ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

東京センター予約システムの欠陥

 「もう日本は先進国ではない」というTweetを何度か見た。ジャーナリストの齋藤貴男さんらも、去年からずっとそう言っている。

 「先進国」はそうでない国(「後進国」とか「後発国」と呼べばよいのだろうか、よくわからないが…)とセットで考えられるから、何が「先進」かは、そうでない国との比較上でしか出てこない。尺度はだいたい後付けだし、そこには一定の価値観が反映されてもいる。知らぬ間にその「価値観」が「倫理観」や「道徳観」に置き換わって善悪の基準などに転化すると、これは「差別観」とどこがちがうのかと思えてくる。だから、できればあまり使いたくない言葉のひとつである。

 しかし、かくいう小生も、戦後の高度経済成長、GDP世界2位、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代を子どもながらに見てきた世代である。周りの話に影響されつつも、どこかで日本は「先進国」だと「自負」してきた感じはある。特にそれは「技術立国」ということばに現れていると思ってきた(思わされてきた)。NHKがむかし「電子立国・日本の自叙伝」という番組で日本の半導体開発の「成功物語」を取り上げていたが、まさにそのイメージである。しかし、この番組が制作されたのが1991年。バブル経済の絶頂期が過ぎ、下降に転じた頃である。それから今年で30年。「失われた〇年」「ロスト・ジェネレーション」などの言葉を耳にしながら世紀が替わって早20年。長年にわたって積み上げてきた(はずの)もの、築き上げてきた(はずの)ものが、ガラガラと崩れているように感じることが増えてきた。

 このほど設立が決まった新型コロナ・ワクチンの大規模接種センター。その予約システムに重大な欠陥があると、5月17日付のAERAdot.が伝えている。ワクチン接種に命運?をかけている総理大臣の一声で突然始まったこのプロジェクト。性急な話だけに、ほころびやしわ寄せの心配が当初からあったが、案の定…の展開だ。小さなミスやトラブルはやむをえないと思うが、「技術立国」と力まなければならない幻想があるとしたら、もはやそういうものは捨てて、現状を正視すべきではなかろうか。

【独自】「誰でも何度でも予約可能」ワクチン大規模接種東京センターの予約システムに重大欠陥 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

接種予約は17日午前11時の開始からわずか45分で2万1000件に達するなど順調な滑り出しだったが、システムには重大な“欠陥”があることがAERAdot.編集部の調べでわかった。予約対象者の65歳以上の高齢者ではなくても、誰でも、何度でも予約ができるのだ。セキュリティ設計は一体、どうなっているのか。……
 予約が始まった直後、「ワクチン予約に大変な欠陥が見つかった。システムのセキュリティが機能していない」(防衛省関係者)という情報が飛び込んできた。……
 AERAdot.編集部は裏付けを取るべく実際の予約システムで確認してみた。予約には地方自治体から送付された接種券を持っている必要があるとされていた。
 予約サイトでは接種券に記載されている市町村コード(6桁)と接種券番号(10桁)を入力し、さらに自身の生年月日を入力する必要がある。
 そこから進むと、接種希望日時を選ぶ画面が出る。カレンダーから接種枠の空きがある日時を選び、予約をすることが簡単にできる。
 今回の予約は65歳以上の高齢者で東京センターは東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県の居住者が対象、大阪センターは大阪、京都、兵庫の2府1県の居住者が対象になっている。
 当然、対象以外の人は予約ができないと思いきや、「誰でも予約できる」(同前)というのだ。
 AERAdot.編集部で東京の予約サイトで試してみると、6桁の市区町村コードには「654321」、10桁の接種券番号には「9876543210」と適当に番号を入力。生年月日も「1956年1月1日」と適当に入力したところ、そのまま進めて、5月29日8時から予約が取れてしまった。
 念のため、もう一度、予約をしてみた。市区町村コードは「555555」、接種券番号は「4444444444」、生年月日は「1954年1月1日」にした。こちらも5月30日16時30分からの枠を予約できた。6桁、10桁未満だとエラーが出たが、それを満たせば予約が取れるというセキュリティ上の“欠陥”があるのだ。(編集部で取った予約は現時点でキャンセルしている)
 これでは北海道や沖縄、名古屋などどこに住んでいようが、何歳であろうが誰でも予約ができてしまう。前出の防衛省関係者がこう明かす。
「極論すると、悪意を持った人物が、乱数的に任意の番号を次々と入力し、全ての枠を占拠することすら出来てしまう、危機管理も何もあったものじゃない。杜撰な仕組みです。予約枠だけ占拠して、当日誰も行かなければ、大量のワクチンがムダになりかねない、まさにワクチンテロが出来てしまいます。初日の17日、システムダウンせずにスムーズに予約が取れた、と官邸も防衛省自画自賛していますが、システム上、負荷のかからない空っぽのシステムであれば、ある意味、当然です。言うなれば、紙の予約簿に好き勝手に書き込むだけの仕組みと変わらない。対象地域に居住しているか、否か、さらには本当に実在する人物や接種券なのか否かも含め、全くノーチェックなのです。メルカリやヤフオクで枠の転売を始める人もいずれ出るかもしれません」
……
 防衛省ホームページに掲載されている予約システムの最下部にはシステムの運営会社として「マーソ株式会社」(Copyright © MRSO Inc. ALL RIGHTS RESERVED.)と記されていた。同社の経営顧問には菅首相の盟友、竹中平蔵氏が名を連ねていた。
 マーソ社のホームページではセキュリティの方針として「情報資産の機密性、安全性、可能性を確実に保護するために組織的、技術的に適切な対策を講じ、変化する情報技術や新たな脅威に対応する」などと記されている。
マーソ社にも取材を申し込んだが、「担当者が不在で対応できない」との回答だった。なぜ、このような“欠陥”システムになったのか。
「官邸からはサイトの予約をパンクさせるな、と強い指示が出ていました。地方自治体のようにパンクしたら赤っ恥をかくからです。しかし、こんな中身のないシステムならサーバーも負荷はかからないし、重くならないのは当然でしょう。しかも事業会社の顧問に竹中平蔵さんが名を連ねていながらこの始末です。すべての原因は、菅首相や官邸が支持率回復だけを考え、何の制度設計や調整もなく、思い付きで始めたことにあります」(防衛省関係者)
 IT弱者の高齢者を対象としているのに、電話での予約は仕組み上なく、インターネットとLINEのみ。高齢者から直接、問い合わせが防衛省にあっても「代理でやってくれる人がいない場合、一切対応しない、地元の自治体で受けてくれ」と回答しているという。
 防衛省のホームぺージ上でのアクセス案内も不親切で、最寄り駅の「大手町」は都内でも屈指の複雑な駅構造になっているのに、「駅からの順路」は、グーグルマップのリンクを貼っただけだ。
「官邸のトップダウンで突貫工事を防衛省にやらせ、こんな雑な仕事になったんでしょうが、これで本当に一日、1万人の高齢者接種を無事にさばけるのか。官邸の“やってる感”演出のために、翻弄されるのはいつも、これまで接種を担ってきた地方自治体と国民です」(政府関係者)


 また出た!竹中平蔵。いいかげん、こういうのを退場させないと、さらに惨い状況を目にすることになるのではないか。
 別のワクチン接種会場では1日に2回接種したという高齢者もいた。驚愕である。
 スガさん、これじゃ支持率は上がらないよ。というか、支持率よりももっともっと大事なことに目を向けなさいよ。



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