ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

コロナ被害と経済被害

 「Go To キャンペーン」のドタバタや東京、大阪の感染者数の増加などのニュースばかりだと、コロナ禍が世界の問題であるという感覚が薄れて、ついつい日本のことばかりになってしまう(小生だけかもしれないが……)。もちろん国内の感染コロナを抑え込むことは国の大きな責任だが、同時にそれは世界に対する国の責任でもある。大げさに言えば、日本のコロナを抑えこむことは世界のコロナを抑え、世界の人々を救うことにつながっている。そう考えると、この間の日本の混迷ぶりが余計に卑小で不快に映る。

 最新(7月21日現在)のコロナ感染者数と死者数を調べてみた(日本のみ7月22日 出所:NHK)。一覧には載せられなかったが、かねてより指摘がある通り、ラテンアメリカ諸国の感染の拡がりが目につく。メキシコ、ペルー、チリ、コロンビア………。特に、メキシコは1日の死者数が900人(件)を超えていて、かなり深刻に見える。

コロナ感染者数世界 - Google 検索

        感染者数(新規)    死者数(新規) 
アメリカ合衆国 397万 (+63,496)  14.4万(+1,039)
ブラジル    217万 (+41,008)    8.1万(+1,367)
インド     119万 (+37,724)    2.8万(+ 648)
イタリア     24万 (+  128)     3.5万(+  15)
ドイツ      20万 (+  522)     0.9万(+  4)
中国(大陸部)  8万 (    )    0.4万(      )
スウェーデン   7万 (+  227)    0.5万(+   1)
韓国       1万3千(     )    297(     )
ニュージーランド  1,555(+  0)    22(+   0)
台湾           455(    )     7(      )
ベトナム         408(    )     0(      )
日本       2万7千 (+ 795)     990(+   1)
   

 ニッセイ基礎研究所の高山武士さんが「コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?49カ国ランキング」という記事を書いている(7月3日付)。

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64863?site=nli

 この手の「通知表」(各国評価)は他にもあるようだが、高山さんの場合は、各国の「コロナ被害」(感染拡大:①累積感染者数 ②感染拡大率 ③致死率)と「経済被害」(コロナ禍で失われたGDPの損失の推計値)の2つの点をともに小さく抑えられているかどうかで、各国を評価している。
 点数は、49か国を成績の良い順に10グループ(5か国ずつ、最終グループは4か国)に分けて、最良グループに10点、次のグループに9点………、最も成績の悪いグループに1点を付けたという。ただし、被害の推計は2020年のGDP差額に限られ、長期的な経済被害については考慮されていない。また、コロナ禍以外の要因での成長率変動を除去していない点にも注意が必要とのこと。
 その結果、高評価の上位国は、順に、台湾、マレーシア、香港、タイ、中国、韓国……だった。上位国に東・東南アジアの国が多いのは、これらの国々が比較的早期に「謎の肺炎」に対する注意を払い、早期の水際対策を講じたことが最も効果的だった可能性が高いとしている。結果の一覧表は次のとおり。

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 ランキング上位のアジアの国々がコロナ禍に上手く対応できているのは、何と言っても初動が早かったこと。最も早かった香港(3位)は、昨年末の段階で空港での監視を開始しているし、台湾(1位)も1月2日からコロナ禍への注意喚起を実施している。意外なことに、日本(9位)も1月7日から自己申告制での検疫体制を敷いていて、厳格な体制ではなかったものの、初動の反応は早かったという。総じて、東南アジアの国々は、中国との地理的な近さやSARSの経験もあり、早い段階で「謎の肺炎」に注意していたことがうかがえる。
 他方、封じ込め政策自体の厳しさ(下の表の丸印の大きさ)と今回のランキングとの相関は見られないという。欧米などは大規模な感染が発覚した後、強固なロックダウンを実施したが、早期に対応を実施した東南アジアのような好結果とはならなかった。ここから、初動段階で効果的な水際対策を実施し、国内への輸入感染を抑制できないと、その後の蔓延を低コストでコントロールすることは厳しいと思われる……等々。「初動対応の時期とコロナ対応の評価の相関図」は以下のとおり。

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 日本はランキング上は第9位で、確かに、相対的に感染者数も死者数も抑えられている。その点は他国よりはよいのだろう。しかし、もし、検査をしぶって市中感染を拡げているとしたら……、また、経済政策のドタバタによる実害が今後一層大きく広がるとしたら……。そう考えると、実感として決して安心できる状況にはない。何と言っても、為政者と国民の感覚がズレていることが最も心配なところだ。
 次回、このズレについてひきつづき考えてみたい。


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