ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

Go To 再開の報に…

 市中のコロナ感染第5波は、ワクチン接種のおかげなのか、季節性なのか、あまり理由は定かではないが、劇的に収束している。昨日10月18日、国内の新規感染者数は232人。東京の29人は今年の最小だという(全国の死者数は17人、重症者数は312人)。千葉県も新規感染者数は6人、小生が暮らす田舎自治体もここのところずっとゼロが続いている。
 
 夕方、TBSを見ていたら、千葉県は18日からGo To イートを全面的に再開させたということで、千葉市内の飲食店や客の声などが紹介されていた。他の都道府県でも順次再開の見込みだという。
千葉県GoToイート全面再開 感染者減少“緩み”に不安も|TBS NEWS

 他方、朝日新聞の連載「危機の時代に 第1回」を読むと、Go To の再開に何か能天気と言うか、優先順位のちがいを感じてしまう。Go To が感染を再拡大させる要因になるおそれがあることはおくとしても、そもそもGo To を制度設計した人の視界には、以下の記事で書かれている多くの人たちが入っていないと感じるからだ。確かに今飲食店は苦しいし、ギリギリの状態なのは承知しているつもりだが、もっとちがったやり方を考えなくてはいけないのではないか。
 以下、10月18日付、五郎丸健一記者の署名記事より。

「貧困層が液状化のように」都心の公園、20分で消えた弁当400食 [2021衆院選] [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

 週末の買い物を楽しむ家族や友だち連れ、コスプレイベントに集まった若者らが行き交う東京・池袋のサンシャインシティ。そのわきにある東池袋中央公園は、ここだけが別世界のようだった。
 9月下旬の昼下がり、人々が「ソーシャルディスタンス」で2メートルほど間を空けて列に並びだした。高齢の男性が多いが、中年の男女も目につき、中にはスマホをいじりながら待つ若者の姿も。日が落ちるころには、広い公園を埋める長蛇の列となった。
 彼らの目当ては、無料でもらえる弁当だ。生活に困る人を支援するNPO法人「TENOHASI」が、炊き出しや生活相談を月2回おこなっている。ここに集まる人たちは、どんな事情を抱えているのか。
 妻と一緒に列に並ぶ男性(54)は、ホテルの従業員。コロナ禍の影響で仕事がなくなった。会社は休業手当を出さず、収入が減った。妻は飲食店におしぼりを納入する会社でパートで働いていたが、その仕事も失った。今年2月ごろ、炊き出しのことをテレビで知り、訪れるようになった。
 最近はホテルの仕事が徐々に戻ってきたものの、勤務は週3日で、生活は苦しいという。「並ぶのは正直、恥ずかしさもあるけど、こういう場があるのは本当にありがたい」
 若い人にも話を聞いた。
 並ぶのは3回目という男性(32)は、派遣会社に登録し、ネット通販大手の倉庫で商品の棚出しの仕事をしていた。ところが、今年夏、雇い止めに遭った。ハローワークにも通ったが、コロナ禍以来の就職難で厳しい現実に直面した。興味を持った病院の清掃の仕事は、3人の求人に40人の応募があり、あきらめた。
 友人の家に居候し、冷凍食品の配送など日雇いの仕事で食いつなぐ日々だ。今の月収は7万円ほど。「収入を計算できる仕事を早く見つけて、炊き出しに頼らなくてもいい生活に早く戻りたい。今はとにかく粘るしかないですよ」
 ほかの人たちも、事情はさまざまだった。生活保護を受けているが、障害の加算分を減らされ、生活がいっそう苦しくなった人、専業主婦だったが、家で「いろいろあって」路頭に迷った女性……。よい仕事が見つからないという声も多く聞いた。

 午後6時、弁当の配布が始まると、並んだ人たちは次々と受け取り、どこかへと消えていく。用意された400食は20分ほどでなくなった。
 この日、炊き出しや生活相談に集まったのは416人。コロナ危機が本格化した昨年春以降は200人台が多かったが、今年に入って急増し、最近は300人台が続いていた。今回400人を超えたのは、リーマン・ショック後の2009年以来。最近は20~30代が増え、コロナ以前はほぼ皆無だった女性も来るのが特徴だという。
 貧困の現場を長年見てきたTENOHASIの清野(せいの)賢司・事務局長(60)の表情には、危機感がにじむ。
 「コロナでぐらぐら揺れて、液状化現象のように貧困層が表面に出てきた。非正規雇用で、もともと弱い立場にいた人が失業保険や行政の給付金でもしのぎきれなくなり、真っ逆さまに落ちている。困窮する人に手を差し伸べるというメッセージを、今こそ国が発してほしい」

「国の仕組みがきちんとしていない」 2児のシングルマザー
 おびただしい数の人々の暮らしを脅かしたコロナ危機。露呈したのは、張りめぐらされたはずのセーフティーネットのあちこちに開いた「穴」だ。
 「ルールは守られず、雇用保険も当てにならない。国の仕組みがきちんとしていないことをつくづく実感しました」。東京都内のファミレスで会った女性(48)の言葉には、世の中への不信がこもっていた。
 2人の子がいるシングルマザー。コロナ以前は、渋谷のレストランでアルバイト店員として週5日、1日10時間以上働き、30万円ほどの月収があった。社会保険にも入っていた。
 ところが、昨年4~5月、最初の緊急事態宣言で店は休業。社員と同様、休業手当を会社からもらえると思ったが、出たのは8日分だけだった。会社は「勤務シフトが決まっていない分は、休業手当を払う必要がない」と主張し、相談した労働基準監督署も助けてくれなかったという。
 6月には突然、会社から「1カ月後に閉店する」と告げられた。系列店の仕事を紹介されたものの、人事担当者からは「今まで通り働けるとは思わないでほしい」と、勤務シフトが減ることをほのめかされた。
 「社員以上にがんばってきたのに、この扱いか」。雇用保険で失業給付をもらって次の仕事を探そうと思い、店をやめたが、その当ても外れた。会社都合の退職と認められると思ったら、会社は「退職は本人の自己都合」と主張。給付の額は減り、もらえる時期も遅れた。
 仕事を探しても、希望のフルタイムのものは見つからない。冬には家計が火の車となった。行政の困窮者支援情報をネットで必死に集め、使えるものは次々申し込んだ。家賃補助の給付金や生活費の貸し付けで何とかしのいできたが、不安は頭を離れない。「支援策が打ち切られると、どうなってしまうのでしょう」

<以下略>

 記事はこのあと、セーフティネットの漏れ、「大きな政府」への転換、財源、政治の責任といった話へと続く。

 コロナに季節性があるとすれば、総選挙が終わって1ヶ月もすると次の6波が始まることになるだろう。そのとき、どんな「船長」がコロナ対策を指揮し、公助を差配することになるのか。知恵者を集めなければいけないし、そのための選挙にしなければならない。
 課題は山積だとはいえ、第一の課題はやはりコロナによる貧困だ。これより優先すべき課題はあり得ない。いくら国が「泥船」のような船だと揶揄されても、肝心の人を乗せないでは、そもそも「船」にならないではないか。




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