ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

続 菅野さんのハンスト 本人談

 10月2日夜19:00から官邸前でハンストを決行している菅野完(たもつ)さん池田香代子が10月18日日曜日の16:00頃にインタヴューしている。
 以下、デモクラシータイムスの池田香代子の世界を変える100人の働き人 43人目】の動画から起こしたもの。

 少しは安心したが、池田さんのおっしゃるとおり、最終的には医者の指示を聞いてほしいのだけれども……。

著述家菅野完さんはなぜ2週間超のハンストを続けるのか【池田香代子の世界を変える100人の働き人 43人目】 - YouTube

池田:どういうハンストのスタイルなんですか?
菅野:水は飲みます。塩をなめます。経口補水液を1日に500から1,000ミリリットルくらい。あとコーヒーは飲みます。それだけです。
池田:タバコはどうしてます?
菅野:吸ってます。最初の3日間オレンジジュースを飲んでいたんです。ガンジーがオレンジジュースを飲んでいたって聞いたので。でもオレンジジュースを飲むと血糖値がバッタバッタ(上下変動)するので、体がしんどいんです。でも、オレンジジュースを飲むのやめたらすごく元気になりました。
池田:今日は何かほんとに気力が充実なさっているようで……。
菅野:ふだんより元気なんですよ。お酒飲まないし、おいしいものを食べないから。(笑)
池田:お医者さんのチェックは受けてるんですか?
菅野:はい。先週の金曜日(16日)に血液検査をしてもらったんです。尿酸値とか血中タンパクとか……。血液は飢餓状態にあることを示しているらしいんですが、まだがんばるんだったらがんばれるんじゃない、というお医者さんの見解で。また明日(19日)月曜日なんで病院行きますけど。

<中略>

池田ハンガーストライキというのは究極の非暴力の暴力的抗議と思うんですが……。
菅野:僕はハンガーストライキは暴力だと思ってます。ただ、その暴力の矛先が自分だという話で……。
池田:なぜ、そのような抗議の仕方を採用されたんですか?
菅野:端的に言うと、官邸が行っていることが語の全き意味での暴力だからです。
池田:暴力に対しては暴力、ということですか?
菅野ガンジーの非暴力について、日本人はナイーヴだから勘違いしていて、殴られても黙っているというのが「非暴力」ではないんです。ガンジーの言う「非暴力」は、イギリスによるインド支配の本質が暴力だから、その暴力を否定するというんだけれど、向こうの暴力をこちらが進んで受けに行って、あいつらの目の前で脳みそとか大腸を飛び散らしながらわざと死んでやるというのが「非暴力」なんです。僕も同じスタイルを採用してるんです。相手を殴ってはいけないとかいうのは全然「非暴力」ではないですね。暴力を否定するのが暴力で、僕がやってることは、向こうの暴力を否定するために自分に暴力を向けているということです。
池田:菅野さんはいつもはことばで勝負するんだけれど、この場合、ことばで勝負するのは無意味だと……。
菅野:「無意味」というか、間に合わないというか……。安倍政権は半年前に黒川(東京高検)検事長検事総長にしようとしましたが、それは検察庁法違反なんですね。それを安倍政権は理解していたので、あとづけでNGなんだけど、検察庁法を改正しようとした。今回の(日本学術会議の会員任命についての)人事介入も法律違反なんだけども、法改正さえしようとしない。
池田:今回の問題の顛末を解説していただけますか?
菅野:6人が任命拒否されたことが違法だと言う人がいます。確かに違法です。なぜなら、日本学術会議法は総理大臣の裁量による人事権を認めていません。総理大臣がもっている人事権は羈束(きそく)性のあるものです。つまり言われた通りにするしかない。たとえば他の組織だったら、原子力規制員会の人事とか、カジノ委員会の人事とかがそれに当たるんですけど、第三者委員会が推薦してくる人物を無批判に受け入れなさいよ、というのが法の理屈です。だから、内閣総理大臣に人事権を認めている法律っていっぱいあるんですけど、行政用語でいう「三条委員会」に近い委員会の法律は「指名(推薦)に基づき」と書いてあるんですよ。他は「内閣総理大臣が任命す」ですけど……。だから、それが気に食わないんであれば、法律を変えてから人事介入しますよ、というならまだいいですよ。でも、法律を変えていないですよね。でも、それで何が悪いんだと、かつ、説明する必要はないって言ってるわけで、これはもう完全に独裁ですよ。
 法律なんて関係ない、俺はやりたいようにやるんだっていう内閣総理大臣がいる。それで言論で対決するって、逆に、どうやってやるんですかって聞きたいですよ。

池田:菅野さんは、これは人類社会に対する挑戦という強い言葉で今回のことを非難されている。今おっしゃった羈束性は82年の中曽根答弁で確定されていますよね。
菅野:僕が人類社会への挑戦だって言ったことには2つあって。1つは、中国共産党が香港を弾圧するときも、まずあらかじめ弾圧のための法律を用意しました。ナチス・ドイツヒトラーが政権をとったときも、一応は法改正しました。しかし、菅義偉は、法なんかどうでもいいって言ってのけた初めての先進国の首脳だと思うんです。こんなことが許せるのか。歴史上いまだかつてない首脳の在り方というのが1つめ。
 それから、もうひとつは、内閣総理大臣ごときが国立アカデミーの人事に介入するということを臆面もなくできるなんて、無教養、下品、粗野、馬鹿、こういう言葉以外追い付かない。

池田菅首相はまだ理由には言及していません。例のグループインタヴューという異様なマスメディアの記者たちのやり取りで、「総合的・俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と言いましたが、それだけで、なぜ6人を外さなければ、「総合的云々が確保できないのか」というところが、私たちは一番聞きたいところなんですけども……。
菅野:池田さんの番組をご覧になっているようなリベラルな方々が、6人を外した理由は「反政権」だからということをよくおっしゃるんですけど、全くそうじゃないんですよ。確かに、6人の中には反政権的な活動を安倍政権の時にやられた方もいらっしゃいます。しかし、選ばれた99人の中にもいるんですよ。だから、基準なんてないんですよ。
池田:基準をあいまいにして見せしめ(になる者)を選ぶ、恐怖政治というか……。
菅野:端的に言うと、モラルハラスメントなんですよ。支配したい、と。DV夫がよくやることですよ。何の基準もなくいきなり怒り出す。あれと全く同じですよ。…………<中略>……。18世紀以降のいわゆる西側先進各国がトライアル&エラーで議会制民主主義であるとか、議院内閣制であるとか、三権分立であるとかを試して洗練してきたわけで、その伝統、200年、300年かけ(てつくってき)た人類の英知の流れの先頭に先進7か国というのはいるはずなんです。その先進7か国の義務というのは、人類社会に対して、人文科学的に、社会科学的に考えるとこれがベターな答えだというのを指し示す、それが人類社会に対する責務だと思うんですけど、完全に放棄してますよね。教養がないから、この人たちは。僕はそれが許せないんですね。だから、人類社会に対する挑戦だって言ってるんです。

<中略>

池田:昨日は奇しくも中曽根元総理の合同葬で。
菅野:昨日車列が前を通りましたよ。ずっと中指立ててたけど。
池田:全国の(国立)大学に弔意を示すように通達が出されました。80いくつある大学のうち、50何校かが従ったらしいんですけど……。
菅野:まあ、いいんじゃないですか。
池田:でも、それも学問領域に対する権力行使で……。
菅野:それをわかってやっているんでしょう、受け入れた側はね。このままほっとけば国立大学の学長人事も文科相が決めるぞって言い出しかねないですよね。それでもいいと思ってるんだと思いますよ、日本の学者は。
池田:すでにいくつもの国立系の学長ポストは左遷ポストになって……。
菅野:はい、なってますよね、事実上、天下りポストにね。
池田:そういう人たちは中央官庁にいい顔をしたいでしょうから、弔意を示せと言ってきたら、それに従うと。
菅野:それは官僚が天下りするからではなくて、これは日本学術界および学術会議への批判ですけど、50年代60年代の日本学術会議は端的に言うと、共産党の支配の下にあったみたいな側面もあったわけじゃないですか。そういうゆがんだ姿勢が日本学術会議にもあったのは事実ですよ。この間、会長が日和ってましたけど、あんなもんは名誉ポストみたいになっていて、10億ぽっちの予算もらっていても誰も文句言ってこなかったんでしょ、今まで。10億なんてあるかないかの予算ですよ。半分は職員の給与で消えて、年末になったら先生方、日本学術会議の仕事で出張してるのに、交通費は自腹でお願いしますね、なんて言われる予算しかもらってないわけじゃないですか。それでもこれまで文句を言ってこなかったのは、先生方のご人徳が高いからということではなくて、日本の学術界全体が東京大学を頂点とするヒエラルキーの中で、学術的としてではなく、人事的に、問題を起こさず、どうやって生き残って、そのヒエラルキーの上に上っていくかというようなことしか考えていない奴が、人文社会科学分野だけでなく自然科学の分野にも多いから、今みたいな体たらくになっていたわけで、10年20年前からこうなるのはわかってたんです。ちゃんと闘う先生が多かったら、僕、こんなところで2週間もハンストなんかしてないですよ。

<中略>

菅野:大変申し訳ないけれども、日本のリベラルが運動の仕方を忘れた、というか、Twitterで何か議論することが運動だ、みたいなね。呼び掛けて音楽流してデモするのが運動だ、とかね。ちょっとぬるま湯につかり過ぎてるし、国家権力が牙をむいてきたときにどう立ち居ふるまうか、忘れてる気がするんです。本来であれば、社会的なカナリアとして最前線にいるはずの第1列、第2列ですね、そこにいるはずのもの書きや学者ですね。その類であればあるほど、第5列、第6列に下がってるんですね。
池田:それでもいろんな学会とか大学有志とかが声明を出していますが、そういうのはどう思われますか?
菅野:それこそ、滝川事件のときの法学者と比べてどう思いますか?
池田:そうねえ、職を投げうちはしないですよね。
菅野:いろいろな考え方があると思うんですよ。持ち場を放棄しない、陣地は守る、だから辞めない。それは考え方だと思いますね。向こうは人事に介入するよって言った以上、それは僕は意味のない抵抗だと思います。

池田:……夜は、最近は……?
菅野:台風の時と雨の時はホテルに寝るようにしています。それは自分が雨に濡れるのが嫌だからではなくて、こうやって見えるように、(僕を)見守るために、呼び掛けたわけじゃないですよ、こうやって来てくれる人がいるんですよ。今もうここに3人いるでしょ、で、そこにプロテスターが3人いて、今はいないけどもう一人いて……。
池田:たくさんの人が歩道の反対側に座っていらして、こうやって過ごしていらっしゃるんですね。
菅野:僕はここでふだんは寝袋で寝てるんですけど、雨に濡れようがなんだろうが、僕は好きでやってるんだからいいけど、見守ってくれる人がね、夜中とか来てくれるんですよ。申し訳ないじゃないですか。僕がここにいないと来ないわけで。だから、いなくなった方がいいかなあと思って。
池田:さっきもママチャリを飛ばして下北沢から、女性が……。
菅野:そう、コーヒーを届けに来てくれたんです。
池田:ねえ。で、すぐに帰っちゃいましたね。
菅野:そう、暗くなる前に帰んなきゃいけないって言ってね(笑)。
池田:心強いですよね。
菅野:勘違いされると困るんですが、僕は自分自身で、菅野完は10月2日から官邸前でハンストに入ってまーす、今こんな状態でーすって、宣伝した事実は一切ないです。もちろん、フェイスブックやインスタグラムにいろんなことを書いてますが、それは事後報告。今日こんなことがありましたっていうことだけ。ただ、それを他の人がいろんなところで書いてくれたりして、僕は呼び掛けてもないのに、あそこに今スタンディング抗議している人がいますよね、3人、官邸前で。そういう人がどんどん増えてきているってことは、すごく心強いですよね。呼びかけて、さあ、今日、抗議なんて古臭い、パーティーしようぜっていう人いますけど、そんなんじゃないよ、と。まあそれも別にいい、否定しません、どんどんおやりになればいいと思いますけど、そうやって群れなくても、独立した個人として自分の意志で抗議をできる人が一人でも増えていくというのはうれしいですよね。(指さして)あの人たちが格好いいのは、僕にも挨拶しないんですよ。
池田:ああ、そうなんですか。先ほど若い男性にインタヴューしたら、菅野さんには敬意を表するけど、自分は自分でここでやる、というお話でした。
菅野:そう。格好良くないですか、そっちの方が……。彼、彼女たちは、僕にも挨拶しないし、相互にも挨拶しないし、世間話さえしない。勝手に一人で来て、勝手に一人で帰って、警察とケンカして帰っていく、一人ひとりが。……ああいう人たちが(いるから)、僕、くじけそうになったとき、もう一度ファイティングポーズをもう一回とれる姿になれますよね。

池田:最後に何か言い残したこと、言いそびれたことがありますか?
菅野:僕はハンストの目的の一つとして、当然6人の任命拒否撤回ということは言ってますけど、あともうひとつは、学者と言論人が本気で闘うまでやり続けると言いました。しかし、副次的ながら、学者と言論人に対するハッパというのは、おそらく無理だろうな、と。シケた炭にはいくら火をつけようとしても火はつかないですよ。おそらく無理だろうけど、そこで無理と言っておとなの判断で放棄したら、全員がね、おそらくもう誤ったコースを歩み出した日本の後世の歴史家に申し訳が立たない。1933年の日本には治安維持法等々、特高警察等々がありながら闘った学者・学生がいたのに、2020年の日本にはいませんでした、何たることか、というような歴史の教科書を後世の歴史家に書かせたくないですね。……

<中略>

池田:これまでも学術会議にさまざまな介入があったのに、これは大変だという危機感を覚えた人たちがいなかったから、こういうことになった……。
菅野:いや、学者の皆さんの自己認識が公務員だからなんじゃないですか。……先ほど申し上げたように、東京大学を頂点としたヒエラルキーの中で、いかに生き残りをかけるかっていうことにしか興味がない学者が多いから、ここ数年、日本学術会議が受けてきた不当な扱いも、政府の言うことだからしゃあないか、という非論理的な思考で納得してたんでしょう。「処・世・術」という漢字三文字の中で……。
 見てください、僕の支援者のこの「処世術」との関係のなさ。二週間飯食ってない俺の隣でお菓子食ってるんですよ(笑)。うどんとか、鰻とか、隣で食うんですよ。これが独立した個人だと思うんですけどね。ひどくないですか!(笑)ひどくないですか、これ。僕のアンチじゃないですからね、支持者ですから。

池田:飯テロですよね、究極の。
菅野:そう、そう。で、ネットで俺のことどうのこうのと言ってて、こういうことしないで、とか言って、応援する奴が現場に来てこういうことをやってるんです。ひどいです。(笑)
<以下略>



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