの “夢物語” は、口にするのもはばかられる状況。本音を言えば、『逃げ出したい』です」
(製造業の担当)

「絶対に、やめてほしい。現状、すでに医療は逼迫している状態ですし、あと数カ月で一気に好転するとは思えません。当病院のある施設は、五輪会場などからも近く、もしも会場で感染者でも出たら……。それを想像するだけでも、不安でたまりません。
 はっきり言って、政府や東京都の対応には不満だらけですし、真夏の酷暑にパラリンピックだなんて……」
(大手医療施設の担当)

「五輪に関わるのは子供のころからの夢でしたが、現状では開催は難しいでしょうね。社内的にも、森さんの発言で一気に冷めた感じは否めません。橋本聖子会長は現実を受け止めて、早く指針を示すべきだと思います」
(メーカーの担当)

「コロナさえなければ、五輪開催時期は予約で満室のはずでしたが、軒並みキャンセルで大打撃です。いくつものホテルが五輪をあてに建設され、同じ憂き目に遭っています。
 再延期になっても感染が収まらない状況では、開催に反対です。従業員は感染対策に神経をすり減らしていますし、このような状況で、まだ開催という夢を見ているのは、はっきり言って迷惑です」
(ホテルの担当)


 記事の中にパラリンピック出場選手の健康を気遣う内容があったが、これは小生も前から気になっていた。オリンピックの後に無事にパラリンピックをやれて東京五輪は「完結」するはずだが、一般のオリンピック選手よりも健康面でのケアが必要なパラリンピックの選手に対する配慮が十分でない感じをもっていたからだ。

健康器具メーカーの担当者は、パラリンピックの選手の体調を心配する。
「当社はどちらかというと、パラリンピックのサポートに重点を置いています。世間の皆さんの議論は、そのほとんどが、オリンピックの開催についてですよね。
 パラリンピックの選手のなかには、難しい基礎疾患を抱えている方もいらっしゃいます。コロナが蔓延している東京で、“平和の祭典” なんて自殺行為に等しいと思います」
 同じく、大手金融機関の担当者もパラリンピアンを気にかける。
「正直言って、開催は無理だと思っています。弊社はパラリンピアンを応援する立場を担わせていただいているのですが、先日ある選手とリモート会議をした際に、コロナ禍での体調管理を懸念する話をされていました。“勇気ある撤退” も、考えるべきではないでしょうか」

<中略>
「条件的不支持」を表明した企業の担当者の声を列挙しよう。まずは、大会スポンサーに名を連ねる、新聞社の担当者。
「会社の立場上は『条件的支持』か、せめて『どちらともいえない』と回答すべきなのでしょう。ただし、現実的には無理だと思います。
 弊社でも、意見広告や社説をいつ出すかを具体的に検討しています。ワクチンが行き渡っても、厳しいものは厳しい。知人の外国人ジャーナリストは、『日本はクレイジーだ』とまで言っています。今の東京での開催は危険です。とくにハンデのあるパラアスリートには酷です」


 政府が「クレイジー」なのは国民全般が「クレイジー」だからとみなされる。民主社会の政府は国民の負託を受けて成立しているのだから、日本だけ負託してませんというわけにはいかない。しかも、これは日本の問題であっても日本だけの問題にとどまらない。原発事故と同じで、日本の「クレイジー」さが国境を越えて世界の災厄になりかねないのである。




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