ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

D.アトキンソン氏と日光東照宮

 スガが新設した「成長戦略会議」のメンバーにイギリス人の金融アナリストデイビッド・アトキンソンが選ばれ(竹中ヘイゾーも入っている!)、10月16日に初会合が開かれたという。調べているうちに、けっこう衝撃的なものを見てしまった。アトキンソン氏が社長を務める小西美術工藝社文化財の修復などを行う由緒ある会社で、元々の地元である日光東照宮の大規模修復工事を任されたそうだ。そう言えば、修復の模様がテレビで放映されていた。工事終了から3年になるようだが、その東照宮が今無惨な状況にある。写真で見るかぎり、これで修復からまだ3年というのにはちょっと唖然とする。

 以下、FRIDAY DIGITAL 2020年9月25日付(『FRIDAY』2020年10月2日号)記事より文章のみ。
修理に約12億円!「国宝」日光東照宮・陽明門がボロボロのワケ | FRIDAYデジタル

「見てください。酷いと思いませんか。白い塗装部分が黒っぽくなっているのはカビですよ。柱の塗装も剥がれかけて破片が落ちている。これはもう管理以前の問題。なぜこんなことになったのか……」
国宝である日光東照宮の陽明門を指差しながら、そう嘆くのは日光市議の三好國章氏である。陽明門は「平成の大修理」と呼ばれた大規模な修復工事を3年前に終えたばかり。およそ12億円の費用が投じられ、約4年の歳月を要した。
だが、本誌記者が陽明門を見上げてみると、たしかにあちこちが剥がれており、とくに唐獅子の彫刻(2枚目写真)は見るも無惨な姿だった。一級建築士で建築エコノミストの森山高至氏が指摘する。
「伝統的な塗料は扱いが難しい。6年かかる予定の修理が4年で終わったことが関係しているのかもしれません。急いだ結果として剥がれてしまった。カビについては湿気対策の不足が考えられます」
前出の三好氏はこう憤る。
「大修理のために地元の住民は協賛金を出しているんですよ。こんな状況では観光客の方に見てもらえません。日光が湿気が多いところだというのは事前にわかっていたことです。もっと工夫ができなかったのでしょうか」
日光東照宮の総務担当者は「剥離やカビは寛永年間の技術で修復したので仕方ない部分があります。今後も手作業でメンテナンスを続けていきます」と語った。
荘厳な陽明門はやはり美しい姿で参拝客を迎えてほしい――。


 アトキンソン氏は東照宮の修復に関し、かつて対談でこう話していた。

(出所:Harvard Buisiness Review 2015年6月25日付対談記事)

「日本われぼめ症候群」の深層 デービッド・アトキンソン(小西美術工藝社社長)×石倉洋子【特別対談7】 | 石倉洋子の「New Globalistに学ぶグローバル人材の要件」|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

石倉:数ある文化財でも特に力を注いでおられる仕事はどれですか。
アトキンソン:やはり日光東照宮、特に陽明門の仕事です。最高レベルの技術と多額の資金が投入されるし、別格といえます。その理由は3つあります。1つは、やはり神様に捧げる仕事なので、人間の損得で考えてはいけない仕事だからです。2つ目は、仕事すべてが次の世代に対する「挑発」であることです。何十年か後に劣化した部分の修復作業が始まった時、「こんなすごい仕事をしていたのか」と未来の職人を挑発する。それが最高レベルの技術を継承することにつながります。3つ目は、職人のプライドです。全力を投入した仕事への満足感が、参拝客や家族に向けた自尊心の礎となり、職人の生き方そのものとなります。

 さらに同じころの記事には、アトキンソン氏の「文化財修復」に対する姿勢がこんなふうに紹介されている。

(ゼンカン ライフプラザ ブログ 2015年05月23日付記事)

日本の国宝を守れ!文化財修復会社トップは英国人アナリスト〜デービッド・アトキンソン氏 - 未来あんしん隊 ライフプラン保険|佐賀市 ファイナンシャルプランナー ゼンカンライフプラザ

アトキンソンは)次期経営者を探していた小西美術の前社長に「数字が分かって日本文化にも詳しい」と請われて入社しました。
しかし入ってみると、「伝統」という名のもと職人の世界はどんぶり勘定で、解決すべき問題が山積していました。例えば若い職人の離職率は8割近く、職人不足が深刻でした。そこで、アトキンソンは、300年の伝統を持つ会社で様々な改革に乗り出しました。

アトキンソン改革?:職人の正社員化と待遇改善
アトキンソン改革?:どんぶり勘定を止め徹底的に無駄を省く
アトキンソン改革?:仕事の進捗状況や原材料仕入れを数値化し効率アップ

失敗を謝り修復やり直し 最高の品質を守る社風へ

さらに、アトキンソンは、高い品質を要求する。陽明門の社内検査でも、職人の仕事に容赦なくダメを出すそうです。そこには、苦い経験がありました。
アトキンソンが社長に就任する前の住吉大社の補修で、塗装がすぐには剥げ落ちるという大問題が起きていたのです。
アトキンソンは何度も門前払いをされながらも住吉大社に足を運び謝罪。そして、修復をやり直し、住吉大社の信頼を回復しました。
「外国人社長」に反発していた職人たちも、その姿を目の当たりにして、アトキンソンを見る目が変わりました。
そして、アトキンソンが求める高い水準の仕事をしようと、より良い仕事をするようになったそうです。

熊谷の奇跡に学べ‥観光立国の切り札は文化財

小西の修復によって激変した寺社があります。埼玉県熊谷市にある「歓喜院(かんぎいん)」です。建立されてから260年が経ち、本殿はボロボロでした。
しかし、2003年から7年がかりで、総額13億円かけて修復した結果、なんと国宝に指定されたのです! 観光客数のデータさえなかった寺は、年間82万人が訪れる観光名所に変身。
アトキンソンは、「日本が観光立国を目指す切り札は文化財」と主張。文化財の修復に国がもっと力をいれるべきだと主張しています。


 アトキンソン氏が竹中ヘイゾーらとともにスガ政権にどんな政策提言をするのか、まったく予想できないことはない。しかし、その結果、この国が日光東照宮の修復工事後のような姿になるとしたら許容するわけにはいかない。
 上の引用が事実なら、かつては修復に失敗した住吉大社に何度も足を運んで謝罪したというアトキンソン社長だが、東照宮には足を運んで謝罪しているのだろうか。「えらく」なって“傲慢”になっていないことを願う。



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