ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

2022年の「希望格差社会」

 学校教員が子どもの人気職業の上位でなくなってからだいぶたちます。進研ゼミの調査では、今の小学生の人気職業は、1位がユーチューバー、2位は漫画家・イラストレーター・アニメーターで、学校の先生は7位だそうです。
https://benesse.jp/juken/202112/20211217-1.html

 これが中学生になると、13歳のハローワークのこの春の調べでは、学校の先生はさらに下がって、中高の教員が21位、小学校教員は35位です。
人気職業ランキング(2022年3月)【13歳のハローワーク 公式サイト】

 これは、高校生や大学生を調査すると、もっと下がるのではないかという予感がしますが、お隣の茨城県では、来年度の公立学校の教員として923人を採用する予定のところ、4月25日段階で志願者数はまだ約600人で、5月6日の締め切りまでに定員まで達するのは厳しいとのことです。千葉県がどうなのか調べていませんが、これはちょっと衝撃的です。それでなくとも、文科省調べでは昨年の年度当初、全国の5・8%の学校で教員が不足していたことが分かっています(実際はもっと多いはずです)。

県教委の来年度の教員採用 志願者数が採用予定人数下回る|NHK 茨城県のニュース

 公務員志向はむしろ強まっているのですから、伝えられる教員の勤務状況は(公立校とは限りませんが)、一般の若い人たちの眼には確かに「ブラック」に映っているのだと思います。一線を退いた人間としても、学校教員は「ブラック」でもやりがいのある職業だからとは、正直なところなかなか申し上げにくい。

 しかし、それよりもさらに衝撃を受けたのは、1994年から2019年までの四半世紀の世帯所得の変化を分析したところ、全世帯の年間所得の中央値は、1994年の550万円から2019年は372万円と、何と32%(178万円)も下がっているという報告が、3月3日の経済財政諮問会議でなされたということです。賃金水準が長期にわたって低下していることは、これまでも方々から指摘されてきたことですが、この尋常ではない数字に、何と政府が「お墨付き」を与えたことになります。

政府も認めた「賃金上がらず結婚できず」の厳しい現実 | 人生100年時代のライフ&マネー | 渡辺精一 | 毎日新聞「経済プレミア」

 今朝の新聞には、子どもの大学進学に関して昨年2021年度に実施したアンケートの結果がこじんまりと掲載されています。2020年度より「受験校数を減らした」が9ポイント増の67%で、全体の46%が受験校数は「1校」と答えたというのです。
 5月1日付毎日新聞、深津誠記者署名の記事です。

困窮家庭46%「大学受験1校」 コロナ下 受験料負担、より重く NPO調査 | 毎日新聞

 認定NPO法人「キッズドア」(東京都)は、困窮家庭の子どもの大学進学に関し、2021年度に実施したアンケートの結果を公表した。新型コロナウイルスの感染拡大後2回目の調査で、20年度より「受験校数を減らした」が9ポイント増えて67%となり、全体の46%が受験校数は「1校」と答えた。受験料の負担を抑えるため、複数校の受験を迫られがちな一般入試を避けて、推薦入試に絞ったケースも多いという。
 キッズドアが運営する基金が、21年度に奨学金を支給した受験生と保護者を対象として3月にアンケートを実施し、601件の回答を得た。奨学金を支給した家庭は、96%が年収200万円以下で、84%がひとり親世帯。コロナ禍による失業や収入減などの影響を受けた家庭が46%だった。
 受験校(学部)数は1校が46%で最多。2校(16%)、3校(12%)、4校(12%)と合わせ全体の86%が4校以下だった。保護者に対し、経済苦による進学への影響を聞くと、56%が「塾・予備校に通わなかった・減らした」と答え、子どもが推薦入試を受験した人のうち47%は「一般受験でなく、推薦を選んだ」とした。
 自由記述欄には「受験料が3万5000円もするのでお金は水のようになくなる。頑張る受験生に優しい世の中になって」「両親がお金のことで毎日言い争いをしている」などという声が寄せられた。
 キッズドア基金の松見幸太郎代表理事は「受験料が出せず、推薦で合格できる大学にランクを下げた受験生も多い。4~5校受けるのが通常の私大受験で、受験校数を切り詰めるのは、大きな格差につながる」と指摘。東京都が設けている、8万円を上限に無利子で受験料を貸し付け、入学すれば返済免除となる支援制度を挙げ、同様の制度を全国に拡大するよう国に求めた。


 「希望格差社会」という言葉が思い浮かびました。むかし読んだ『希望格差社会 「負け組」の絶望感が日本を引き裂く』という山田昌弘さんの著書のタイトルです。山田さんの先見性もさることながら、子どもたちのおかれている状況は、2004年の刊行時よりいっそう深刻になっていると思えます。
 今日は働く人びとの日、メーデーです。

追記で国公労連のTweetをお借りします。
国公労連 on Twitter: "日本の15歳未満人口比率は世界194か国中193位と世界ワースト2位(2020年)。更に昨年2021年の出生数は過去最少。子育て公的支援はイギリスやフランスの半分。教育への公的支出は世界181か国中135位(2019年)。OECDで賃下げは日本だけ、非正規雇用4割弱で子育てが困難になっています。
#メーデー2022… https://t.co/W5k5DFqv9S"




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