ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

韓国が拡大G7に加わる件

 何というか、この国の斜陽、そのトップに居座る者の狭量を象徴しているように感じた。
 今年の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、コロナがなければ6月にアメリカで開催されていたはずだったが、トランプ大統領は、サミットの9月延期を決め、併せて、G7にロシア、韓国、インド、オーストラリア、ブラジルの4か国を加え、「拡大G7」にしたいとの意向を表明した(これは対中国包囲網を画策していると思われるが、ロシアの参加にはイギリス、カナダが反対しているらしい)。これについて、日本政府高官(誰?)はアメリカ政府に対し、韓国の参加に異議を伝えていたことが27日にわかった。以下、共同通信が6月28日に配信した記事。下線は当方が施したもの。
 
日本、拡大G7の韓国参加に反対 対中、北朝鮮外交に懸念 | 共同通信

 トランプ米大統領が5月に表明した先進7カ国首脳会議(G7サミット)拡大構想を巡り、日本政府高官が米政府に対し、韓国の参加に反対する考えを伝えていたことが27日、分かった。中国や北朝鮮への外交姿勢がG7と異なると懸念を示し、枠組みの維持を求めた。米側は「トランプ氏が最終判断する」と応じた。複数の日米外交筋が明らかにした。韓国政府はG7参加を歓迎しており、反発は必至だ。
 日本側の対応にはアジアから唯一G7に参加する外交的優位を守る思惑もある。安倍晋三首相の意向を踏まえたとみられる。歴史問題などで対立する日韓関係の冷却化を進める可能性がある。

 それから2日、両政府関係者やメディアの応酬を見ると、外交上の駆け引きよりも感情論の方が先に立っている感じは強い。韓国側の言い分が“正論”だとは思わないが、「狭量」だという指摘はその通りだと思う。もはや、日本が「アジア唯一」とか「先進国」だとかと胸を張れるような状況はないと言ってよい。百歩譲ってそれがあるとしても、それは民間レベルの人的交流によって培われた国際的信用に根ざすもので、今の政府はむしろそれを繰り返し傷つけてきた。
 今回の件も、政府は韓国が北朝鮮に融和的な対応を取っていることを反対の理由としているが、拉致問題解決の糸口さえない日本政府が、韓国にもG7にも北朝鮮に融和的な姿勢をとるべきではないと宣言することが何を意味するのか。拉致被害者や家族は、なおこうした政府の「暴論」に苦しめられなけれならないのだろうか。
 こうした姿勢で重ねられてきた外交はどんな成果を上げてきたのか? アベはトランプとは似た者同士で、趣味(ゴルフ)といい、気が合うそうだが、アメリカからずいぶん一方的にモノ(兵器など)を買わされた。その結果、イージスアショアはどうなったか? あるいは、プーチンとは「ウラジーミル」と呼べる関係らしいが、27回も首脳会談をやって「北方領土」はどうなったか? 今や4島返還どころか2島返還も無理、さらに「わが国固有の領土」というフレーズさえ公式文書では憚られるほど後退している。その他の領土問題(尖閣諸島竹島)しかり、日韓関係(慰安婦、徴用工、輸出規制)、沖縄の米軍基地、辺野古………ほとんど成果は見当たらない。アベ政権の「地球儀を俯瞰する外交」とは結局、内政で疑惑まみれになったアベが、時間稼ぎと気分転換に外国旅行で税金をつかったというに過ぎない。

 「アベ外交」に話がそれてしまったが、あらためて、「アジアの代表国家」などというプライドがあるとすれば、もうそれは捨てた方がよいと思う。おそらく世界の標準的な人々の感覚では、日本のこの間の縁故優先政治、数々の不正隠蔽は「名誉ある国」にはそぐわないし、それを正せない、正そうとしない国民であることも相当恥ずかしいことに思えるはずだから。
 最後に、6月29日に配信された「東亜日報」の記事を引用するが、この件について、韓国側の感情的ではない意見にも耳を傾けるべきだと思う。

韓国のG7参加に反対した日本、そのような狭量で「アジアの代表国家」になれるのか : 東亜日報

 トランプ氏のG7拡大構想に対する日本の反対はある程度予見されたことだった。日本政府はこれまで公開的には「日米間で緊密に話し合っている」という程度の言及だけだった。しかし、その内心は違っただろう。拡大構想対象国のロシアの参加をめぐって英国とカナダが反対の考えを明らかにしたため、あえて日本が前面に出る必要はないと判断しただろうが、その後トランプ氏の意向が具体化し、積極的に反対することに切り替えたとみえる。
 日本はG7の唯一のアジア加盟国としてその独歩的地位を明け渡したくないだろう。さらに韓日の歴史問題や輸出規制強化などの懸案と関連して日本が対外的に苦しい立場になることを懸念しただろう。明後日で1年になる日本の輸出規制強化措置が招いた韓日対立が依然として出口が見えない状況で、日本としては韓国のG7参加は不満なことだろう。
 このような日本の態度は、「アジアの代表国家」という主張に傷をつけるだけだ。過去にも、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長の選出に反対した日本だ。最近では、中国人が相次いで国連機関のトップに選出されたことに危機感を抱いているという。兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長の世界貿易機関WTO)事務局長選の立候補表明にも警戒心を表わしている。これでは、アジアを脱するという島国日本の過去を浮き彫りにするだけだ。
 日本の反対は、韓国外交が越えなければならない山だ。韓国のG7参加は、今のところ米国の構想にすぎない。いくらトランプ氏が主張しても、加盟国の合意がなければ、特に日本が最後まで反対すれば不可能なことだ。政府は事実上、放置されている韓日対立の解決策を見出す努力から真剣に始めなければならない。日本が、積極的な支持でなくとも、少なくとも反対はしないようにしてこそ韓国も堂々と先進国クラブのメンバーになることができる。




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