ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

君をなぜ総理大臣にできないのか

 横浜市長選は直前予想通りの結果となった。NHKは、およそ18万票の大差をつけたと評するが、小此木票の325,947と林票の196,926を合わせると、52万票余となる。当選した山中候補の得票が506,392だから、乱暴に言えば、自民党分裂選挙でなかったら「負け」である。この選挙結果は、近づく衆院選の弾みにはなるが、見たいように現実を眺めるのはやや危険な感じがする。終盤戦で注目された田中候補の票(194,713)は林候補の得票を上回ってもいないのだ。敵失ばかりとはいえ、自民党の底力をあまり甘く見ないほうがよいと思う。

 山中陣営を援護した(本人はたぶん自分が当選させたと思っている)「ハマのドン」こと藤木幸夫会長は、菅の辞任にも言及した。
「菅も今日あたりやめるんじゃないの? やめないとしょうがないだろう」。
「(スガから)電話がかかってきたら『(首相を)やめろ』と言う」。

「菅首相やめるんじゃないの?」 ハマのドンが言い放つ [横浜市長選挙]:朝日新聞デジタル

 まだいろいろと曲折はあるだろうが、スガ政権が風前の灯火にあることは確かだ。野党支持者からは政権構想を示すべきとの声も上がる。しかし、残念ながら、枝野〝新〟政権に鳩山政権出立時のような清新さや待望感は薄い。立憲民主党が本当に政権をとりに行くなら、「斬新さ」を見せなければいけない。

 映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で知られる小川淳也。「時代」が求める政治家の一人だと思っている。もし、彼が「標題」に反して、この国の総理大臣になったら、いや、彼を総理大臣に指名するような国になっていたら、それは今より格段によい国だろうと想像する。

 1ヶ月ほど前の対談記事がある。映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」の大島新監督と、小川氏とともに『本当に君は総理大臣になれないのか』を出版したノンフィクション作家の中原一歩氏の二人の対談、大変おもしろく読んだ。

麻生太郎に正論を突きつけ…つまらなくて面白い“注目野党議員”の正体(現代新書編集部) | 現代新書 | 講談社(1/4)

 中原:……監督にお聞きしたいんですけど、小川さんっていったいどんな方だと思いますか?
 大島まあピュアですよね、とにかく。
 中原:ピュアというのは?
 大島正直ですよね、まずは。これは間違いなくそうだと思う。あと自分を大きく見せようとしない。思ってることはちゃんと言うし、迷ってることも隠そうとしない。そういうところは本当にありますよね。自分を作らず、素のままでいるから、弱みも見せるし。だからこそ、「日本の政治、社会をこうしたい」っていう主張も、私にはすごい説得力があるんです。
 中原:なるほど。僕も取材をしていく中で、小川さんは「無防備」だなと思った。媒体はどうであれ、会ってまだ数回の週刊誌の記者にですよ? こちら側のホームに乗り込んできて、そこで自分の世界観を語るのはすごいな、と。その無防備さには本当にびっくりしたんです。

<中略>

 中原:よく小川さんってご自身を「パーマ屋のせがれ」っていうじゃないですか。僕はこの言葉を言うときの小川さんの表情がすごく好きなんですけど。
 大島たしかに。「(自分は)パーマ屋のせがれ」ってよく言いますね。
 中原:小川さんのご両親は高松市内で小さな美容室を経営されていて、お父さんは正義感が強くて、曲がったことが大嫌いで。お母さんは対照的に、いつも明るくて、あてやかな髪結いさんで。後に政治家になるっていうときに、お二人が「絶対に許さない」と猛反対されるんです。小川さんを育んだご家族については、大島さんはどういうふうにお考えですか?
 大島やっぱり、お二人あっての小川さんという感じはします。すごく真っ当というか、非常に常識的なことを大事にされてるなって。2003年に最初に取材したときに、お父さんが「自分の息子のことだから間違いはないとは信じてはいる。けれども、万が一、政界に入ってから、言ってることが初志とずれてきたなっていうことがあったら、もう先頭に立って自分が引きずり下ろすんだ」とおっしゃっていた。この言葉はすごく僕にとって印象的で、その後の小川さんとのお付き合いの中で、「あぁ、こういうお父さんとお母さんのもとで育った人なんだな」って思う場面が多々ありましたね。
 一方で、2015年か16年にお母さんを取材した際に「息子が政界に要らないんだったら、もう返してほしい」とおっしゃってね。だから(息子に)政治家でいてほしいとか、バッチをつけ続けて欲しいとかっていうことは一切思ってないわけですよね。「要らないならもう返してくれ」つまり「淳也がちゃんと力を発揮できないんだったら、もう家族の元に返してくれ」っていう。その辺もまさに小川家らしいなって思いました。
 実は僕もその頃から、このままだと「小川淳也」っていう、人的資源の無駄遣いなんじゃないかなって思い始めたんですよね。この人は他のことをやった方が、それこそ社会のためになるんじゃないのかな、みたいな。野党で、しかも出世していないっていう状況がこれからも続いていくのだとしたら、人的資源としての小川さんが、なんか勿体ないなって。

 中原:映画では『なぜ君は総理大臣になれないのか』、そしてこの本にも『本当に君は総理大臣になれないのか』というタイトルが付けてあるので、第1部の最後に政治家・小川淳也にとって「何が足りない」のかをぜひ聞いてみたいと思います。
 大島4、5年前ぐらいまでは、(小川さんの足りないところについて)いろいろ思ったりしたこともあったし、ご本人とも話をしたことがあったんです。それは、あえて具体的にわかりやすい例で言うと、「橋下徹さん的なるもの」。小川さんと対照的な、ある種の言葉の強さだったりとか、スパッと言い切る簡潔さ、とかね。小川さんはやっぱり話が丁寧だし、正確に言おうとするので、若干話が長くなったりするんです。僕は「(政治家として)それはどうなんだろう」って思ったりもしたし、小川さんのお母さんともそういう話をしたことがありました。政治家なんだから「清濁併せ呑む」とか「もうちょっと懐深く」とか。あるいは「グループを作った方がいいんじゃないか」、「メディアにももうちょっと出た方がいいんじゃないか」とか。小川淳也についてはそういうことを思った時期もあった。でも最近ね、そういうことはあまり思わなくなったんですね、実は(笑)
 それはなぜかと言うと、やっぱり長所と短所は裏表なので。だから、多少政治家として短所に見えるところが仮にあったとしても、それはもうしょうがないっていうか。そういうところが小川さんの長所でもあるわけだし。あとは仮に僕らがアドバイスをしたとしても、そしてそれが多少理にかなったものであったとしても、変わらないと思うんですよね。小川さんは。だから、「足りない」とか「足りる」っていうのは今はもうあまり考えてなくて。
 「時代や社会が彼を選ぶかどうか」だと思います。

太字は当方が施した。


本人へのインタヴューもある。
「総理大臣になったら何をするんですか?」人気急上昇中の議員の「答え」(小川 淳也,現代新書編集部) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)



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